小まめな運動は大事
朝食を食べ終えて、サリーとフォードの2人は受付で受けた依頼を終わらすためにギルドから出て行き……彼女は部屋へと戻ったわ。
部屋に戻ってからは、ベッドの縁に座ってボーっとして時間を潰し……お昼頃になると1階に降りてお昼ごはんを食べて、夕方頃にサリーたちが戻ってくるまで、また部屋でボーっとしていたわ。ちなみに戻ってきたら3人で晩ごはんよ。
食べる、寝る、食べる、寝る、時折ハスキーと昼食を取る。そんな毎日を3日ほど過ごして、ようやく彼女はハッとしたわ。
「こ、このままじゃダメだと思いますっ! というよりも、絶対にダメですっ!!」
正直な話、もっと早く気づけば良いかも知れなかったけど、少し遅れてようやく彼女は気づいたわ。
その代償として、お腹周りが少し……本当にほんのすこ~しだけだけどふっくらとしてしまったけど、巻き返すことが出来る部類のふっくらだったわ。
適度な運動を兼ねて、明日はサリーたちの依頼に参加させてもらえないかと話をしようと彼女は決心したわ。
外はまだ怖いけど、あの2人が付いてくれるなら、彼女は大丈夫だと思ったのね。
そのことを晩ごはんのときに2人に言うと、少しだけ困った顔をしつつもどうするべきかと2人は顔を見合わせたわ。
「えっと、師匠……大丈夫ですか?」
「まだ無理しなくても良いんだぜアリス?」
「いえ、その……無理とかじゃなくてその……ダメ、ですか?」
今の彼女を見ているとかなり不安になってしまうようだったみたい。そんな2人の表情を見つつ、彼女はやっぱり無理かと思って表情を暗くしたわ。
その表情にサリーは大丈夫と言いそうになったみたいだけど、2人が受ける依頼は主に近隣のモンスターの討伐の手助けなので、記憶が無い彼女には荷が重いと感じたのね。
そんなとき――。
「サリー、話を聞いていましたが、街中の依頼としてバーナ畑の収穫ならありますよ?」
「え? 叔父さん、それって普通は……いえ、ありがとうございます」
「どうしたんです、サリーさん? まあ、危なくない依頼が受けることが出来たってことで良いんですよね?」
「いえ、気にしないでください。それよりも師匠、師匠にも出来る依頼が入りましたよ♪」
「はっ、はいっ! 頑張ります! ……ところで、どんなことを行うんですか?」
実質、冒険者として初めての仕事に彼女はドキドキしながら、サリーに問い掛けたの。
するとサリーは苦笑しつつも、ハスキーが言ってたことを繰り返すように言ったわ。バーナ畑でバーナの収穫を行うってね。
今でこそ普通に食べれるバーナだけどね、昔は獣人の国だけの果物だったのよ。というよりも、その国はその国だけの果物って感じに他の国からの果物はあまり見なかったの。
だから彼女はバーナと聞かれても首を傾げたわ。フォードはその名前の果物にピンと来たみたいだから、きっと依頼中の食事で食べていたのだと思うの。
彼女もどんな果物か知りたくて頼んでみようと思ったんだけど、運悪く食堂の在庫は無くなっていたから食べることは出来なかったわ。
少しだけ残念に思ったけど、それならば明日の収穫のときに見れば良いと考えて、そのほうがドキドキも倍増だということにしたの。
そして、食後に3人はそれぞれ解散となり、彼女は部屋に戻ろうとしたんだけどサリーに呼び止められたわ。
どうしたのかと首を傾げながら、サリーのほうを向くとニコニコ笑顔だったが何処か妙に嫌な予感を感じたの。
でも聞かないといけない気がしたので、彼女は恐る恐るサリーを見ながら口を開いたわ。
「えと、どうしましたか……サリー様?」
「はい、こうして師匠も元気になっていることですし、ちょっと一緒に湯浴みに行こうと思いまして」
「え?! あ、あの……アタシは別に入らなくても大丈――ひゃ!? シャ、シャリーしゃま??」
「…………師匠、服を変えるだけじゃ臭いは取れません。なので、すぐに行きましょう、今すぐ行きましょう!」
いきなり顔を近づかれた彼女は顔を真っ赤にして驚いたけど、サリーは笑顔ながらに凄い気迫で彼女に詰め寄ってきたわ。
そして、サリーが顔を近づけた理由が自分の身体のにおいを嗅いでいたことに気づいた彼女は顔をさらに赤く染めて俯いたの。
正直、男からにおいを嗅がれるのはかなり恥かしすぎるものだと思うけど、同性からそんな風にされるのもかなり厳しいものだと心の底から彼女は思ったわ。
だから、彼女は諦めて頷くと嬉しそうにサリーは湯浴みをするための道具を取りに部屋へと戻っていったわ。
その様子を見つつ、彼女は公衆浴場に連れられると丸洗いされるのだろうなと心から思ったわ。
食っちゃ寝し続けるとそうなるのは当たり前です。
とは言っても、元々アリスは――と、そこは次回に回します。