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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
466/496

幸せの終わり(S&F)

今日もまたシバ視点です。

「シバさん、ここ最近元気ですねー」


 仕事中、一緒に仕事をしていた同僚にそう言われ、わたしは幸せいっぱいの微笑みを浮かべた。


「ええ、もうひとりじゃないって言うのもあるし、凄く幸せだから……元気が溢れてくるの♪」

「はあー……、お暑いことでー。けど、綺麗になったって言うのは嘘じゃないですよー?」

「そう……かしら? けど、黒融病の症状がここ最近抑えられているのは確かね」


 そう言いながら、わたしは黒い染みが広がっていた腕を見た。

 ……そこには、あの夜見たときよりも黒い染みの薄くなっているように感じられ、元々の肌の色と同じように見えた。

 ううん、色だけじゃない。腕の感覚は少し鈍くなっていたはずなのに、大分良くなっているように感じられる。

 そう思いながら、わたしはある仮説にふと辿り着いた。


「……ねえ、もしかして、黒融病が酷くなる原因って……落ち込み続けてるからじゃないかしら?」

「というとー?」

「今まで亡くなった患者さんのほとんどは、諦めて絶望し続けていたじゃない。けど、元気な人ほど、病気にかかっている様子が見受けられないって思うの。事実わたしも、諦めかけてたけど、ハスキーのお陰で幸せいっぱいだし」

「はー……。その可能性はあるねー。もしかして、初代院長が言ってたって言う、イントヨーの関係って奴とか?」


 初代院長、……確か転生ゆうしゃで、転生前はキコーがどうとかっていう職業に就いていたんだっけ?

 で、確か……大分前に診療所に就任したときに聞いて忘れてるけど、えぇっと……確か、病は気持ちによって引き摺られる。

 だから。


「悪い方向に考えすぎていたら、病気はますます悪くなる。けれど、逆に良いように考えてたら良い方向に傾く……だっけ?」

「そうそれー。けど、考えようによっては良いかも知れないねー。今度試してみようかなー、おーい」


 そう言って、同僚の彼女は軽度の黒融病の患者の診察をするためにわたしから離れて行った。

 ……幸せだったら、病気の進行は収まるかー……。うん、良い考え……ね。

 思いついた考えに頷きながら、わたしも仕事へと戻り始めた。


 ◆


「気持ちの変化で黒融病の症状が変わる。ですか?」

「仕事中に話をしてて思ったんだけど、如何……思う?」


 仕事が終わり、わたしはハスキーの求婚を受けてから住み始めた愛の巣にて夕飯を食べながら話題のひとつとして彼にそう言った。

 すると、ハスキーは色々と思い出しているのか、口元に指を押し当てたまま静かになった。

 けど、すぐに思い出したのかわたしを見つめた。


「……その考えは、かなり面白いものですね。考えてみれば、ギルドに所属している血気盛んな冒険者のかたは黒融病の症状が見受けられていませんね」

「そうなの? じゃあ……、幸せなことを考えたら黒融病は抑えることが出来るのかな?」

「かも知れませんね。私もシバと一緒にいると凄く幸せですし」

「それを言うなら、わたしもよ……」


 ハスキーの言葉に、顔が熱くなるのを感じ……幸せな笑みを浮かべる。

 ……ああ、本当に幸せだわ。

 そう心から思いつつ、わたしはご飯を食べる。けど、ふと思い出したので聞くことにした。


「ハスキーのほうは、何とも無いの?」

「私ですか?」

「ええ、ここ最近は兵だけでなく、冒険者もあの黒いモンスターを倒すために狩り出されているって聞いたから……」

「大丈夫です。心配しないでください……多少危険なときはありますが、私たちは大丈夫です。それに……私には帰る場所がありますし、生き抜いて彼女たちとも会いたいですからね」

「彼女たちって言うと……、ハスキーの姪? 確か……サリーだっけ?」

「ええ、彼女がもしもこの国に戻ってくる場合は、きっとアリスさんを連れているはずですから……色々と凄いことをしてくれそうな気がするんですよね」


 ぼんやりとながら覚えている彼の姪の姿を思い出しつつ、わたしは彼の話を聞く。

 ……本当に、アリスって人が何でも凄いことをするんだったら、黒融病とか無くして欲しいな。

 そんな風に思いつつ、わたしはハスキーの顔を見つめた。

 そして、その日は……やっぱりハスキーと愛し合った。

 ……うん、『は』じゃなくて『も』だよね。


 ◆


「はーい、診察の時間ですよー?」

「おっ、待ってました! 今日はかなり具合は良い感じなんだけど、どうだろうか?」

「へー? そうなんですかー? それじゃあ、確認しますねー?」


 数ヶ月が経ち、治療院ではわたしたちが考えた暗い気持ちが黒融病を引き起こす鍵となるなら、楽しい気持ちにさせようという考えの下でわたしたちは笑顔を忘れずに患者と楽しく接していた。

 初めのころはふざけるなとか、馬鹿にされたり叱咤されたりしたけれど……めげそうになったわたしたちは互いに慰め合って、笑顔を忘れないようにした。

 そうすることで、初めは馬鹿にしたり叱咤していた人たちも段々と暗い表情に笑みを取り戻し始めていき……すると、わたしや軽度の患者のような身体の一部分のみ、症状が発症していた人は段々と黒い染みが薄れ始めて行き……半身ほど黒くなっていた人でさえも彼らの笑いに希望を持ち始めたのかそれに呼応するように身体に変化が訪れて行きました。

 ああ、やっぱり病は気から……ということだったのでしょう。……けど、症状は緩和すれど発症した原因がまだ分からないというのは不安ですね。

 そんな風に思っていると、突然扉がバンと叩き開かれ……驚きながらその方向を見ると、焦った様子で女性が駆け込んで来ました。

 ……制服からして冒険者ギルドの人だって分かります。えっと、確か……ああ、受付の人でしたよね!

 そう思っていると、治療院を見渡し……わたしと目が合うと、急いでわたしへと近づいて来ました。

 どうしたのでしょうか?


「はぁ……っ、はあ……っ! シ、シバ……さん」

「は、はい。あの……どう、したんですか?」

「落ち着いて……、聞いて、くだ……さいっ!」


 落ち着いて聞くように受付の女性は言いますが、そちらも落ち着いたほうが……そう思っていると、呼吸が落ち着き始めた彼女がわたしに告げました。


 ――ハスキーが、黒い魔物にやられて……瀕死の重傷を負ったと……。

とりあえず、シバ視点は明日で終わると思います。



……家で飼っていた亀が寿命だったのか、泣くなって涙しかでません。

25年って寿命だったのかなぁ……。

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