クズドブ
注:やっぱり、今回も酷いです。
「うん? アビリティを知らないでござるか?」
「あ、ああ……オレが転生するときはステータス加算だったから……」
「ふひ! ステ加算ってことは、全ステ全振りってことでつね! チート乙!!」
「あー……うん、そんな感じ。で、どういうことなんだ?」
「多分でござるが、生まれ変わる種族でボーナスが変わるってことだと思うでござる。人間だったらステ振り、獣人だったらアビリティって感じでござるな。他の種族は選ばなかったので分からないでござる」
オタク知識を久しぶりに披露できたからか、ドブは物凄くイキイキしていたけど……超絶キモかったわ。
だって、ふんすふんすと興奮気味に鼻息が荒い上に、時折なんか周辺の空気を吸うように深呼吸をしていて……もしかしたら彼女のフローラルを堪能してるんじゃないかとも思ったくらいよ。
けどいろいろと話をして、あわよくばチュー族の役に立ってもらわないとと何とか我慢しつつ、彼女は出来る限り笑顔で話しかけたわ。
「と、ところで……アビリティのことを詳しく教えてもらえないか? あとなんで下着革命なんて言葉が出るのかも……」
「ふむ、アリス氏が甘える感じに『お願いおにいちゃん、アリスにアビリティのこと教えてほしーのぉ♪』って言ってくれたら教えてあげるでござる!」
「死ねこのクソ野郎☆」
「ふひ! ありがとうございます!」
こんなことを言うぐらいなら殴りつけたほうがマシだと考えた彼女は即座に実行して、とびきりの笑顔とともにドブの腹にパンチを決め込んだわ。
そして、腹にパンチを受けたドブはそれはもう物凄くいい笑顔をしていたの。あんたはこんな人間とお知り合いになったら駄目よ。ああいう奴らほど性質の悪いものは居ないんだからね。
ちなみに神の力でも干渉しているのかドブ本体のスペックが高いのか、中身が受け流すのが得意なのか、かなり本気で殴りつけたのにすぐにムクリと起き上がったわ。……爆散させるレベルで殴ったのにね……チッ。
「まあ、簡単に言うと拙者が転生するときにケモミミ萌えに従って、獣人に転生を選んだのでござるがそのときに神様にアビリティを3つ選択するように言われたのでござる。拙者は迷わずに、3つの内の1つを≪裁縫≫にして、残り2つを≪画力≫と≪早歩き≫を手に入れたのでござる」
「うわ、なんだろう……駄目なオタク――じゃなかった、アキバ戦士が性格そのままで技能だけを上げたって感じるのは……」
「いやあ、照れるでござるよ」
「褒めてねぇよ。で、下着革命って言うのは?」
「おぉ、ついにそこを聞いてくれたでござるか!! 聞くも涙、語るも涙なお話でござる。拙者、獣人として転生したでござるが、この村の女性は全員、はいてないのでござる! HAITENAIでござる!!
最初のころは、全然狩りに出ない拙者を咎めに現れたハツカ氏のブルンブルン揺れるOPPAIやら、丈の短い衣装から見えるOSHIRIとかに興奮を覚えたのでござる。けれど、毎日HAITENAIやらTUKETENAIが続くと拙者も飽き飽きしてきたのでござる!
そこで拙者は考えたでござる! だったら、この≪裁縫≫を駆使して、おパンツやブラジャーを作ってみようと! けれど働きたくないでござる! だから、途中で中途半端に作ったまま放置しているのでござる!」
ハツカの揺れる胸の柔らかさには同意しそうになった彼女だったけど、いろいろと語るドブを見ていると益々ゴミを見るようになってきたわ。
で、適当に作って放置されている下着のようなものに視線を移してみたわ。……紐だったわ。下腹部辺りに巻くような紐の中心に紐が半分だけ垂れた感じの物があったの。
その隣を見ると、確か朝の女の子アニメのキャラクターだと思うのが描かれたバックプリント付きのパンツもあったわ。
ああ、テレビって言うのはね、小さな箱でいろいろ映る物よ。
「ネットでしか見たことがないようなエロ下着か子供向けじゃねぇか!!」
「ふひひ! 溢れ出る才能の結果でござる!!」
「もうやだ! こいつまったく駄目すぎるんだけどぉぉ!!」
「まあまあ、嘆くことはないでござるよアリス氏。そうだ、折角だから、アリス氏に似合うパンツを縫ってあげるでござる! アリス氏は縞パン、縞パンが似合うでござるよ! ああ、拙者が塗ったパンツをアリス氏が穿く……ふひ、ふひひひ」
そう言われた瞬間、血の気がよだつのを感じ逃げるように彼女はドブの家から飛び出したわ。
絶対にこいつには関わりたくない! そう心から思いながらね……。
ハツカを連れて、全力でスナ族長の家に逃げ込んで怯えた翌日、枕元に縞パンが置かれていたから……そっと焼却したわ。
たとえ、最高級なレアリティSSRとかだったりしても作ったのがああいう人間だったら使いたくないですよね。




