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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
476/496

虎の子大暴走(四人組)

タイガ視点です。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!」


 大地を踏み締め、空気を震わせる勢いでオレは叫び声を上げた。

 その叫び声は街のほうにも届いたみたいだけど、それよりも大事なのはこれからだ!

 事実、オレの予想通りに咆哮で後ろから様子を窺っていたらしき、黒い仮面の奴ら……多分邪族だと思う。

 が、一斉に後ろ……つまりはオレを見たのだ。


「へへっ! オレの存在に気づいたんだろ? だったら、かかって来いよ!!」


 牙を見せながら、高圧的に挑発をすると挑発を理解したのか黒い仮面の奴らは一斉に襲い掛かってきた。

 良いぜ、一斉にか? どれだけ強いのか試させてもらうぜぇ!!

 近づいてくる奴らを見ながら、オレは手甲を嵌めた掌を握り締める。

 あと少し、あと少し近づいたら……オレも動く……あ、やっぱり無理だ。


「待ってるなんて出来るかぁ!! 行くぜオルァァァァッ!!」


 我慢なんてやっぱり性に合わねぇよ! という勢いで、オレは近づいてくる黒い奴らに飛び掛るようにして接近すると、前を歩いていた奴の顔面目掛けて拳を打ち込んだ!

 ドゴッ! と気持ち良いくらいに先頭の奴の顔面は凹み、吹き飛ばされた勢いで後ろの奴らを何名かを巻き込み倒れるのを見ていたが、起き上がるよりも先に脚を高く上げ――一気に倒れた奴らを狙うように振り下ろした!

 ……しかし、こいつら痛がってる様子が無いけど……痛みって感じているのか?


「ま、わかんねーけど……。それにしても、奇妙だよ……なっ!!」


 どういう訳か攻撃もしてこない上に、何故か拘束しようと手を広げて襲い掛かってくる奴らの行動を回避しながら、オレは膝蹴りを脇腹に打ち込んだり、拳で急所を殴りつけたりしていた。

 ……が、ちょっと調子に乗っていたらしく、倒れていた奴の1人に足を掴まれて身動きが取れなくなってしまった。

 そこへ別の奴が抱きつこうと飛び掛ってきた。ただの抱きつきのように見えるのだが……何か、嫌な悪寒を感じてしまった。これはきっと抱きつかれたらいけない奴だ。


「くそっ! 放しやがれっ!!」


 足を掴んでる奴を殴りつけようとするが、間に合わない。

 そう思った瞬間、オレの背後からスッと何かが突き出され、抱き突こうとしていた黒い奴を突き刺した。

 いや、何かじゃないよな……。槍、そう槍だ。

 同時に背後から来るのは怒りと、呆れだ……。その視線を感じながら、オレはゆっくりと後ろを向いた……。


「……ロ、ロン……」

「タイガ……、遊び過ぎだ。今は遊んでいる場合じゃないんだぞ?」

「わ、悪ぃ……、気をつける」

「口ではなく態度で示せ」


 そう言いながら、ロンは奴……いや、敵に突き刺した槍を引き抜くと再び構え直した。

 その様子を見て、オレは一度深呼吸をし……、改めて敵を見た。

 ああ、そうだ……。調子に乗っていたな、アレは……あの黒い仮面の奴らは敵だ。オレたちが倒すべき敵なんだ。

 ようやく判断が出来たオレの精神に呼応するように、手甲の外側に付いていた爪は前へと撥ねるようにして飛び出した。

 同時に膝当ても下へと伸びて行き、靴の先に張り付くと爪のように尖り始めた。

 それはまるで足と腕に爪が生えたと言った感じで、元々の姿を連想させるようだった。

 そして、拳を構えるとオレは敵へと告げた。


「さあ、行くぜ。こっからが本当の戦いだ!!」


 そう言うと、オレは敵へと飛び掛り拳を打ち込んだ。

 拳は敵の顔へと再びめり込んだが、今度はそのまま拳を下に振り下ろした。

 すると敵は突き刺さった爪に引き裂かれるようにして切れると、アリスの創った武器だったからか黒い煙を上げながら崩れ去って行った。

 その光景に一瞬驚きそうになったけれど、今はそんな場合じゃないと判断しながら脚を大きく伸ばしての回し蹴りを放った。

 しかもそれはただの回し蹴りじゃねぇ! 親父に身体で叩き込まれた技だ!!


「くらえっ、<ソニックラッシュ>!!」


 技名を叫ぶと同時に1回目(・・・)の回し蹴りを群がる敵へと打ち込み、爪で身体が裂かれていくのを見つつ……地面に軽く回し蹴りをした足を着地させると、今度はもう一方の脚を敵へと放った。

 それを終えるとまたもう一方の足と軸足を入れ替えて蹴りを放つ。

 命中率と威力は限り無く低い技だけれど、連続的に敵へと攻撃を打ち込むには持って来いの技だとオレは身体で受けたからそう思う。

 ただし、欠点があるとすれば……ある程度して身体を止めると……凄く目が回るということだ。


「うぅ……め、目が……回る……」

「お前は……、考えてから使う技を決めろ。とりあえず、落ち着くまで待っていろ」


 膝を突くオレを護るように、ロンが前に立つと素早い動きで突きを放ち始めた。

 す、すげぇ……、前に見たときよりも遥かに速いじゃねーかよ!

 多分、アリスの創った武器が軽かったりするんだろうけど、色々と溜まっていたのかも知れねーな……。

 そう思いながら、グルグル回る視界の中で次々と屠られていく黒い敵を見ていたオレだったが、不意に背中に衝撃が――ふげっ!?


「ちょっ!? な、なんだぁっ!? いったい何がっ!!」

「あら、居たのねタイガ。気づかなかったわ」

「って、フェニかよ!? 何だってんだよいきなりっ!?」

「追いついた先にアンタが座ってたってことで良いじゃないの。まあ、今はあんたの相手してる暇は無いの! ロン、ちょっと時間稼ぎよろしく!!」

「言われなくてもやるが、周りを巻き込むんじゃないぞ?」

「わかってるってばっ!!」


 オレの上で、フェニがそう言うと呪文を使うために精神を集中させ始めた。

 それに呼応するように、フェニが持っている杖の先端の幾つかの球体が発光を始めた。

 な、なんつーか、見ていると凄いなこれ……。そう思っていると、少し遅れてトールの奴が追いついたようだった。

 って、息絶え絶えだけど、大丈夫なのか?


「フェ、フェニ……おねーちゃん……。はや、い……よぉ……」

「ごめんねトール。ちょっと急いでたから……。――よし、いけるっ!! ロンッ!!」


 フェニの合図で、ロンが槍を引いて下がると同時にフェニが高火力の魔法を解き放った。


「燃え上がれ、ウチの炎よ! 我らが敵を焼き尽くせぇぇぇぇ!! 《天炎球》!!」

「ク、<クリスタルシェル>……!」


 放たれた白く燃えた火球は敵が群がる中心へと放たれ、同時に慌てながらトールがオレたちと……街のほうに被害が及ばないようにするために魔法防御の甲羅を展開させた。

 直後、地面に着弾したフェニの魔法で、視界が白に染め上げられたのだった。

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