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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
469/496

増援(S&F)

「くそっ!? 何だよこの数はっ!!」

「もしかして、昨日とかに空に浮かび上がったあの女が何かしたっていうのかっ!?」

「文句を言う気力があるなら腕を動かせッ!!」

「「わかってるってのっ!!」」


 迫り来る黒い魔物の大群……何時もは多くて二匹だというのに今回は何かが起きたのか十匹は軽く居るように見られた。

 それは戦いに出た兵士や冒険者たちが文句を言いたくなるのは当たり前だろう。

 そんな黒い魔物たちは一直線に突進しながら街へと向かってくる。

 柵なんてお構い無しに……だ。

 つまりは、杭がつけられた柵にドスっと自ら早贄されに行ってる魔物が多いという状況である。

 何時もならば、早贄状態となったモンスターへと距離を取って槍や弓を使って血が掛からないように攻撃を行っているのだが……今は魔物が多すぎて、そんなことをしていたら横から攻撃を喰らってしまう可能性が高い。

 その結果、手を出せずにいると……柵に取り付けられていた杭が圧し折れ、杭を突き刺しドクドクと肌の色よりも黒い色をした血を流しながら黒い魔物たちが接近してきた。


「全員、こいつらの血を浴びるなよっ!! 弓持ってる奴、遠くから狙え狙えーーっ!!」

「おうっ! 当たるなよ!!」

「俺たちも距離を取りながら行くぞっ!!」


 接近してくる魔物へと後方から矢が放たれ、両側からは槍を持った冒険者や兵士たちが距離を取りつつ突き刺しを行っていた。

 矢が突き刺さり、交代するようにして突き出された槍により……体力が減ってきたのか、黒い魔物は徐々に動きが鈍くなり……最終的にその場に倒れ動かなくなった。

 これで1体。本当ならば叫びたいが、今はそのときではない。今は一刻も早く襲い掛かる黒い魔物を全て倒さなければいけないのだ――。

 だが、空気が読めなかった冒険者は居るらしく、勝利の声を上げ始めた。


「いよっしゃーー! いっぴきめぇぇぇぇっ!!」

「バカッ! 集中を乱すんじゃねぇ――って、後ろだっ!!」

「え? ひっ――!?」


 叱咤する声にその冒険者は間抜けな声を上げ、クルリと後ろを見た。

 彼が見たものは、眼前へと迫る自らの死の象徴であった。

 だから、彼は恐怖に腰を抜かしたのかその場でへたり込んでしまった。

 これは、もう助からないだろう。

 誰もがそう思った瞬間――、2つの影が戦場へと駆け込んできた。

 1人は彼らを跳び越えて、迫り来る黒い魔物が群がる場所へと向かって走って行き……。

 もう1人は腰を抜かした冒険者と黒い魔物との間に立つと、手に握り締めていた細身の剣を大きく振り上げた。


「<スラッシュ>!!」


 周囲に響き渡るほどの大きな声と共に振り下ろすようにして放たれたスキルは彼らへと迫り来る黒い魔物を一刀両断にした。

 初めはその光景に呆気にとられていた腰を抜かした冒険者だったが、黒い魔物の血を浴びると危険だと言うことを思い出し両腕を前に出して腕を犠牲にして身体を防ごうとしたが――魔物の血は……いや、それどころか魔物も一刀両断にされた直後に黒い煙を上げながら、その場から消失した。

 それを見ていた周りの者たちは皆一斉に……。


『『『は、はあああぁぁっ!?』』』


 信じられないとばかりの声を漏らした。

 そして、それは周りの人間たちだけではなく、魔物も同じだったようで信じられないと同様しているのか突進しか能がないと思っていた奴らが突進することを躊躇し始めたのだ。

 ……まあ、彼らはそれには気づいていないけれど……。

 だが、すぐに落ち着きを取り戻したらしき黒い魔物たちは突如現れた者……一組の男女を警戒しつつも、後方に居る男へと3体けしかけることを決めたようだった。


『『『BOOOOWOOOOOOOOOOO!!』』』


 初めて聞く黒い魔物の鳴き声に後方の冒険者や兵士たちは驚きを隠せなかったが、より驚かされることとなった。

 何故なら、何時も自分たちへと突進してくる速度よりも遥かに速く、勢いがあるように感じられる突進が放たれたのだから……。

 敵を観察する余裕がある者たちは即座に気づいただろう。自分たちは、手加減をされていたということに……。

 その事実に歯噛みをしていると、黒い魔物を一刀両断した男が剣を鞘に納めると腰だめに構えた。

 いったい何をするつもりなのかと彼らの意識は突如表れた青年へと注がれていたが……ふと、誰かがあることに気づいた。


「あれ? アイツって……狂犬と一緒につるんでいた人間じゃないか……?」

「「え?」」


 その言葉に驚きながら、彼らは青年を遠目からマジマジと見始めると……見覚えがあった者たちが「あ」という声を漏らし始めた。

 一体全体、いきなり現れて如何いうことだと困惑していると、青年……フォードの射程圏内へと黒い魔物3体は入り込んだ!

 瞬間――、フォードの剣は腰に構えた鞘から素早く抜き放たれ、眩いほどの朱金の光を伴った一閃が黒い魔物たちへと振るわれた。

 その直後、世界は一瞬動きを止め……、一瞬のズレと共に接近していた黒い魔物3体の身体がズズッと動くと……滑り落ちるように剣が奔った場所から身体が分断された。

 そして、その黒い魔物たちも……初めにフォードが斬った魔物と同じように蒸発するように消えて行った。


『BOWOOO!? BWOOOOOOO!!!』


 この一撃で完全にフォードに警戒をしたであろう猪に良く似た黒い魔物の群れの司令塔は鳴き声を挙げた。

 きっと、これはこの男は危険だ。女を狙えとでも言ってるのだろう。

 事実、残った黒い魔物たち5体は女……サリーを囲むようにしていた。

 それを見た冒険者や兵士たちは囲まれたサリーに驚きを示したが、フォードのことに気づいたためにある可能性を考えていた。


「な、なあ……。あいつが狂犬の相方だったってなら、あの女って……」

「……あ、ああ」

「帰って……来たのか……?」


 懐かしいというか、恐怖を抱くというか、狂気を抱くというか、そんな感じの声が彼らから漏れ出した。

 そんな彼らの心境とは裏腹に、サリーの身体は白銀に輝き出したのだった。

ちょっととちくるって、新しいお話書いてみました。

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