冒険者の服を買おう
とりあえず、城から追い出されて、どうするべきかって悩んだ彼女だったわ。
だけど駄賃を貰ったから服を買い換えようと考えて、服屋か道具屋か防具屋に行くことに決めたの。
ちなみに自分ひとりだけで移動したらまたも迷子になってしまうだろうと考えたから、城の門の前に居る衛兵に何処に行ったらそれらがあるかと問い掛けたの。
衛兵も仕事だからか、嫌な顔をひとつもせずにそれらが並ぶ商店街はどこかということを教えてくれたわ。
そんな訳で教えられた場所に向かって、彼女は歩き出したの。
しばらく歩いて行くと、城周辺は人が疎らだったのに段々と多くなっていって、商店街の辿り着いたころには活気付いていたわ。
何ていうか、テレビで見たことがあるコミケのようだったわね。
コミケ? あー……お祭りね、お祭り。自分で作った本を売るお祭り。あんたは知らないまま綺麗で居なさいよ。
で、商店といっしょに屋台もやっているからか、美味しそうな香りが所々からして……お腹が空いたの。
というか、お昼を過ぎている上に何も食べていないんだからお腹が空くのは当たり前よね。
……気がつくと、彼女の手には肉串が握られていたわ。
「あ……あれ?」
「はい、肉串2本で10Gな。……お嬢ちゃん?」
「あ、はい。10Gね。10G、10G……はい、これで」
「うん、まいどあり! またよろしくなっ!」
どうやら、お腹が空き過ぎて彼女はフラッと一番美味しそうな肉串を2本買ってしまっていたの。
軽率な行動をした自分にちょっとだけ後悔しつつ、彼女は道の端に移動して肉串を食べることにしたわ。
何の肉かは分からないけど、熱々の肉串を噛み締めると脂がジュワッと溢れて、塩なのかこの世界独特の調味料なのかは分からないけど、スパイシーで甘辛い味わいが食欲を増して行ったわ。
アリスのように小柄な女性には少し食べきれないかも知れないと思ってた肉串2本だったけど、お腹が空いていた上に初めての味だったからか彼女はそれらをぺろりと平らげたわ。
で、平らげたから今度こそ換えの服を買うために服屋に向かったの。
「すみません、冒険者の服ってありますか?」
「申し訳ありません、当店は冒険者の服は取り扱っておりません。ですが、お客様にはこちらなんていかがでしょうか? そのようなボロ布を纏うよりも、素敵なドレスが似合うと思われますよ」
「えっと、オレが今欲しいのは冒険者の服なので、遠慮させてもらいます」
「そうですか、またのお越しをお待ちしております」
「すみません、冒険者の服ってありますか?」
「お嬢さん、ここは道具屋だから冒険者の服はあるにはあるが、男性用だからお嬢さんが着るには大きすぎるよ」
「そうですか……」
「冒険者の服よりも薬草とかどうだい? 今なら12枚で100Gで安くしておくよ?」
「いえ、いいです」
「えーっと、すみません、冒険者の服……」
「あぁっ!? なんだってぇぇ!?」
「いや、だから冒険者の服をっ!」
「わりぃがちょっと聞こえないんだ! またあとにしてくれっ!!」
「……だめだこれー」
結局、服屋では別の服を進められ、道具屋ではサイズが合わず、防具屋では鍛冶の音が響いて声が届かなかった。
王都の荒波に挫けそうになる彼女だったけど、何時までもボロボロの格好では駄目すぎるとまたも考える。……けれど、彼女に合う冒険者の服のサイズがまったく無いのだ。
どうするべきか……そんな風に悩みながら、行き交う人たちを見つめる彼女だったけど、一人の男性と目が合った。
一瞬だれか分からなかったけど、門のほうで別れた冒険者だということを思い出し、彼女も頭を下げた。
「お前、こんな所で何してるんだ? 衛兵に連れられて行ったんじゃないのか?」
「そうなんですけど、ゆうしゃとしての挨拶が終わったら追い出されたんですよね。ちなみに冒険者の服の換えを探しても見つからないし」
「そうなんだ――って、お前ゆうしゃなのかよっ!? え、女なのにっ?」
「はい、いちおうホンニャラッカの街のゆうしゃみたいです。まあ、期待されなかったけどね……へっ」
「そ、そうなんだ。とりあえず、元気出せよ……っと、そういえば着替えを探してるんだったな。じゃあ着いて来な、良い所を紹介してやるよ! そこなら、お前に合うサイズの服もあるだろうよ!」
「えっ、本当に!? だったら、お願いします!」
不思議そうに見ていた冒険者に、先程のことを毒混じりに言うと彼女がゆうしゃだということに驚かれたのよ。
で、冒険者は良い所を紹介すると言って、彼女は冒険者に着いて歩き出したの。
本当、縁って大事よね……。
ちなみに連れられて来た場所は冒険者ギルドだったわ。
慣れるために連続投稿中。多分あと1回で今日は止まるかも。