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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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サリーの3日間・後編

 注:ドブのせいでやっぱり酷いです。

 服を着てもついさっきの出来事に首を傾げながら、スナ族長の家に戻ると師匠がグデッとしながら寝床で横になっていました。

 とりあえず、ワタシは温かい泉の話をすると「ふーん、温泉かー……」と言っていましたが、温泉って何でしょうね?

 そして下着が無くなったこととか妙な幻覚を見たことを言うと、ダルそうにしていた師匠が突然起き上がってこちらを見てきました。


「サリー、あんたは何も見なかった。そして、無くなった下着は返ってこない。それでいいな?」

「へ? し、師匠??」

「スナ族長にちょっと話があるから行ってくるわ。たぶん、広場でフォードを叩きのめしてるよね?」

「た、たぶんですけど……あと、叩きのめしてるじゃなくて修行してるだけですよ?」

「別に同じことだろ? ってことで、ちょっと行って来る。しばらく帰ってこないと思うから」


 言うだけ言って師匠は部屋から出て行きました。

 その場にはホカホカに茹ったワタシだけが残っていましたが、少しだけ茹った身体を冷まさせるために休むと……すぐにフォード君たちの下へと向かいました。

 向かった広場では、槍の長さに切られた木の棒を手にしたスナ族長と剣の長さに切られた木の棒を持ったフォード君が居ましたが、スナ族長は傷ひとつ無くぴんぴんしているのに対して、フォード君はボロボロになって地面に倒れていました。

 とりあえず、今なら良いと思いワタシはスナ族長へと話しかけました。


「よぉ、サリーちゃんか。どうしたんだ?」

「スナ族長、ついさっきここに師匠が来ませんでしたか?」

「アリスの嬢ちゃんか? 何か、丘の身体を清める泉の小屋にいろいろやっていいかとか、ドブの奴を殴り飛ばしても良いかと聞いてきたぜ」

「な、何だか凄く嫌な予感しかしないようなことを言いますね……」

「まあ、ドブを何とか出来るなら大歓迎ってことで許可したぞ。たぶん、ドブの家か丘の上に居るんじゃないか?」

「そうですか……とりあえず、どちらかに行ってみますね」

「おぅ! よっし、フォードッ。休憩は終わりだ! 続き始めるぞ続きぃ!」

「か、勘弁してくれぇぇぇ!!」


 フォード君の情けない声を後ろに聞きながらワタシは、もう一度丘のほうに向かうことにして歩き始めました。

 ちなみに情けないって言ってますけど、強くなれるって信じていますからね。

 そう思いながら、しばらく進むと師匠の姿を見つけました。

 丘の上に行こうとしてる最中のはずなのに、なんですぐに追いつけたんでしょうね?

 そう思っていると、そこには師匠だけではなく、もう一人居ました。何だか見たことがあるような気がするけど、たぶん気のせいだと思うような太ったチュー族の男性です。


「ふひひ、アリス氏。拙者の癒しを奪おうなどと、神が許しても拙者が許さないでござるよ!」

「あんたの許しなんざいらないんだよ。とりあえず、お前が居ると安心して温泉に入れそうにないからな」

「大丈夫でござる! アリス氏が温泉に入ってる間に、使用済みパンツは回収してメイドイン拙者のパンツをそっと置いておくのでござるよ!!」

「ひぃ!? こ、殺す! マジで殺すっ!!」


 何だか見てると寒気を感じるチュー族の男性に師匠は叫んで、力を込めたパンチを放ちました。って、この威力だと即死じゃないですかっ!?

 驚くワタシを他所に、師匠の放ったパンチはその男性の腹に減り込みました。けれど、減り込んだ身体をふわりと浮かせるようにして男性は宙を舞い、師匠の背後へと移動しました。

 そして、驚くワタシでしたが……その男性はおもむろに師匠のスカートをバサッと捲り上げたではないですか!

 師匠の白い下着が目に飛び込むと同時に、顔を益々憤怒に染めた師匠は回し蹴りを放ちました。けれどその攻撃も、今度は師匠の身体を軸にして男性は回避したではありませんか。

 ちなみにそのときに、男性が師匠の腰やら胸やらをイヤらしい手つきで触って行くのが見え、生理的に嫌悪感を抱きました。


「~~~~~~~っっ!!?」

「ふひひ、堪能堪能。そして、アリス氏のサイズは上から――」

「な、なんでわかるんだよっ!? オレも知らないのに!」

「教えてましょうぞ! 拙者の≪裁縫≫は相手の3サイズも手で触ることで図ることが出来るのでござる!」

「うわぁ……最悪、こいつ最悪!」

「アリス氏のゴミを見るような視線、ご馳走様でござる! ふひっ!」

「殺す、もうマジで何が何でも殺す……」


 かなり精神的に目の前の男性への嫌悪が高いからか師匠から激しいまでの殺気が昇り、何も無い空間から光り輝く朱色の剣を取り出しました。

 それを見た男性が鼻息を荒くして、ちーとおつとかワケの分からないことを叫び師匠を挑発していますが、謝ったほうが良いとワタシは心から思います。

 師匠が剣を薙ぐようにして振り、男性の首を斬ろうとします。けれど、男性は素早く身体を屈めるとそのまま飛び掛るようにして師匠に近づきます。けれど師匠も即座に男性を地面に縫い付けるべく、剣を地面に突き立てようとしました。

 ですが、それよりも先に男性のスピードが上がり、またも師匠のスカートを捲り上げたではないですか! そして、遠くに居たワタシは見ました。男性が捲り上げた師匠のスカートに躊躇なく腕を上下する動きを。

 いったい何をしたのか分かりませんでした。ですが、捲り上げられたスカートが元の位置に戻った瞬間にそれは分かりました……。

 スカートの中からヒラリと何か布のような物が落ちてきたんです。師匠は初めはそれが何か分からなかったみたいですが、すぐに何かに気づき、スカート越しにお尻を恐る恐る触り――真っ赤になりました。しかも、憤怒ではなく恥辱的な意味でです。


「ふひひ、昔ある漫画で見た道具を再現したでござるよ!」

「最低! 最低最低! この人間のクズ!」

「褒め言葉でござるな! ふひひひひっ!! っと、忘れてたでござるアリス氏」

「な、なんだよ……? お前の作った服とか絶対に着ないからな……!」

「それは残念でござる……ですが、そっちではなく大事なことを聞き忘れていたのでござる」


 怯える師匠に近づき、男性は耳元で何かをそっと囁きました。

 それを聞いた師匠は驚いた顔をして、何かを言い返そうとしていたみたいですが何も言えないみたいでした。

 そして、それを言うだけ言って男性は師匠のパンツを戦利品として持ち去りながら帰っていきました。

 男性が去って行くのを見てから、ワタシは師匠の下へと師匠に声をかけます。

 ですが……あの男性が師匠に言ったのはどう言う意味なんでしょう?


 自分の名前を覚えているでござるか? ――って。

 耳元で囁いた言葉だとしても、ワン族はかなり耳がいいのでサリーには聞こえました。

 まあ、意味は分からないですけどね。

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