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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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収穫を終えて

「い、いやですっ! 水浴びなんてしませんっ!!」

「いえ、浴びないと汚れたままですよ師匠。いったいどうしたんです?」

「どうしたもこうしたもじゃ――いえ、何でもないですけど……はいりたくないんですっ!!」


 沼に落ちて、回収されたりしながらもバーナの収穫を終えた彼女たちだったけど、帰ろうにも3人の服装は泥だらけになっていたの。

 ちなみにサリーは落ちていないから、跳ねた泥水が当たって汚れたぐらいだけど……彼女とフォードの2人はもう頭から爪の先まで泥だらけだったわ。

 だからその姿を見たバーナ農家の人は3人を新人が身体の泥を落とすための貯水場へと案内してくれたの。衝立で男女別に分けられてはいるわよ。

 フォードは頭から桶に溜めた水を被って、泥を落としていたんだけどね……。彼女のほうはサリーが一緒に行って一度衣服を脱いで泥を落としたほうが良いと言ったんだけど頑なに脱ぎたくないと拒否していたの。


『……あ~…………見ないから、絶対に見ないから』

『し、信用出来ませんっ! だって、昨日のお風呂のときも見ていたんですよね?!』

『見てない、見てない! あのときはまだ部屋の中でウロウロしてたんだからっ!』

『じゃあ……見られていないってことで良いんでしょうか……?』

『…………………………………………』

『なななっ、何でそこで黙るんですかぁっ!?』


 そんな風に、心の中で言い合いをしていた彼女だったから周りを見ていなかったんだと思うんだけど……いきなり頭から水を掛けられて、驚いたわ。

 いったい何が起きたのか分からないまま隣を見ると、サリーが半ば諦めたような顔をして桶を持っていたの。

 続けて、仕方ありませんが、今は頭から泥水を落とすだけにしておきます。と言ってくれたわ。

 裸を男性に見られる恥かしさから解放されたことにホッとした彼女だったけど、目の前で服を脱ぎ始めたサリーに焦りながら、急いで両手で目を覆ったの。サリーの豊満な肉体を男性に見せてたまるものかってね。

 でも、いきなり顔を手で覆った彼女を見てサリーは不思議そうに首を傾げたわ。


「えっと、師匠? どうしたんですか、目に泥が入ってしまったんですか?」

「いっ、いえっ! なんでもないですなんでも!! あっちを向いてるので早く服を着てくださいサリー様」

「? よく分かりませんが……覗かれる可能性もありますし、急いで汗を落として服を着ますね」

「そ、そうしてください……」


 目を瞑った上に顔を手で隠して、サリーの身体を見ないように彼女は心掛けたわ。

 けれど、心の中では見られてませんよね……って心配していたの。でも、あの部屋で外が見えていたのは自分の視点ではなく、自分の周囲だったことをふと思い出したわ。

 でももしかしたら、自分だけでもうひとりの自分は違ったりするかも知れないと思いながら、恐る恐る心の中に問い掛けたの。


『あの……本当に見えていません…………よね?』

『あっ、ああ、見えてないっ。見えていないからなっ!!』


 何だか凄く動揺した感じの声が聞こえてきたから、彼女は人生初の鎌を掛けてみたわ。

 とは言っても、かなり純粋な上に世間知らずの彼女が出来るものと言ったら簡単なものだったんだけどね。


『サリー様って、凄いですよね。お、大きくって……』

『だよなー。脱いでると本当に凄いな、それに揺れまくってるし――はっ!』

『あなた……ついさっき、話すことが出来るようになったんですよね? だったら、どうしてサリー様のおっ、おっぱい……のことを知ってるんですか?』

『まっ、待て! 誤解だッ。見ていない、見ていないから!』

『それを知ってるってことは……やっぱり覗いてたんじゃないですかッ!!」


 必死に言い訳する心の中の自分を無視して、彼女は力いっぱいに叫んだわ。

 その声が何かあったのかと勘違いされたらしく、フォードが衝立を開けたの。


「し、師匠。いきなり叫んでどうしたんですか?」

「いっ、いえ……なんでもないんですなん――」

「どうしたっ!? 何かあった……の…………か」

「え、フォ……フォード君?」


 突然現れたフォードに対して、振り返ったサリーは困惑したわ。その前にフォードもサリーの水浴びをしている最中の服装に固まったの。

 だってそうよね。どちらも裸か下着姿だったんだもの。

 ちなみにフォードは裸ね、別に見られても構わないってことだったんでしょうね。

 そして最悪なことに、乱入してきたフォードの裸を彼女はバッチリその目に焼き付けてしまったわ。より正確に言うと、女性には無いものをね……。


『うわ、異世界はやっぱりでかいってことか……アリス?』

「○×△●□★◇▲×○×△●□★◇▲×○×△●□★◇▲×~~~~~~ッッ!!??!?!?!?!??! ……きゅう」

『お、おいっ! アリス、大丈夫かおいっ!?』


 頭の情報が追いつかなくて、彼女の頭は真っ白の染まってしまい……よく分からない奇声を上げて、糸が切れたように倒れたの。

 お年頃の少女にはショッキングなものだったのね。

 そんな気絶をした彼女に慌てながら、サリーとフォードが駆け寄ったのが心の中にある部屋から見えたんだけど、すぐに見えなくなったわ。

 そして、目が覚めると冒険者ギルドの部屋だったの。

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