こいつ、はやくなんとかしないと
注意:いろいろと酷すぎますので、注意してください。
「ふひっ!? だ、誰でござるかっ!!」
いきなり話しかけられて驚いたのか、若干というかかなり気味の悪い鳴き声を上げながらドブがこっちを見てきたわ。
元々は引き締まった筋肉が、見るも無残な贅肉体型に変わっており……無表情ながら整った顔立ちだったものが、気色の悪いニヤケ顔を常時浮かべていたわ。
本当、中身が違って1ヶ月近く過ごすとこんなにも人って堕落するもんなんだなって思ったわ。
そんなことを彼女が思っているとは露知らず、ドブは警戒しているのか気味の悪い表情でこちらを見ながら、壁に下がっていったわ。
「こ、ここは拙者の家でござるぞ! な、何を勝手に上がりこんでいるでござるっ。そ、それにそんな毒を吐いて――って何故ネットとかテレビゲームとか知ってるでござるか!? あと、拙者はテレビよりもパソコンゲーム派でござる!」
「テレビ派とかパソコン派とかはどうでもいいけど、知ってる理由は解るだろ?」
「ま、まさかお主も、転生した口でござるか?」
「ああ、オレはアリ――「オレっ子キタァァァァアアアーーーーー!!」――へ? っひいぃ!?」
彼女が名前を言おうとした瞬間、何かに反応したらしくドブは両手を上げて歓喜の叫びを上げたわ。
そして、喜びながら彼女へと抱きついたの。抱き着かれた瞬間、鳥肌が全身から立って、鼻にはひん曲がるような臭いが漂ってきたわ……。
瞬間、迷わずに彼女はドブの腹を殴り飛ばしていたわ。殴りつけた拳にぐちゃりと何かてかった脂が付いたから、すぐ石鹸で洗いたくなったけど必死に堪えることにしたの。
「はぁ……はぁ……、お……女の子にいきなり抱きつくのはどうかと思うぞ?」
「ふう、すまぬでござる。つい年頃少女の醸し出すフローラルな香りとオレっ子属性という珍しさに心ときめいて抱きついてしまったのでござる! これでしばらくはオカズに困らないでござる!」
「……だめだこいつ、はやくなんとかしないと…………」
「くっ……そのゴミを見るような眼……物凄く興奮するでござる!! もっと、もっと拙者を見てくだされっ!!」
ハァハァと荒い息を吐くドブに嫌な顔をしながら彼女は、湧き上がる嫌悪感を必死に抑えつついろいろと聞くことにしたわ。本当に不本意だけどね……。
聞くことと言っても、自分は変な夢を見て目が覚めたらこの世界でこの姿になっていたというぐらいだと言うとドブは話をキチンと聞きながら、頷いていたわ。
多分聞き上手なのだろうと感心しつつ、ドブの返答を待っていると……。
「なるほど……、中身が男だけど外見は少女でござるか……TSモノでござるな! 最高でござる最高でござる、男なのに感じちゃうシチュが出来ることに感動を覚えるでござる。萌え萌えでござる!!」
「返せ! ついさっきまでのお前に感じていたオレの感心を返せ!!」
「知らぬでござる! たとえ感心を拙者が貰ったとしても、ぺろぺろと堪能させてもらうでござる!」
「……はぁ、何か話すの疲れてきた……………」
「仕方ないでござるなアリス氏。ならば拙者の生前の話をしてあげるでござるよ」
ある意味聞き捨てならない言葉がドブの口から放たれたけど、ドブは彼女の話をまったく聞こうとせずに自分の昔話を始めたわ。この世界に来る前のドブがどんな人物かという話よ。
それを聞いて、彼女はこの目の前のドブが本当にクズだと心から思ったそうよ。
「拙者は前の世界ではオタクの中のオタク、アキバ戦士だったでござる。
毎週金曜には欲しいゲームを買うために朝の行列に並んだり、周辺のイベントにも必ず参加してたでござる。
ちなみに下手ながらも最高に面白い同人誌も描いてたでござるよ。見る眼のない他の者には面白くも無いと言われてたでござるが……まったく、拙者のすばらしい話がわからないとは何事でござるか!
で、そんな訳で拙者は同人誌に飽きて、今度はコスプレに手を出し始めたのでござる。初めは夏のイベントのときに自分が着てポーズを取ってみたら、広場のカメコからは総スカンをくらったでござる。かなり傷付いたでござるよ……。
けれど、拙者は誓ったでござる。自分が駄目なら女性に着てもらおうと……試しに妹にお願いされたら、両親に言われて父親から顔面パンチをもらったでござる。
腹が立ったから、近所の可愛い小学生をお菓子で釣ってコスプレ衣装に着替えてもらって撮影会をしようとしたら警察に捕まったでござる!
拙者、何も悪いことをしていないでござる!!」
「十分すぎるほど悪いことしてるし、最悪すぎるだろうがッ!!」
「へぶしっ!!? な、何をするでござるか! 親父にも殴られたことな……あったでござるな」
「とりあえず、お前の生前に何があったかなんてもう知る気もないし、聞きたくもない。どうせ、また同じことでもしようとして車にでも轢かれたとかだろ?」
あと少し、目の前のドブが最悪なことを言ったら、ついカッとなってレベルで跡形もなく消し炭にしそうになっていたわ彼女は……。
それほど生理的に受け付けなかったのね。まあ、アタシもこいつは生理的に受け付けないわ。
そして、散々言われたドブはショックと言った感じのポーズを取ったわ。やだ、殴りたい。
「ひ、酷いでござる! ただ近所の少女の入浴を盗撮してたのがばれて逃げ出したところで車に轢かれただけなのに、散々な言いようでござる!!」
「余計に性質が悪いわ!! 何この人間のクズ! 神様、どうしてこんなのこの世界に呼び寄せたのっ!?」
「ふっ、拙者。この世界に下着革命を起こすためにやってきたのでござる! そのために、転生する際に≪裁縫≫アビリティを取ったでござる! だから、頑張ってえろい下着を開発するでござる!!」
「うわ、気色悪い! 気色悪い!! って、アビリティ?」
背筋を走る怖気を感じつつ、彼女はようやくドブが気になる単語を発したことに気づいたわ。
本能の赴くままにドブの中のアキバ戦士を書いてみたら、いろいろと酷くなりました。
とりあえず、中の人は30代後半な感じです。