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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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覚醒と代償?

 地面にはきっと、上空から落ちた彼女が血塗れとなって倒れている。

 そう思うと、サリーはすぐにでも駆け寄って治療しなければという逸る気持ちを抑えつつ、上空のバーナ鳥を睨みつけていたの。

 駆け寄った場合はすぐにバーナ鳥の餌食となるのが目に見えていただろうし、攻撃しようにもフェネーク対策に持ってるロープではバーナ鳥の飛んでいる高さまでは届かないし、下りてきたとしても回避されるか翼の風圧で飛ばされてしまうのが目に見えているから手を出せずにいたわ。

 上空を飛ぶバーナ鳥をどうするべきかとサリーは悩んでいたわ。だから、彼女が落ちていた場所の異常に気づく事が出来なかったの。


「お、おい……サリーさん。アリスが……」

「判っています! 早く……早く師匠を治癒しないと……今ならまだ、まだ間に合うはずなんです!!」

「そうじゃなくて! アリスが無事なんだよっ!!」

「……え? 何を言って……るん…………です、か――――?!」


 フォードの言葉に目を点にしつつ、サリーはバーナ鳥から視線を外して彼女のほうを見たの。

 するとそこには、血塗れとなった彼女地面に倒れてはいなかったの。いや、彼女はいたのよ、ただし血塗れじゃなくてその身体を風に包まれてだったけどね……その姿はまるで風に抱かれているかのようだったわ。

 でも、彼女の無事な姿を見てサリーは安堵のあまり泣いてるのか笑ってるのか分からない表情で、彼女を見ていたの。

 そして、彼女自身は何が何だか解らないといった表情で混乱していたわ。


「なっ、なにっ? どういうこと? 今の声って……え?」

『驚くのも無理は無いってわかるけど、今はそれどころじゃねーだろ! 早く地面に降りて攻撃を避けろ!!』

「え――きゃっ!? あ、危なかった……」

『よし、よくやった! 今度は反撃をするぞっ。あの高さでもオレたちの魔法なら届くから、心配するな!』

「で、でも魔法なんて……使ったことは…………」


 尻餅を突いた彼女だったけど、その場で転がってもう一度地面に叩きつけるべく急降下して彼女を捕まえようとしたバーナ鳥の攻撃を回避したんだけど、肝心のバーナ鳥は再び上空へと上がっていたわ。

 そして、頭の中から聞こえてくる声は魔法を使うように指示してくるけど……彼女自身は使ったことが無いから出来るか心配そうに口を開いたの。

 でも、最後まで口を開こうとする前に、彼女の頭の中にはどうやって魔力を身体の中で循環させるのかが理解出来ていたの。どうして理解出来るようになったのか戸惑いつつも、彼女は身体に魔力を循環させると手に『火』の属性を宿してバーナ鳥目掛けて魔力を解き放ったわ。

 すると、上空へと昇るように彼女の手から火柱が出たの。けれど、上空まで向かうまでの時間が遅い上にバーナ鳥がいる高さまで届かなかったの。


「出来た……けど、届かない……」

『じゃあ、届くようにするとかはどうだ? オレだったら一気に跳び上がって、ゼロ距離で燃やし尽くすぞ』

「あなたには出来るけど、アタシには無理……アタシは強くないから」

『いいや……お前にも出来るはずだ、アリス。だって、今のオレはお前で、お前はオレでもあるんだ』

「アタシは、あなたで……あなたは、アタシ……」


 ついさっきまで混乱していた頭の中が、綺麗に整頓されて行くような感覚を覚えつつ、彼女の頭の中に自分の物ではないと切り捨てていたもうひとりの自分の記憶と思いが少しずつ流れ込み始めたわ。

 何か変な感覚だと感じつつも、彼女は拒絶すること無くそれらを受け入れ始めたの。

 混ざり始めて行く自分の中の知識、記憶それらを感じながら……冷静な部分がバーナ鳥を見据えていたわ。

 針のように細く、風よりも早く、どんなに逃げたとしても確実に相手に攻撃を当てる方法が無いかを彼女は考えたの。

 そしたら、答えはすぐに見つかったわ。彼女の世界では人の手に余る自然が作り出すものであり、彼の世界では原理も分かって人の手で生み出すことが出来るもの。


「これで、終わりにする……!」

『ああ、ぶちかませ! オレ(アリス)!!』


 頭の中から自分を鼓舞する声に頷いて、彼女は魔力を身体に循環させると『水』と『風』の属性を手に宿したの。

 もうひとりの自分の中にあった知識を元にそれらの属性を掛け合わせることで、彼女の中に新しい属性が産声を上げたわ。

 バチバチッっていう、激しい音が彼女の手から聞こえたと思った瞬間、眩しい光が放たれたの。

 その光に顔を覆った直後、上空から甲高い声が聞こえたと思ったら、地上へとバーナ鳥が落下してきたわ。それも、黒焦げになってね。

 絶命したバーナ鳥を見ながら、彼女はふぅ……と息を吐いて、緊張を解いたわ。

 ちなみに彼女は気づいていないみたいだけど、頭の天辺から妙に大きな黒髪が1本飛び出ていたわ。どう見てもアホ毛って感じのね。

 それに気づいていない彼女はアホ毛を揺らしながら、近づいてくるサリーたちに手を振っていたわ。

 そんな彼女を見て、サリーは一瞬ギョッとしつつ、頭でピコピコ揺れるアホ毛に視線を移しながら、恐る恐る訊ねたの。


「あ、あの……師匠、頭の上のそれはなんですか?」

「…………え?」

ここ最近、仕事の昼休みに寝ようとしてるんですけど、全然眠れないんですよね……何でかなぁ。

ちなみにかなり疲れています。

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