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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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名前

ちょっと風邪っぽいのでしばらく1日1本ペースになりそうです。

 あら、おはよう。昨日は何時の間にか寝ちゃってたわね。

 ……ああうん、ドブの話はかなり分かり辛かったからね……。大丈夫よ、今日の話はもうドブは出ないはずだから。

 というか、かなり端折ったほうが良いわね。とりあえず、彼女はねチュー族の村で3日間過ごしたの。

 だけど、2日目の昼にドブに言われた言葉が気になって仕方ないのよ。

 言われた言葉ってどんなのかって? えっとね……っと、父さんが起きちゃうわね。出かけてから続きを話そうか。

 さ、それじゃあ朝ごはんにしましょう! ほら、準備した準備した!


 ごちそうさまでした。さ、食器を向こうまで持って行こうか……うん、よく出来ました。

 それじゃあ、父さんを見送ろうね。いってらっしゃい。気をつけてね。

 ……よし、じゃあ続きを話そうか。

 彼女はね、ドブに言われた言葉がずっと頭から離れないまま、行商人がやって来てチュー族の村を離れたんだよ。

 言われた言葉は何かって? それはね……「自分の名前を覚えているか」よ。

 うん、彼女の名前はアリスだから、アリスで良いんだろうね。でもね、それは身体の持ち主の名前なの。

 だから、今アリスを動かしている彼女の中の彼にも名前があったはずなんだよ。

 でもね……彼女は思い出せなかったの。彼だったころの名前を……ね。


「気をつけて行けよ。サリーちゃんはハスキーによろしくな」

「はい、この3日間ありがとうございました。スナ族長」

「と、とりあえず……死なないように気をつけます」

「アリス様も気をつけてくれ。もしも、我らの助けが必要になったら何処へでも駆けつけよう」

「ああ……またな」


 行商人に話を通して、馬車の中に入れて貰った3人……というか、サリーとフォードはスナ族長とハツカに手を振っているけど、彼女はボーっとしたままだったわ。

 正直、今彼女の頭の中を締めるのは自分、というか彼だったころの思いでだったの。

 年齢は17歳、性別は男性、体格は学年で見たら平均で可もなく不可もなく。

 何処にでも居るようなただの高校生で、交友関係はいたって普通……一応昔からの友人として、オタクが一人居てそいつに小説とか勧められて読んだりする。ゲームは普通に有名な大作は度々やったことはある。

 そして、家族は両親と1つ下の妹が1人の4人家族……いや、愛すべき飼い犬を含めると5人家族と言っても差支えがない。


(両親の名前……覚えている。妹の名前……覚えてる。自分の名前……アリス。違う、これは彼女の名前……じゃあ、オレの名前は? …………思い、出せない)

「師匠、どうしました? 何だか顔色が悪いようですけど……」

「はは~ん、もしかして馬車に酔っちまったのか? ほんとう、お子様だよなお前は~」

「……大丈夫、気にしないでサリー。あと、フォードは蹴り飛ばされたい?」

「ごめんなさい、冗談でした」


 謝るくらいなら言わなければ良いのに……そんなサリーの視線がフォードに向けられるのを見ながら、彼女は馬車の外から見える景色に視線を向けながら……溜息を吐いたわ。

 それから数日ほど経って、3人を乗せた行商人の馬車は冒険者ギルドのあるワン族の街に辿り着いたわ。

 ちなみにその数日の間にも、道中にモンスターが出たり、村を追い出されたチュー族やワン族、猫っぽいニャー族といった者たちで更生された強盗団とも戦ったりしたわね。

 大抵のモンスターはサリーとフォードや行商人の護衛が退治をして、強盗団も苦戦しつつ追い払っていたわ。彼女? 一応手伝ったといえば手伝ったけど、かなり上の空だったの。


 行商人の人たちにお礼を言ってから別れて、彼女たち3人は冒険者ギルドに向かって移動を開始したわ。

 ちなみに冒険者ギルドの場所はサリーが知っているらしくって、案内をしてくれたわ。

 ボーっとしつつも周りを見ていると、さすが獣人の国といえばいいのか……歩いている人たちは殆ど獣人だったわ。でも偶にだけど普通の人間も歩いているから貿易は行われているというのが分かったの。

 そして、到着した冒険者ギルドは人間の国にある建物に良く似た形をした建物だったわ。中に入るとやっぱりこれまたよく似たデザインの内装だったけど、そのどれもが頑丈な造りになっていたわ。

 多分チュー族ワン族ニャー族以外にも獣人って居るんでしょうねって思っていると、予想通りといえばいいのか熊みたいな体格をした獣人が居たんだけど、あとでサリーからグル族という獣人だと聞いたわ。

 そんな風に内装をチラチラと見ていると、サリーが受付のほうへと歩いていき……たぶん顔見知りなのか、親しそうに話しているのが見えて、しばらくして受付の女性が奥に向かうのが見えてサリーが戻ってきたわ。


「お待たせしました師匠。こちらへどうぞ」

「あ、うん。分かった……」

「獣人って結構種類居るんだなーっと、待ってくれよー!」


 サリーに着いていく彼女と、少し遅れてから追いかけて来るフォードの3人は1階奥にある部屋へと向かったわ。

 その部屋は人間の国でいうところのギルドマスターの部屋と同じ場所で……というか、ギルドマスターの部屋ね普通に。

 先に歩いていた受付の女性が扉を叩き、中からの返事を聞いてから扉が開けられたわ。

 中に入ると、ギルドマスターの机の前にワン族の男性がひとり立っていたわ。

 灰色の髪を後ろに束ねて、人が良さそうだけど腹に一物抱えてそうな笑みを浮かべた男性よ。

 多分、この男性がサリーの叔父で獣人の国のギルドマスターであるハスキーなんだろうと彼女は思ったわ。

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