姿が違えど、分かるものはわかる(四人組)
遅れました。
フェニが放った白い炎から放たれた光がしばらく周囲を明るく照らしていたが、自分たちはその光景を見つつ唖然としていた。
と言うよりも当たり前だろう。何故なら、あのとき……翼人の島でアークと戦っていたときに使ったものと同じ魔法の筈なのにその威力は桁違いになっていたのだから。
その魔法が次々と黒い仮面の軍勢を呑み込んで行くのを見ていると……また新たに逃げ切れなかった者が飲み込まれていくのが見えた。
「え、えぇ……? な、何よこの威力……えぇ?」
「……放った本人が驚くのはどうかと思うぞ?」
「お、驚くに決まってるでしょっ!? だって、ここまで威力が上がってるだなんて分かるわけないじゃないのっ!?」
「――って、ポークとビーフのおっちゃんたち巻き込まれてなかったかっ!?」
自分の言葉に逆切れをするフェニと、思い出したように両将軍のことを思い出したタイガ。
……巻き込まれたのではないのか?
自分もそう思っていたのだが、何時の間にか自分たちの背後に周っていたダイクが担いでいた何かをドサリと地面へと降ろした。
何を降ろしたのかと思いつつ振り替えると、目を回している以下にも強そうな魔族が2名と、それに準じているであろう兵士が数名居た。
「……ダイク、彼らは誰だ?」
「ああ、ロン殿は知らなかったのですね。この方々はポーク将軍とビーフ将軍です」
ダイクの言葉に、自分たちは固まってしまった。
だがそうなるのは、当たり前だろう? 何故なら、周囲を警戒して行動していたはずだというのに……ダイクは誰にも気づかれないまま、自分たちよりも大分先に居たであろう将軍たちを掴んでここまで連れて来たのだ。
……本当、アリスの周囲は異常過ぎる者たちばかりだな……。
そう思っていると、先にビーフ将軍が意識を取り戻し始めたらしく……うめく声が洩れた。
「うっ……こ、ここは……? ウシらついさっき、あの光から逃げ切れずに……」
「おっちゃんっ!!」
頭を押さえながら、起き上がるビーフ将軍へと喜々としながらタイガが近づいた。
だが、タイガは今の自分の姿を理解していないのか?
すると、案の定タイガは警戒心を向けたビーフ将軍に睨まれた。
「っ!? ……援軍には感謝する。だが、お前たちは一体何者だ?」
「お、おっちゃ……って、そういえば、今のオレって……」
「はあ……この馬鹿タイガは……」
訝しそうに見ているビーフ将軍にショックを受けているのかタイガの耳と尻尾が垂れるのが見えるのだが……すぐに自分の姿に気づいてピンと立てた。
そんなタイガの様子を呆れたようにフェニは頭を抱えて見ていたが……、一方でビーフ将軍は警戒をしながらも背後にポーク将軍と兵士が居るのに気づき、彼らを庇うように移動をしていていた。
「お前たちは誰なのかは知らない……が、もし敵ならば……ウシの首を差し出す。だから彼らの身の安全を保障してくれ……!」
「――ひぅ…………!」
相当な覚悟があるらしく、そう言ったビーフ将軍からは言葉と共に威圧が放たれており、トールは怯えて自分の背後へと周った。
そんなトールの頭をポンポンと軽く叩きつつ、自分が率先するしかないと考え……前へと一歩出た。
「ビーフ将軍、自分たちは貴方がたに手を掛けるつもりはない。そんなことをしてしまったら師匠に申し訳が立たないし、亡きティーガ様に如何謝れば良いのだ?」
「む……? お前たちは……敵、ではないのか? だが、獣人や魚人であるように見えるはずなのにティーガ様を敬っているのは一体?」
「分か、らヌノカ……ビーフよ?」
「――! ポーク、気が付いたのかっ!?」
「アア、まだ身体が痛ムが……支障はナイ」
自分たちを見ていたビーフ将軍だったが、意識を取り戻したポーク将軍に気づいて振り返るとフラフラとしながらも立ち上がるポーク将軍が居た。
そして、立ち上がったポーク将軍は自分たち……いや、タイガの前へと歩み寄ると、膝を突いた。
「ポークッ!?」
「生きて、生きておラレたのでスネ……。あノゆうしゃニ話を聞いテハ居ましたが……コノ目で見るまで信じられマセんでした……」
「ポ、ポークのおっちゃん……。オレが、わかる……のか?」
「エエ、分かります。姿は変わレド……、その気配はカワリません……!」
ボロボロと泣き出すポーク将軍にビーフ将軍は呆気に取られつつ、目覚めた兵士たちは何事かと驚いた眼で見ていた。
一方タイガはタイガで、信じてくれたことが嬉しかったのか瞳を潤ませているのが見える。
そんなポーク将軍へと、ビーフ将軍が尋ねることを決めたのか声を掛け始めた。
「ポ、ポークよ……一体、如何いうことだ……?」
「ビーフ、見た目で判断ヲ、するな……心ノ目で見るノダ」
「心の、目……だと? ――――っ!? ま、まさか……!」
どうやら、ポーク将軍は感覚で感じ取ったらしい。そう思っていると、ビーフ将軍も気づいたらしく……同じように膝を突いた。
多分、分かったのだろう。
「疑って、申し訳ありませんでした……! ですが、ですがようやく分かりました。ウシたちは……ウシたちは貴方様に会いたく思っておりました……!」
「ビーフのおっちゃん……。ありがとう、ありがとうな……!」
2人の言葉が嬉しかったようで、タイガは涙を堪えきれずに泣き出しながら彼らを抱き締めた。
その様子を、自分たちはうんうんと頷きながら見ていたが、あることに気づいたフェニが声を掛けた。
「皆、そろそろ魔法が消えると思うから、街のほうへと向かいましょ? そっちのほうが話もしやすいでしょ?」
「……ウム、そう……だな」
「それが、良いな」
そう言うと、両将軍はゆっくりと立ち上がり……自分たちへと頭を下げた。
「お前たち……いや、貴方様がたの助力。本当に感謝します。積もる話は街のほうで行いますので、来て頂けるでしょうか?」
「当たり前だろ!」
「……わか、った」
「断る道理はないので、行かせていただこう」
「ウチは当然そのつもり! というか、お母様め……」
ビーフ将軍の言葉に頷き、フェニの放った魔法が消えてから自分たちはポーク将軍の駐留する街へと歩き出した。
……が、地面に熱が残っているからか地面もだが空気も馬鹿みたいに熱かったため、外周を周って……比較的大丈夫な場所を歩いていった。
フェニ、少しやりすぎだと思うぞ……。
そして、頭の積み木がぐらぐら状態