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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
52/496

手配

「やあ、ようこそサリー。久しぶりだね、ボルフさんからこちらに向かったと手紙を読んでからしばらく時間が掛かったので心配していたんですよ?」

「お久しぶりです、ハスキー叔父さん。こちらもいろいろあって大変でした」

「ええ、一応国境での出来事は耳に届いています。ですがその件でいろいろと困ったことが起きているみたいです」

「困ったこと……ですか?」

「はい、その件を含めていろいろと話をするべきだと思いますね。それと、この数日間どうしていたのかも」


 そう言うと、ギルマスのハスキーは彼女たちに椅子に座るように促したわ。

 それに従って、サリーが真ん中に座ってその隣に彼女とフォードが座ったわ。

 ちなみにフォードはハスキーがにこりと微笑むと、椅子のかなり端に縮こまるようにして座ったの。たぶん、叔父として姪の貞操を護る的な意味を込めてみたんでしょうね。

 それで彼女たちはサリー主体の元でこの数日間何があったのかを話したわ。

 国境でひと悶着を起こして逃げ出した先はチュー族の聖地で、そこで災難に巻き込まれたけどすぐに対処をしてチュー族と友好関係に気づいたということをざっくりとね。


「スナさんが認めたとは、なかなか凄いじゃないですかサリー。それと、アリスさんとフォードくんでしたね? あなたがたのことはボルフさんからの手紙で知っています。特にアリスさんのことは……ね」

「……そりゃどうも」

「お、おやっさん何時の間に……」

「あの、ハスキー叔父さん。こちらのことも話し終えたので、いろいろと困ったことを聞きたいのですが、大丈夫ですか?」

「ええ、別に構いませんよ。まあ、フォードくんのほうはかなりショックを受けるでしょうけどね」


 キョトンとするフォードを他所に、ハスキーはあっさりと言ったわ。

 3人が人間の国で手配を喰らってしまっているとね。まあ、当たり前よね……あんな髭チビデブでも権力持ってる人間なんだから、殴りつけるというのはいろいろと不味かったわね。

 けれどこれは過ぎ去ったことだから、と思いながら軽く溜息を吐くとようやくフォードが状況を理解したようだったの。


「え、て……手配? 手配って、え? もしかして、アリスがあのクソ野郎を殴りつけたからか?」

「クソ野郎というのが誰かは分かりませんが、人間としてかなり嫌いなあの研究者を殴ったら普通はそうなりますね」

「そんな……ワタシを庇ったせいで師匠が手配を……いえ、ワタシたちもですか」

「別に良いだろ。ムカついたから殴った。だから後悔なんてあるわけが無い、だからサリーは気を病む必要は無い」

「あ……。師匠……ありがとう、ございます」


 悲しそうな顔をするサリーを励まそうとしたのかぶっきら棒に彼女はそう言うと、サリーの頭を撫でたわ。

 するとサリーは照れたのか恥かしそうに顔を赤らめて、撫でられるがままにされていたの。ちなみに頭の上の犬耳の感触は素敵だったわ。あと、髪もサラサラしていてさわり心地も抜群だったの。

 そんな妙な空気を醸し出し始めたギルドマスターの部屋だったけど、ハスキーがパンと軽く手を叩いたことでその空気は霧散したわ。

 ある意味助けられたような気がしたけど、彼からは姪にちょっかいかけるな的なオーラを感じたけど……多分気のせいだと思いたかったわ。


「さて、道中疲れたでしょうから、今日のところはゆっくりしてください」

「ありがとうございます。ハスキー叔父さん、では宿屋のほうに――」

「いえ、上の部屋が空いていますので今日のところはそちらで泊まってください」

「いいんですかっ!? やったな、サリーさん、アリス。宿代が浮くじゃないかっ」

「フォード君、はしゃがないでください。その、ハスキー叔父さん大丈夫なんですか? 他に泊まっているかたとかは……」

「問題ありませんよ。可愛い姪が宿屋に泊まるぐらいなら、見える範囲に置いておいたほうが気が楽です」


 そう言うと、ハスキーが呼び出し用のベルを鳴らすとさっきの受付の女性が顔を出したの。そして、彼女たち3人を2階に案内するように命じると恭しく頷き、案内をし始めたわ。

 そんなハスキーの瞳はまったく笑っていないように感じたんだけど……多分、かなり姪っ子ラブな叔父馬鹿なんだろうと思ったわ。そんな風にこの国のギルドマスターを評価しつつ、彼女はあとでもう一度顔を出さないといけないと思ったの。

 というよりも、かなり忘れかけていたけど……旅立つ前に言われた本当の依頼のことを聞かないといけないのを思い出していたの。

 それを心の片隅で思いながら、彼女はサリーとフォードに声をかけて宛てられた部屋の扉を開けて中に入って行ったわ。

こうして彼女たちは指名手配をくらいましたとさ。まあ、人間の国限定で。

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