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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
486/496

訪問(S&F)

フォード視点です。

「そ、そんな……それじゃあ、黒融病もあの黒い魔物も……全てはこの国の大地に溜まってしまったショウキ、というものが原因だった。と言うことですか?」

「そうだ。事実、現在ますたーが展開した結界の浄化作用と摂取したライトアップで貴女がたの身体や結界に覆われた地面に蓄積された瘴気が黒い煙を上げながら消え去っている」


 スペースの話を聞いていたシバさんが愕然とした様子で呟いていた。

 そんなシバさんへとスペースが淡々と告げるが……、耳に入ってるのだろうか?

 そう思っていると、シバさんは何かに気づいたようにハッと顔を上げると……スペースを青白い顔で見始めた。


「あ、あの……それじゃあ……この街に住んでいる者以外の獣人は、今現在もショウキというものに汚染されているのでしょうか? ま、まさか……もう……」


 多分だが、シバさんの頭の中では他の集落や街の状態が悲惨であると想像しているのだろう。

 そんなシバさんに、スペースは何て答えるんだ……?

 そう思っていると、何時の間にかサリーさんが戻っていたらしく……オレの近くに立っていた。


「我らは全てを知っているわけではない。瘴気による汚染で黒融病が蔓延している可能性もあるし、瘴魔に集落を潰された可能性だってある。

 多分、シバ殿は自分たちが様子を見に行かなかったからと思っていたりするかも知れないが……、貴女がたも必死に生きて来たのだ。だから自分たちを責めようとするな」


 優しくそう言いながら、スペースはシバさんの肩を優しく撫でていた。

 そんなスペースへとシバさんが目を潤ませながら見ていた。


「スペース……さん……」

「それに、心配ならば……サリー殿とフォード殿が手を貸してくれます」


 えっ!? ここで、オレたちに振るのかっ!?

 突然のことで驚いたが、スペースの言葉にシバさんがオレとサリーさんを見る。

 潤んだ瞳に、手を貸したいという気持ちになりかけるが、済んでのところで押し留まりつつ……オレはサリーさんを見た。


「フォードくん……行きましょう。だって、ハツカさんやスナさん。チュー族の皆さんも心配ですし」

「サリーさん……分かりました。シバさん、他の集落や街の無事の確認……オレたちに任せてください」

「お二人とも……、よろしく、お願いします」


 頭を下げるシバさんへと、オレたちは頷いた。

 そして、オレたちとシバさん。それとギルドと城のお偉いさんを交えた話し合いの末、出発するのは翌日の朝となった。

 それまでの間、オレたちはどのようにして如何周るかを話し合い……英気を養うために休息を行うこととなった。

 その一方で、黒融病が徐々に駆逐され始めていくという事実が発表されたからか街のほうではスペースが植えた輝くアップの実……通称ライトアップが大勢の者たちに振舞われ、楽しげな声に満ち溢れていた。

 ……そんな笑い声が聞こえる中で、オレは……、多分サリーさんも仮眠のために静かに眠り始めたのだった。


 ◆


 翌朝、陽がまだ昇りきっていない中、オレたちは街の入口に居た。

 その側には、荷馬車があり……もっと言うならばその近くには巨大な……ワンダーランドが居た。

 初めは驚いたが、このワンダーランドはスペースらしく、信じられなかったが目の前で変化をしたので信じるしかなかった……。


「サリーさん、フォードくん。気をつけて行って来てくださいね……」

「任せてください!」

「フォードくんは調子に乗ると思いますが、気をつけて行って来ますので、シバさんも気をつけてください」

「はい、判っています」


 そう言って、オレとサリーさんはシバさんと別れ……、集落や街へと向かうためにオレたちを乗せた荷馬車と共にスペースが走り出した。

 だが、現実はそう甘い物ではないとオレは改めて思い知った。

 何故なら……尻が痛くなるほどに打ち付けられながら向かった最初の集落は、黒い魔物……スペースは瘴魔と名付けた。

 それらによって、地図上にあったはずの集落は無くなっており、幾つかの廃墟が目立つばかりだった。

 ……2つ目、グル族の集落。そこも同じように集落としての機能はなくなっており、瘴魔に対抗しようとしていたのだろう砕けた骨が幾つか転がっているのが見えた。

 ……3つ目、ニャー族の街。危険を察知してすぐに冒険者ギルドがある街に逃げ出した半数のニャー族以外はどうなったのかは分からないが、閉ざされた門を前にスペースは止まること無く進む意思を示していたことから……。


「酷い、有様ですね……」

「そう…………ですね」


 思い知らされた酷い現実に、オレとサリーさんの口数は徐々に減って行き始めた……。

 約3年、言葉にしたらたったそれだけ……、けれど現実はこんなにも悲惨な物なのか。

 こんな状況であの街が無事だったは、戦力が多かったこと。そして、ハスキーさんという屋台骨があったからだろう。

 改めてハスキーさんの偉大さを思い知りながら、オレたちは幾つもの集落を越え……3年振りのチュー族の集落へと近づいてきた。


「ハツカさんや、スナさん……チュー族の皆さんは、無事でしょうか……」

「サリー、さん……」


 ポツリと呟いたサリーさんの言葉に、オレは何も言えなかった。

 本当なら数日掛かるはずの道のりを……スペースのお陰で陽が落ち始めたころに到着したことに驚くところなのだろうが、それに回す余裕が無かった。

 そして、辿り着いたチュー族の集落は……荒れ果てており、オレたちは暗い表情となるが……スペースが何かに気づいたように暗い中で紅く光る瞳を在る方向へと向けた。

 その視線に釣られるようにオレたちもその方向を見ると……。


「「え……?」」


 集落から少し離れた丘の上が輝いていたのだった。

……やばい、思い浮かばない……。

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