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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
462/496

朝目が覚めると(四人編)

ロン視点です。

「服が完成するまで、時間が掛かると思うからちょっと獣人の国と魔族の国を見てきて欲しいって思うんですけど、どうでしょうか?」

「…………どう、とは?」


 ティアが親友と再会を果たし、ひと悶着があってから少し時間が経ち……時刻は夜となり、それぞれが眠りに付いたりし始めたころ、自分はアリスの武器を創る光に釣られるように目が覚め……彼女へと近づいた。

 そんなときに、彼女からそう問い掛けられた。

 突然の問い掛けに、自分は如何答えるべきかという以前に彼女の意図が理解出来ずにそう問い掛けた。

 するとアリスは作業がひと段落付いたのか、それとも魔力が少なくなってきたのか、疲れた顔をしながら……自分へと顔を向けてきた。


「……ふう。疲れました。……やっぱり魔力こめすぎてるのでしょうかね……。

 ――っと、つまりですね。森の国の実情はティアとフィーンがアンとアルトに聞くことで何とかなると思いますが、獣人の国や魔族の国は如何でしょうか?」

「そう言うことなら分かる。獣人の国は、邪族が支配している人間の国のすぐ側であると同時に人間の国が塞がれているから他国に向かうことが出来ない。だから、今回の発表で邪族の仲間入りをする者たちが多くいるのではないかと言うことだな?

 そして、魔族の国はあのように邪族が声明を発表することが出来る状況を作り出したと考えるべき……」

「はい、ですので今自由に動けるであろうロンたちにお願いしようと思っているんです」


 アリスの言葉に納得しつつ、自分は静かに頷く。

 ……あの様子からして、服は大分時間が掛かることだろう。


「ならば、その間に見に行くというのは間違っていないだろう。……だが、問題があるとすればもしもあのときのアークのような者が現れたときだろうが……。

 ……いや、弱気になっていたな。自分たちが戦うのを諦めたりしたらそれで終わるのだ。現れた場合は、倒すのみだ」

「その意気です。一応、ロンたちにもサリーたちにも、護衛は付けておきますので安心してください。……まあ、自分の力で切り開かないと意味が無いと思いますから、基本的には見守る役にしておきます」


 自分の考えを汲み取ってくれたらしいアリスはそう言って、自分に告げる。

 その言葉に礼を言うように静かに頷く自分だったが、急に意識が混濁するというか……眠気が感じられた。

 突然、どう言うことだろうか……。疑問に思いつつも、アリスを見ると彼女は笑みを浮かべつつ首を振っていた。

 なにか……やった、のか……?


「しばらく眠っていたら、目的に到着しますから何も心配しないでください。起きたら初めは驚くと思いますが、まあ……頑張ってください」


 そんな言葉を最後に、自分の意識は……闇の中に、落ちていった。


 ◆


「我が名はダイアジャック! バニーナイツが十一の太刀なり! この度はますたーの命により、あなたがたの護衛をしますのでよろしくお願いしますっ!」

「「「は、はい?」」」


 ……なるほど、これが驚くことということか。

 そう思いながら、妙なポーズを取る獣人の少女を見つつ、呆気に取られた3人を自分は見ていた。

 ちなみに予感はしていたから、周囲に光景が世界樹ではなく……魔族の国特有の懐かしい曇り空だというのには驚いてはいない。

 ……だが、一応どういうことなのかを説明してもらおうか。


「ダイアジャック、良いだろうか?」

「何でしょうか、ロン殿?」

「アリスは魔族の国に送りつけると言っていたが……ここはどの辺りだ?」

「はあ――――っ!? ちょ、ちょっとロンッ! どういうことよっ!! 魔族の国って」


 自分の問い掛けにダイアジャックが答えるよりも先に、フェニがキレ気味に自分に問い詰めてきた。

 ……かっかかっか怒り過ぎると頭が可笑しくなるぞ?

 そう思いつつも、自分は昨日の夜に何となくアリスと話をしたことを語り始めると……フェニの顔は唖然から頬をヒクヒクと動かし始め……最終的には憤怒の表情へと変化していった。

 その隣ではタイガが、久しぶりに見る懐かしさを感じているのかキョロキョロと周囲を見渡しているようだが……、他国を知ってしまったが故の違和感を感じているようだ。

 ……トールのほうは……オロオロとしてるばかりだな。

 そんなとき。


「ふざ――けんじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 怒りが頂点に達したのかフェニの身体から炎が噴出し周囲に熱気を飛ばし始めた。

 突然のことで多少は驚いたが、慣れたものなので自分たちは少し離れた所でフェニを見ていた。


「どうやら物凄くお怒りのようですね。……ますたーに連絡を入れますので、お話をお願いします」

「は!? どういう意味よっ!?」

「もしもし、ますたーですか? こちら、ダイアジャック。通信をお願いします」

『はい、こちらアリスです。どうしましたダイアジャック……っと、フェニの怒声が聞こえますから何があったのかは理解しました』

「アリスッ!? ちょっと、これっていったいどういうことよっ!?」

『如何したもこうしたもと言われましても、単純に……何もせずに服を待つだけでボーっとするよりも、故郷がどうなっているのかを知るのが一番だとアタシは判断して、護衛をつけて送ったというだけですよ』

「だから、先に事情を説明してからにしなさいって言ってるでしょうがっ!!」

『……そうですね。ロンにだけではなく皆さんにもするべきでしたね』

「わ、分かれば良いのよ」

『…………チョロ』

「なっ――何か言わなかったっ!?」

『いえ、なにもいってませんよ?』


 アリスと色々と話をしているようだが、彼女のペースに乗せられたのかはたまた話したことで怒りが収まってきたのか、段々と上がっていた炎が勢いが衰え始めていった。

 ……正直、自分には師匠以外に家族はもう居ないが、フェニたちには家族は居るのだ。

 だから、どうなっているのか気になっていたりはしているはずだ。

 やり方は如何あれ、こうして魔族の国に来たのだ。だから、調べないわけには行かないだろう。

 そう思っていると、アリスも同じ言葉を口にし始めた。


『そっちはそっちで、色々と知りたいでしょうし――って、スペードエース? それじゃあ、また後で――』

「ちょっとっ!? ちょっとアリスッ!? 返事をしなさいよっ!!」

「申し訳ありません、ますたーは獣人の国に居るスペードエースの通信に移ったようなので連絡を入れることが出来ません」

「……良くわかんないけど、多分サリーたちのほうに話をしているってことで良いの?」

「はい、そう考えていただければ良いです」


 ダイアジャックの言葉にフェニはようやく落ち着いたらしく、纏った炎が鎮火するのを確認し……自分たちはフェニへと近づいた。


「……落ち着いたようだな」

「ああ、うん……ごめん。落ち着いた」

「無理も無いだろう。いきなりつれてこられたのだからな」

「…………そういうあんたは、一応事情説明されてたみたいだから良いじゃないの」

「だがいきなりはいきなりだった。だから、全員同じようなものだ……ところで、ダイアジャック。自分たちは今どの辺りに居るんだ?」


 フェニの非難する視線から逃げるように、自分はダイアジャックへと問い掛けた。

 そんな自分の質問は想定されていたらしく、ダイアジャックは自分たちを見た。


「呼び辛ければ、短くダイクとでもお呼び下さい。そして、今現在皆様が居られるのはますたーが魔王の下に連れて行かれた街であるポーク将軍が収める街の近くです」


 そうダイクは自分たちへと告げたのだった。

うーん、梅雨ってテンション上がりにくいですよね。

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