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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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サリーから見た彼女(前編)

 っと、大分話し込んだわね。時間的にも、そろそろ晩御飯を作らないといけないから今度は寝る前にでも続きを語ろうか。

 ……え、まだもっと話を聞きたい? おやつのホットケーキを食べたからまだお腹いっぱい?

 んー、でもね。クタクタになって帰ってきた父さんに何も無かったらかわいそうでしょ? うん、分かれば宜しい。

 ってことで今日は何を作ろうかー……? ……そうだっ、そろそろ猪肉の漬け込みも良い感じになってるころだよね。

 …………うん、良い感じに漬かっている。これなら軟らかくなるね。今夜は猪肉の焼き物だよ。

 ほら、はしゃがないはしゃがない。それじゃあ、作るからあんたは……そうね、レタの葉を千切っててくれない?

 お、良い意気込みね。それじゃあ、頼んだわ。


 ◆


 ハスキー叔父さんと戦ってからの師匠が変でした。

 初めは叔父さんから言われたように記憶喪失だと思っていたので、数日は様子見をしていたのですが違和感を感じずにいられません。

 何というか……そう、まるで師匠の身体をした別の人物といった感じに見えていたんです。

 ……や、でも嫌いだとかイヤだなとかは思いません。むしろ、何ていうか……こう、護ってあげたいとか言う気分にさせられるんです。あと、怯えて涙眼になる姿を見ていると、ゾクゾクとした感覚を感じますが……この感覚はなんでしょう。

 しかも公衆浴場に連れて行ったときは、ワタシ自身羽目が外れてしまったのか、もうすっごいくらいに可愛がりました。

 若い女性特有のプニプニとした柔らかな肌、成長途中の硬くもあるけど柔らかさを持ち始めている胸、ピモの実のように整った形をした小振りなお尻、ムーギのように綺麗な金色をした髪。

 それらをワタシの手で洗うたびに、師匠の口からは驚きながらも色艶のある声が洩れ、その度にゾクゾクとした感覚と一緒にもっと鳴かせてみたいという欲求に狩られて、身体を隅々まで洗い、髪も綺麗に洗いました。ちなみにそのときにほんの少しですが、師匠のおなかがぽっこりと出ているのに気づいて……依頼に参加したいといった理由が理解出来ました。

 食って寝てだったら、そうなりますもんね。あとは、このことを言ったらどんな反応するのかと考えただけで興奮しますね。……なんだか、自分が狂っているような気がしますが……師匠が可愛いのがいけないんです!


「この収穫作業って、バランス感覚が良くないと危ないんですよね。でも、訓練にもなるので一石二鳥だったりします」


 そう呟きながら、ワタシはバーナ収穫のために丸太を1本1本渡っていきます。正直、ぐらぐらと揺れるのでかなり危なかったりしますが、昔は度々ボルフ小父さんに連れられて国に来たときにこの依頼に参加させて貰っていたこともあるので、落ちる心配はあまり在りません。

 昔を少しだけ懐かしく思いながら、ワタシはバーナを収穫しながら師匠のほうを見ると丸太に跨って下着が丸見えになっていましたが、バーナを収穫することが出来たみたいで安心しました。……あ、フォード君がまた落ちましたね。

 それからしばらくして、フォード君も手馴れてきて昼食を取って、再び始めようと思ったのですが、突然畑へとバーナ鳥が現れました。

 ワタシも一度は見たことはありましたが、ここまでのでかさは初めてだったので驚きが隠せません。

 しかも、巨大バーナ鳥は逃げ遅れた師匠を掴むと空高く舞い上がりました。


 バーナ鳥の習性を思い出し、ワタシはすぐに師匠を助けるために飛び出そうとしましたが、周りに抑えられました。

 そして、師匠を掴むバーナ鳥は空から師匠を落としたんです。師匠が死ぬ姿は見たくない、そう思ってワタシは叫び声を上げるとともに目を閉じてしまいました。

 ボルフ小父さんから、戦いのときに目を反らすな閉じるなと教わっていたけど、イヤなんです……!

 でも、バーナ鳥は許せない……。そう思って、閉じていた目をすぐに開けると、師匠が落ちた場所を見ずに上空のバーナ鳥を射殺さんと睨みつけます。

 そんなワタシにフォード君は声を掛けました。しかも師匠が無事だというんです。

 その言葉に驚きつつも、師匠が落ちた場所を見ると……師匠は無事でした。それも、風を自分の身体に纏わりつかせるようにしてです。


「よ、かった……無事でした……、師匠が、無事でした……」


 嬉しくてワタシは笑っているんですが、生きていたのが嬉しくて涙が零れていることに気がつきました。

 あぁ、死んでない。師匠は死んでいないんだ……!

 心からそう思っていると、再び師匠を捕えようとしたバーナ鳥が地上に急降下しているのが見えて、今の師匠では避けることが出来ないと判断して急いで駆け寄ろうとしました。

 ですが、ワタシの想像と違って、師匠はバーナ鳥の急降下を避けるとともに火柱を上げてバーナ鳥を狙いました。

 その姿を見て、師匠の記憶が戻ったのかと思い、胸が躍ります。ですが、高さが足りないのかバーナ鳥には届きません。ですがそう思っていると、信じられないものを見ました。


「え、あれって……天の光?」


 天の光、それは雨が土砂降りに降り注いでいるときにだけれど、偶に地上に降り注ぐ光のことでした。

 その光が命中した場所は、一瞬で燃え上がり。生物に命中すると、黒焦げになり命を刈り取る……そんな現象です。

 人の手では絶対に不可能な技であり、魔法。それを師匠は……やってのけました。

 光が命中したバーナ鳥は燃え上がり、一瞬で黒焦げになると断末魔のひとつも上げずに地面へと落下しました。

 ですが、そのときワタシは見ました。師匠の髪が、ムーギのような金色に真っ黒の色が混ざった斑になっているのを。

 驚きながら、目を擦ると師匠の髪は普通に戻っており……安堵したように息を漏らしていました。


 そんな師匠を見ていたワタシはあることに気がつきました。

 だから、ワタシは恐る恐る師匠に問い掛けました。

 頭のそれはなんですか? ――と。ワタシがそう言ったことでようやく師匠も気がついたみたいでした。

 頭の天辺から生えた1本の黒髪に……。

無自覚ドSって、ムチ持たせたくなるよね。

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