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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
482/496

話し合い【後編】(四人組)

前半:フェニ、後半:アリス視点です。

 緊迫した空気が、お母様と……ダイクが睨み合う。

 ……いや、少し違っている。ダイクはダイクではなく、中にはアリスが入っているらしい。

 そんな2人が、間にピリピリとした空気を走らせながら……睨み合っていた。

 そんな2人の気配は、尋常ではなく……ウチのみならず、ロンもタイガも、トールも……将軍たちさえも意気を呑んでいた。

 ……病み上がりだったらしい新たにやって来た2人も、主らしき女性が使用人に椅子に座らされているけれど、使用人も今にも倒れそうだった……。


 ……まあ、お母様も怒るのも無理は無い、よね?

 だって、アリスは(本人じゃないけれど)面と向かって伯父様を倒したと言って……挙句、ウチらをこんな姿にしたって言ったのだから。

 正直なところ、ウチってお母様に溺愛されていたりもしたし……お母様は所謂、親バカって言う種類だったみたいだし……。

 でも、お母様は戦う手段は持ってないのよね? 持っているというか、基本的に使える魔法は《炎磔》で動けなくして……周りの者たちがボッコボコにするって言う攻撃方法だった筈。

 事実、ついさっきの防衛戦でもそうしていたみたいだし――っ!?

 そう思っていると、ついにお母様は動き出した。そしてそれに反応するようにダイク(アリス)も動き出した。

 そして……両者とも、手を前に出し始めた。その両者の気迫は今にも殴り合おうとしているように見えた。

 ま、まさか、本当に戦うつもりっ!? お母様もお母様だし、アリスもアリスだっ!!


「ちょ――! お、お母様、アリスッ!?」


 驚きながら、ウチは2人に戦いをやめるように言おうとした。

 その瞬間――。


「魔族の姿も可愛くてもこもこしていて凛々しかったけれど、獣人っぽくなった姿のフェニちゃん……すっごく可愛いわ~♪

 ありがとう、アリスちゃ~ん♪」


 ガッチリと2人は熱い握手を交わしていたわ。

 それを見た瞬間、ウチは大きく転びそうになった。


「いえいえ、アタシ自身は怒られる覚悟でしたから、そう言って貰えて嬉しい限りですよ。ちなみにクロウのほうは?」

「あんな人の言うことを聞かない馬鹿な兄のことは気にしていないわ~♪ それに、この状態のフェニちゃんに会ったら、どうなっているんだって服を引ん剥きそうだもの~!」

「ああ、実際クロウの魂とフェニが特訓したときにあったみたいですよ? 死んでからも研究熱心って恐ろしいですよね」

「あら~? 年老いて死んで、天に召されたらボコボコに殴り飛ばさないといけないわね~♪」


 そんな風に仲良く会話をしている2人を、何とか体勢を立て直しながら見ると……さっきまでの気配が嘘のようにも見えた。

 ……どういう、ことなの?


「ア、アリス……、お母様? これはいったいどういうことかしら? 2人は、今にも殴り合おうとしていなかった……?」

「あらあら~? フェニちゃんには殴り合おうっていう風に見えたのかしら~?」

「心外ですね、フェニ。アタシは如何挨拶しようかって悩んでいたのと、殴られる覚悟を持っていただけですよ?」

「あら~、そうだったの? 別に怒っていないから良いわよ~♪」


 頬をヒクヒクさせながら問い掛けるウチの言葉に、2人は思い思いの言葉を返してくる。

 というか、凄く仲良さそうなんですけどっ!?

 そんな光景を目の当たりにして、ウチは凄く微妙そうな顔をしていると思う。何故なら、ウチ以外のこの光景を見ていた人たちも同じような顔をしているのだから……。

 ……そんな、そんなバカみたいな始まりから、アリスによる話し合いの場が開かれた。


 ◆


 しばらくして、漸く落ち着きを取り戻した皆さんを見ていると、カラアゲさんが挙手をしてきました。

 なので、どうぞと言うとカラアゲさんは立ち上がり……アタシを見ました。


「とりあえず、我輩たちが聞きたいのは……貴公が連れて行かれた後のこと、だな」


 そうカラアゲさんが、言うとビーフ将軍とポーク将軍、シストさんたちも頷いています。

 まあ、いきなり変態に拉致されたんですから、当たり前……ですよね。


「分かりました。でしたら、アタシも語らせていただきますが……多分、切れると思いますよ?」

「「「……そういう内容か?」」」

「ですね」


 そう言って、アタシは連れて行かれた先が魔王城で、そこでの出来事を事細かに語ります。

 すると、予想通りと言うべきか……事情を知っているロンたちと、政治に関わる気が無いであろうホウオーさんは平然としていましたが、将軍たちは顔を蒼ざめさせ……直後、青筋を頭に立てながら真っ赤になっていました。

 シストさんたちのほうは、蒼ざめさせた顔がますます青くなっていきます。

 そして、力の限り将軍たちがテーブルを叩くと、メキャリという音を立てながらテーブルが砕けました。


「ふざけるなっ!! あのクズども……、魔王様を手駒としているだとっ!?」

「……許せんナ…………」

「だが、実際問題、魔王様がいないと言うのは事実……この場合、どうするべきか……」


 テーブルを砕いても、怒りが収まらないカラアゲさん。

 テーブルを砕いても、静かに怒りを燃やすポーク将軍。

 テーブルを砕いて、冷静になったのか今後のことを心配するビーフ将軍。

 そんな三者三様の様子を見つつ、アタシは話を続けます。

 とは言っても、語る内容は邪族のことについてですが……。


「獣人の国では、人々の体内に瘴気の蓄積。人間の国は、邪族の拠点だと思われ……。森の国、魚人の国は今のところ実害は特にありません」

「この国については?」

「それを知るために、ロンたちを送り込んだのですが……まだ時間が掛かりますよね?」

「だろう……ナ」

「正直なところ、この街でこんな有様だったのだ……他の街や村はどうなっているかが心配だ」


 ビーフ将軍の一言に、他の方たちも心配そうな顔をし始めました。

 ホウオーさんも悩んでい……。


「うちに植えたお花が心配だわ~……」

「って、何だか凄く場違いなことを言ってますっ!?」

「ホ、ホウオー殿の心配もだが……、我輩もメリマニに街を任せたままであるから……心配だ」

「ウシも砦がどうなっているかが……」


 一度湧き上がった不安は簡単には消えないらしく、一同は唸り始めた。

 なので、アタシは簡単にこう言いました。


「そんなに気になるなら、一気に見に行ったら良いじゃないですか。あと、正直バラバラになって居るよりも固まって居るほうが良いんですけど」


 その一言に、周りは凄く微妙そうな顔をしました。

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