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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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最初からクライマックス

 翌朝、寝起きでまだ眠いのか彼女はうつらうつらしながら、何だか小刻みに聞こえるコンコンという音を目覚まし代わりに目が覚めたわ。

 寝惚けてて初めは何の音か判らなかったけど、ベッドから起き上がると同時にそう言えば今日は依頼に行く日だと考えて行動に移り始めたわ。

 初めに、寝巻きから冒険者の服に着替えるためにローブのような寝巻きに手を掛けて裾から一気に引き上げたんだけどね……、それよりも前に起きたと声を掛けるべきだったのよ。

 え、どうしてかって? だってね、何度もノックしたのに返事が無かったから心配したのかサリーがね、部屋の扉を開けたの。

 当然、着替えようとした彼女の格好は寝巻きをたくし上げて、少しぷにっとしたお腹とかその中心の窪んだ臍とか、パンツとかが丸見えな状態だったわ。ちなみにパンツはドロワーズとかの色気が無いパンツね。


「おーい、サリーさーん。アリスのやつは起きまし――へぶっ!?」

「ご、ごめんなさいフォード君! ですが、これはちょっと見せるわけにはいきません!!」

「へぁ……へ? え? えぇ!?」

「驚いてる場合じゃないです師匠! 早く元に戻してください!」


 焦るサリーの声でようやく頭が回り始めた彼女は驚きの声を漏らしつつ、部屋の中に入ってきたサリーにたくし上げていた寝巻きを下ろされたわ。

 驚く彼女の頭の中では、男性に見られたという驚きと恥かしさがいっぱいでその場でへたり込んでしまったの。

 それを見つつ、サリーは急いで扉を閉めると心配しつつも起きたかどうか分からないからちゃんと返事はして欲しいと彼女を叱ったの。

 それはもっともな意見なので、彼女はしょんぼりしつつ頷いていたわ。

 でも、そうしていると何時までも次の行動に移れないと考えているのかサリーは話を区切ると、着替えるように言って部屋から出て行ったの。多分、フォードの相手をしてたんでしょうね。


「うぅ……朝からこんなダメダメで今日は大丈夫でしょうか……」


 しょんぼりとしながら彼女は呟いて、今度こそ服を着替えることにしたわ。

 しばらくして着替えを終え部屋から出てきた彼女だったけど、見るからにしょんぼりしてたからかサリーが優しく頭を撫でて励ましてくれながら朝食を開始したわ。

 朝食を食べ終えると、3人で冒険者ギルドを出て……サリーが事前にハスキーから教えて貰っていたバーナ畑の場所へと移動を開始したんだけど……街からほんの少しだけ離れた場所にあったわ。

 だからその分歩くことになったんだけど、久しぶりに昼に外を歩く彼女はかなりはひはひ言って息を切らしていたわ。数日食っちゃ寝してただけなのに、絶望的な運動不足ね。


「えっと、師匠……大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫……です」

「いや、なんつーか物凄くダルそうに見えるんだけど?」

「まだまだ……行けますッ」

「行けますっていうか、行かないといけないんだって……」


 心配する2人を他所に、はひはひ言いながらも彼女はそう言ったわ。ちなみにサリーは心配そうだけど、フォードは呆れていたわ。

 それからしばらく歩き続けて、顔から汗がポタポタと落ちながらようやく彼女はバーナ畑へと辿り着いたの。

 何ていうか、始める前からもうクライマックスって感じね……彼女。


「すみません、ギルドの依頼で来たのですが」

「おぉ、あんたらが今日手伝ってくれる冒険者か……って、何かひとり既に疲れ切っていないか?」

「えーっと……そ、それは……その、そう! ちょっとご飯を食べ損ねたんですよっ!」

「サ、サリーさん……そんな言い訳は……」

「そりゃ大変だ! 嬢ちゃん、朝飯はちゃんと食ったほうがええぞ! とりあえず、今はこれでも食って栄養をつけな」


 バーナ農家の人が優しいのか、彼女の様子がかなりアレ過ぎたのか、サリーの言い訳が通用したのかは分からないけど農家の人はそう言うと、黒ずんだ細長い物を出して彼女に差し出してきたの。

 恐る恐る受け取った彼女は渡された物に首を傾げたんだけど、ぐにぐにとした感触から本当に食べ物なのかと思いながら鼻先を近づけると甘い匂いがしたので食べれると判断したみたい。

 ちなみに疲れてボーっとしているからかちょっと野生っぽい考えになってるみたいなのよね……。

 で、無意識に彼女は黒ずんだ食べ物の頭を動かして()を向き始めたわ。初めて見る食べ物なんだけど、何故か知ってるような気がしたのね。

 黒ずんだ皮が剥かれると、中にはクリーム色をした果肉が入っていて……恐れること無く彼女はそれを口に入れたの。


「あ……美味しい……これってバナナ……?」

「ばなな? 師匠、バーナですよ?」

「え、あ……これがバーナなんですね。ってばなな??」

「おいおい大丈夫かよアリス? まだ疲れてるのか?」

「い、いえ、大丈夫ですっ。これを食べたらすぐにでも働けます!」


 無意識に自分の口から出た言葉に疑問を抱きつつも、彼女は残りのバーナを口に入れたわ。

 一気に口の中に入れたけど、芳醇な甘さとほんの少しの酸味が疲れた彼女の身体を癒してくれたの。

 食べ終わったころに、バーナ農家の人が収穫するための道具を持って戻ってきたわ。

 そして、収穫に関しての説明が開始されたの。

ステータスが高くても動かす人間が理解していないと宝の持ち腐れ的な感じです。

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