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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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番外編:アリス・4

 自分が自分の知っているものではなくなって行くことに恐怖を抱きながら、部屋の隅で怯え続けていると何時の間にか数日が過ぎていました。

 ですが、アタシの居るこの部屋には時間の感覚が無いのか、何時が朝で昼で夜なのかがまったく分かりません。

 それが何時なのか分かるのは窓の外から眺める光景で理解するだけです。

 怯えながらも窓を覗くと、窓の外のアタシは広い更地で魔法を使って何かを作っていました。

 ですが、そのやり方が上手く出来なかったらしく……何度も失敗しているのをアタシは見ました。

 というよりも、最強と名高い鉱石などが熱によって溶ける光景なんて初めて見ましたが、それをしているのが窓の外のアタシだということに……恐怖します。


「アタシには無理、こんなことは無理なのに……何で出来るの? こんなの違う……違う」


 怯えるアタシの心境を知らずに、窓の外のアタシは溶かして鍛冶を行うということは無理と判断したらしく……冒険者ギルドの2回に割り当てられた部屋でいろいろ本を読んで考えているようでした。

 その余所見をしていた結果、手に持っていた金属がドロドロに溶けていました。正直、ドロドロに溶けるまで金属を変化させるなんてどれだけの魔力を与えていたのか分からないけど、信じられない光景です。

 ですが、ほんの偶然だと思いますが……窓の外のアタシは常識を覆す行動をしました。

 再び形を戻そうとしたときに、一瞬何かを考えていたらしく……ドロドロに溶けた金属の代わりに窓の外のアタシの手には数枚の硬貨が握られていました。

 数枚は(ギリー)でしたが、他数枚は初めて見る絵をした良く分からない文字の硬貨でした。でも、何故だか500円玉だとアタシは分かります……もしかしたら、窓の外のアタシの記憶なのかも知れません。


「……貴方は、誰なの…………?」


 無意識にアタシの口からポツリとその言葉が出ましたが、アタシに返事を返してくれるわけがありませんでした。

 そして、窓の外のアタシは何かを掴んだらしく、その日の晩に金属と鉱石を溶かして1本ずつ剣にしたと思うと……何かを思いついて、金属と鉱石の2つを混ぜ合わせて一つにして、それを1本の剣に作り変えたではありませんか。

 驚きながらも、アタシはその光り輝く朱色の刀身に魅せられましたが、気の迷いだと思って頭を振ります。

 ある程度、造り終えて満足したのか窓の外のアタシは冒険者ギルドに戻ると、そのまま部屋に……って、ま――またですかっ!? またフォード様の部屋のベッドで眠るんですか!?

 アタシはまだ結婚もしていないし、恋もしたことが無いのに、歳の近い男性と一緒に寝るのはどうかと思います! だからいい加減、自分の部屋で眠ってください窓の外のアタシっ!!

 正直、フォード様は子供っぽいところがあるけど、優しいって思いますよ? ですが、一緒に眠るのはどうなんですか?! 男は狼だって言うじゃないですか?! って、何処で聞いたんでしょうかそんな言葉……?

 首を傾げるアタシでしたが、窓の外のアタシは結局フォード様のベッドに潜り込んでしまい、アタシはアワアワするだけでした。


 そして、翌朝またも事態が変化しました。

 窓の外のアタシが創った剣のことでギルドマスター様に呼ばれ、目の前で実演すると隣に居た受付のサリー様が涙を流して窓の外のアタシを師匠と呼び始めたのです。

 窓の外のアタシは驚いていましたが、アタシも驚いていました。だって、年上でお姉さんみたいなお胸が大きな人がいきなりアタシを師匠ですよ? 驚かないのがおかしいですよ!

 しかも、驚くアタシだったけど、さらに驚きました。だって、そのサリー様が獣人だったんですから!

 ふわっふわの犬耳、ふさふさの犬尻尾……きっと触ったら柔らかいんだろうな、ふかふかなんだろうな……そんなことを考えていると、窓の外のアタシは何時の間にか獣人の国に行くことになりました。

 その言葉に思考が停止して、ハッと目が覚めると何時の間にかバッファローホースの馬車の中に窓の外のアタシは居ました。


 初めての馬車にドキドキしつつ見ていると、窓の外はいきなり深夜となっていて戦いを繰り広げていました。

 少し前まで同じ眼で見ていたような感覚だったのが、飛び飛びとなっていて……まるで、窓の外のアタシの記憶の中にあるてれびというもののちゃんねるをかえたような感じだと思って急に不安になりました。

 何故アタシは窓の外のアタシの記憶が分かるのか、そしてどうしてその言葉を普通に使うことが出来るのか……普通なら違和感を覚えるはずだとアタシは思っていたはずなのに……。

 不安になり始めると同時に、頭の中では知らない顔なのにその2人は両親で自分に話しかける妹の姿が浮かんできて、アタシは被りを降る。


「知らない、知らない! こんな記憶知らない! この人たちはアタシの親じゃない! この人はおかあさんじゃない!! 出てって! こんな記憶頭の中から出てってよ!!」


 侵食されていく自分の記憶に恐怖しながら、アタシは部屋の中で叫ぶがその声は届かない。

 そう思うと、寂しくなると同時に人知れず自分という存在が消えて行くのではないかと恐怖してアタシは怯えます。

 そんなとき……不意に後ろから声がしました。恐る恐る気配がしたほうを向くと……アタシが立っていました。

 目の前に立つアタシがアタシに向けて心配そうな顔をしながら声をかけて近づいてきます。

 けれどアタシは怯えながら、部屋の隅だというのにさらに後ろに行こうとしました。


「――――――、――――」


 そんなアタシを心配そうに見つつ、アタシがアタシに声をかけようとしたけど混乱し恐怖するアタシの頭はその声を受け入れなかった。

 だから、アタシは心の底から思ったの、出てけ。此処から出て行け! と……その瞬間、心配そうにアタシに近づいてきたアタシを何かの力が押し飛ばしました。

 驚くアタシの顔を見ながら、アタシはやったことへの後悔と……目の前から居なくなってくれたことへの安堵を感じていました。

 ???メーター

 ■■■■□ 80%

 かなりギリギリ。

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