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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
53/496

獣人料理を召し上がれ

会話分は少なめです。

 荷物を床に置いて、宛がわれた部屋のベッドに寝転んでいた彼女だったけど、しばらくして開けられた窓から差し込む光がオレンジ色になり始めたころに、部屋の扉が叩かれて誰かと思いながら扉を開けたわ。

 開けた扉の向こうには、サリーとフォードが立っていたわ。


「どうしたんだ? まだ休んでいても良いと思うんだけど?」

「師匠、もし良かったらですが一緒に食事でもどうですか? 丁度良い時間だと思いますし」

「……辛くないのだったらついて行くけど?」

「だ、大丈夫だと思いますよっ。人間の国から来た人たちにも人気な店なので!」

「えっ!? サ、サリーさんなんですかその不安感誘うような言葉は……」

「だ、大丈夫です。多分大丈夫です! ……きっと」


 不安になる彼女とフォードだったけど、サリーの強い意向によってオススメの店まで移動したわ。

 到着した店は大衆食堂といった雰囲気を醸し出す酒場で、開け放たれた窓や扉からは楽しげな声が響き渡っていたの。

 楽しげな声を聞きながら中に入ると、大量の丸机が置かれただけの店内で人や獣人が楽しそうに酒を飲み、料理を食べていたわ。彼女たちに気づいたニャー族の店員にサリーが3人だと告げると、丸机のひとつに案内されて彼女たちはそこに立ったわ。

 そしてサリーがなるべく辛くないメニューでのお任せを頼むと、ニャー族の店員は笑顔で答えて厨房に伝えに行ったみたい。ちなみにこの店の制服は少し短いスカートだから、太股が良く見えるんだけどゆらゆら揺れる尻尾とその太股をフォードはチラチラと見ていたわ。きっと男の宿命なのね……。


 しばらくして、最初の料理が届いたんだけどサラダのような物だったわ。

 木の小皿で取り分けられたそれを食べたんだけどね、シャクシャクとした食感とともに細切りにした果物の甘みと別の果実の絞り汁の酸味、香辛料の辛味と塩の味が口の中に広がったわ。

 え、不味かったのかって? んー、不味くは無いんだけど面白い味って感じだったわね。

 サリーは普通に食べているんだけど、彼女とフォードは首を傾げながら食べていたわ。


 そんな状況で次の料理が届いたんだけど、今度はマッキーを揚げたものだったわ。

 チュー族の村で食べたマッキーよりも小さいんだけど、転生前の世界で度々食べたことがある春巻きって食べ物に良く似ていたから、期待しながら彼女は食べたわ。その予想は彼女を裏切ることは無かったの。ただし……。

 パリッとした食感とともに揚げられた皮は割れて、中から熱々のアンが零れてきてかなり熱かったわ……。

 驚く彼女だったけど、フォードは顔に付いたのか悶えていたわ。熱いのを堪えつつ、サリーを見ると噛むというよりも呑み込むといった食べ方をしていたの。

 納得しつつ、それを呑む込むように食べると腹の中をドクドクと熱い脈動を感じて活力が沸くのを感じたわ。


 そして次に届いた料理は麺料理だったの。ハツカたちに食べさせてもらった辛いスープじゃなくて、何だか透き通ったスープの中に盛り沢山の野菜が乗せられた物だったわ。

 少しだけ恐る恐るスプーンで汁を掬って口に付けると、あっさりとした味わいながらも肉で取られた出汁の味わいがしっかりとしていて、ついさっきまでの口の中を癒してくれるようだったわ。

 これなら安心できると感じつつ、彼女はフォークを使い……本当は箸があったら嬉しいけどと思いつつ麺を食べ始めたわ。

 モチモチとした食感の麺としゃきしゃき野菜の食感、そして時折解れるまで煮込まれた肉のしっとりとした甘みが口の中へと広がったわ。

 彼女もこれは気に入ったみたいだけど、フォードのほうはもっと気に入ったみたいで美味しそうにズルズルと食べていたの。突き抜けるような辛味も酸味も無いから人間も満足出来る味わいなんだと思うわ。


 麺料理に満足していると、次は米料理が出されて少しだけ驚いたけど獣人の国はマイスと呼ばれる淡白な野菜が主食となっていると聞かされたわ。

 というか、マッキーも今食べた麺料理もマイスを砕いて粉にした物で作ったというのを聞いたの。それを聞きながら彼女は納得しつつ、出された米料理を見たわ。

 一枚の皿の上に茹でられた鳥肉と炊かれた米が乗せられていて、それを掬って口を付けると……彼女の頭の中で無数の鳥が舞い踊ったわ。

 薄い塩だけで長時間茹でられた鳥肉と多分その茹で汁で炊かれたマイスが、一つの皿で鳥を表現していて美味しさを引き立てていたの。

 やっぱりこの料理も彼女とフォードの2人は一心不乱で食べたわ。というか、彼女にとってはこの世界で初めて見たまともな米の形をしているものだから感動も大きかったわね。


 これらの料理に大分満足していると、今度は大量の串焼きが出されたの。店員の説明によると、片方はバッファローホースの肉を特別なタレに漬け込んで柔らかくした物であり、もう片方は食肉のポークミニホースの肉を甘めのタレをつけて焼いた物みたいだったわ。

 サリーはニコニコしつつ串焼きを手に取って食べ始め、美味しいのか嬉しいのか分からないけど……お尻から覗く尻尾はブンブンと揺れていたわ。

 フォードと彼女も少しきつくなってきたお腹を気にしつつ、食べるとポークミニホースは噛み締めるほど肉の脂が口に広がり、かなり甘めに味付けされたタレと混ざり合って丁度良い甘さになっていて、美味しいと感じたわ。

 豚串に満足しつつ、今度は牛串を手に取って口に付けると……口の中で綺麗に解れたの。この柔らかさに感心しながら、甘辛い味を味わいつつ彼女は牛串も食べたわ。

 これだけ食べてかなりお腹がいっぱいになってきたんだけど、最後の最後にデザートが出されたの。


 食後の出されたデザートは2種類で片方は見た目はプリンみたいな黄色をしていて、スプーンで表面を突いてもプルプルと震えていたからプリンなんだろうと考えたわ。

 そしてもう片方は、炊いたマイスを潰して餅にした物に甘い白蜜がかけられた白いぜんざいみたいなデザートだったわ。

 プリンとぜんざいって何かって? えっとね、プリンはプルプルとして甘い食べ物で、ぜんざいは甘い豆を使った飲み物よ。機会があったら今度作ってあげるわね。っと、喜ばないの。

 出された2つのデザートを食べたけど、プリンみたいなのは大分甘めに作られていて苦い物が逆に欲しくなるような感じがしたわ。そして、ぜんざいはモチモチとした餅の食感と甘めの蜜が美味しかったわね。

 説明がかなり雑だって? うん、正直かなりお腹いっぱいで感想を言う余裕がかなり無かったわね。


 それから、差し出されたかなり渋めのお茶を飲んで口の中をさっぱりさせた3人は大変満足しながら、店から出たわ。

 サリーは平然としていたけど、彼女とフォードの2人は腹を押さえながらフラフラと歩いていたの。

 正直言って、食べ過ぎたとしか言いようが無かったわね……。

 だから、その日は冒険者ギルドに戻って、倒れ込むようにしてベッドに潜り込んだわ。とりあえず、話は明日することにしてね……。

メシウマに感じてもらえたら嬉しいです。

料理のほうはベトナム料理とタイ料理を参考にさせてもらいました。

……一度食べてみないとなぁ…………(ぉぃ

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