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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
491/496

入れ替え完了と戦闘開始(居残り組)

「さて、向こうのほうも準備が出来たみたいなので……そろそろ始めますが、宜しいでしょうか?」

「あ、ああ……。よ、よろしく……頼む」

「それじゃあ、本体に移りますので……少しお待ちください」


 若干戸惑っているのか、スナ族長はアタシへと返事をします。

 それを見届けてから、アタシはスペースの身体から離れ……世界樹の前に待機していた本体へと戻りました。

 そして、いったい何が起きているのか分からないといった様子のヒカリさんたちを見ます。


「今からちょっと軽い作業を行って、それが終わったら瘴気が魔物の形を取ったものと戦うのですけど、行きます?」

「え、何その銀ブラ行かない? って感じの軽い言いかた!?」

「まあ、良いじゃないですか言いかたなんて、それで……どうします?」


 アタシの言葉に見事にツッコミを入れてくれるヒカリさんに心の中で良いツッコミと思いながら、どうするか問い掛けます。

 すると、少し悩んでいるみたいでしたが……最終的には……。


「えっと、力になるかは分からないけど……、わたしはついて行くわ」

「あ、あの……シターも、手伝わせて……くださいっ」

「ありがとうございます、2人とも。それで……ヒカリさんはどうします?」


 ルーナさんとシターさんへと頭を下げると、アタシはヒカリさんを見ます。

 視線が一気に来たヒカリさんは困った様子をしていましたが……、観念したのかガシガシと頭を掻くと――、


「あーもう! 分かったよ。手伝う、手伝うよ! ジッと考え続けてても何も答えが出ないってことだけは分かったんだからさぁ!!」

「悩んでも答えが出ないときは身体を動かす。それが一番だと思いますよ。それじゃあ……行きますか」


 そう言うと、アタシはヒカリさんたちと共に《転移》を行い、旅館の前へと移動しました。

 アタシにとってはもう普通な行動なのですが、他の人にとっては突然黒い空間から出て来るのですから警戒しますね。

 事実、アタシたちを見て驚いているのかチュー族を含めた旅館で暮らす人たちが警戒しながらこちらを見ていました。

 《転移》というのはあまり知られていない上に使える者はほとんど居ないのですから、当たり前ですよね。

 ですが、アタシだと言うことに気づいたのかスナさんが軽く手を上げることで……全員の警戒が解けるのを感じました。


「改めて、お待たせしましたスナさん」

「いや、特には待っては居ないが……。そちらの者たちは?」

「えっと、この人たちは――」

「あ、貴女がたはっ!?」


 アタシがヒカリさんたちを紹介しようとしたとき、驚いた様子でこちらへと近づいてくる人が居ました。

 誰かとそちらを見ると、ハツカさんでした。対するヒカリさんたちも驚いた様子でハツカさんを見ていました。

 が、3人の中からルーナさんが前へと出て、ハツカさんへと話しかけました。


「お久しぶりです。そちらはお元気でしたか?」

「ああ、何とか無事だったが……。そちらも、無事だった……と見れば良いのか?」

「わたしたちのほうも、一応……と言ったところです」


 積もる話は色々とありそうでしたが……、それは後にしてもらうことにしましょうか。


「スナさん、そろそろ始めたいと思うので……全員旅館の中に入ってください。サリー、フォード、アナタがたも中に入ってもらえますか?」

「え? あの、師匠は……?」

「アタシですか? ちょっとスナさんたちを送ってからやることがあるので……」

「あ、あのっ、ワタシたちも一緒に――」

「いえ、サリーたちはスナさんたちと共に街のほうに戻って、事情を説明してあげてください。でないと、突然現れた旅館に困惑してひと騒動起きますから……」


 アタシの様子からして戦いが起きると判断したのか、サリーが同行をしたそうでしたが……アタシはそう言って同行を却下しました。

 その言葉に、眉を落として情けないような表情を浮かべ始めましたが……それでも同行をさせるつもりはありません。

 そんなアタシの態度にサリーは何かを言いたそうでしたが……、諦めてくれたのかトボトボと旅館に入って行きました。


「フォード、後は任せましたよ」

「……あ、ああ……分かった」


 何か言いたそうだったフォードですが、アタシがそういうと渋々といった感じにサリーを追いかけるように旅館へと入って行きました。

 その後に続くようにスナさんとハツカさんも入って行き、周囲には入り遅れた人は居ないようです。

 それを確認すると、アタシは《土壁》を唱え……旅館の周囲をグルリと囲むようにして壁を造りました。


『壁で覆った土地の地脈の固定を開始――完了。

 交換を行うための土地の状態を確認――聖気に満ち溢れていることを確認。

 双方の土地の空間を切り離すことを開始――完了。3分以内に行動を開始してください』


 機械的に口から謡うように漏れだす言葉にその場に残された3人がギョッと驚いた気配を感じましたが、そちらは見ていません。

 見ているのは、土壁の中で光り輝き出している大地です。

 ここから先は……精神を集中させないと、危険すぎますから。……けど、これ……かなり厳しい、ですね……!

 顔へと滲み始める汗が珠となり、ダラダラとこぼれ始め……そんな中で、意識を集中し続けた結果。


『リンク確認――、地脈ごとの入れ替えを開始します。

 カウント――3,2,1……開始!』


 その瞬間、眩い光を放ち――先程まで旅館があった場所には何も無く、その代わりに大量のライトアップの木が植えられた林のような物が姿を現していました。

 ……な、何とか……成功だったみたいですね。

 成功したことにホッと息を吐きつつ、アタシはライトアップの林を見る。……正確には、その地面を――いえ、地脈を。


「……うん、予想通り……と言えば良いでしょうか」


 そう呟きながら、アタシはライトアップの聖気によって活性化している地脈が周囲を汚染している瘴気によって穢れた地脈を浄化していく姿を見ていました。

 ……が、対する瘴気もただでは消えないようでした。事実……。


「ね、ねえ……あれ……なに?」

「地面の瘴気が……形になってきている?」

「見ていて、気味が悪いです……」


 ドロドロの腐った肉塊のような形となって瘴気は姿を現したようでした。

 ……見れば見るほど醜悪、ですね……。


「来ますよ、皆さん。気をつけてください」


 アタシの声を皮切りに、肉塊からはいかにも臭そうな触手が飛び出し――アタシたちへと迫ってきました。

触手ですよ、触手

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