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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
461/496

朝目が覚めると(S&F編)

サリー視点です。

 朝、目が覚めるとワタシとフォードくんは荒野に立っていました。

 ……ちなみに遠くには街が見えますが……これは夢でしょうか?


「えっと、フォードくん……頬を抓っても良いでしょうか?」

「……出来れば、抓るなら自分の頬をお願いします」


 目の前の風景に唖然としながら、ワタシは隣に立つフォードくんにお願いしましたが、フォードくんは抓らせてくれません。

 ……あ、今隣を見たら、フォードくん両頬を抓っていますね。……それは余らないわけです。

 ……そう思いながら、ワタシは諦めて自分の頬を抓りました。……痛い。


「夢じゃない、みたいですね……」

「ふぁい……」

「なにをしてるのですか、二人とも?」


 そんなワタシたちへと、背後から声が掛けられ……振り返ると、見覚えの無いピョン族らしき獣人の少女が立っていました。

 ……えーっと、誰……ですか?

 頭の中に疑問をいっぱい抱きながら、ワタシは少女をマジマジと見ます。

 首が隠れるほどに切られた白い髪とそこから伸びるピョン族特有の耳、血のように紅い瞳、そして服装は城の騎士をイメージするような真っ赤な鎧を着込んでおり、背中には少女の背と大差ないほどの大きさの朱金色に輝く大剣を担いでいました。

 ……鎧と武器からして、師匠の関係者。ということでしょうか?

 そう思いながら、フォードくんを見ると……彼もその答えに行き着いたらしく、ワタシを見て……頷きました。


「あ、あの……失礼ですが、貴女は……?」

「我ですか? 我は、ますたーを護りしバニーナイツが一の太刀、スペードエースッ!!」

「ス、スペードエース??」

「長いと思ったらスペースとでも呼んでください」

「は、はあ……」


 ピョン族の少女……スペースちゃんは、顔に片手を当てながら自己紹介をしており、それをワタシたちは眺めていました。

 ……なんでしょうか、無駄に格好良いと考えた結果残念に見えるポーズは……。

 そう思いながら、ポーズに呆気に取られていたワタシたちでしたが、訊ねようとしていたことを思い出しました。


「あの、ところでスペースちゃん。ワタシたちは、何故こんな場所に立っているのでしょうか? というか、ワタシたちは世界樹の小屋のところで師匠たちの仕事を眺めていたような……」

「あ、ああ……オレも、女性たちは小屋で寝かせていたから木の下辺りで男3人で寝てたはずだったのに……」

「そのことですか? ますたーが話してたと思ったのですが、ウッカリしていたみたいですね。

 もしもし、ますたー?」

『そっちはそっちで、色々と知りたいでしょうし――って、スペードエース? それじゃあ、また後でね。

 もしもし、アリスです』


 ワタシたちの問い掛けに、スペースちゃんは答えること無く突然虚空に語りかけたと思ったら、彼女の口から何故か師匠の声が洩れだし始めました。

 そのことに、ワタシは目を点にします。


「ますたー、彼女たちが話を聞いていないと言ってるのですが?」

『………………』

「ますたー?」

『え? なんですって?』

「ますたー、なにギャルゲ主人公っぽい聞こえたくせに聞こえなかった振りをするんですか?

 はっきりと、伝え忘れてたって言ったほうが楽ですよ?」


 な、何というか辛辣ですねスペースちゃんは……、というか師匠と会話をしているのでしょうが……傍から見たら一人で喋っているようにしか見えません。


『…………えっと、はい……忘れていました』

「よろしい。それでは、改めてお二人に説明をお願いします」

『分かりましたよ。……サリー、フォード。今そこに居ますよね?』


 話の向こうの師匠は観念したらしく、スペースちゃんに降参みたいなことを言うとワタシたちのほうへと向きました。

 多分、声だけを伝えているのでしょう。


「……師匠、これはいったいどういうことですか?」

『良かった。居ましたね。

 えっと、説明するとですね、今現在お二人は獣人の国の荒野に居ます。ちなみに位置的にはハスキーさんの居るはずの冒険者ギルドのある街の近くです』

「「えっ!?」」


 何か見覚えがあると思ったら獣人の国でしたかっ!!

 そして、遠くに見える街がハスキー叔父さんの住んでいるあの街。

 ……けど、どうしてこんなことになったのでしょうか?


『どうしてこうなったのかって言うとですが、武具を創ることが出来る環境が整ったということですので……この際、サリーとフォードは獣人の国、ロンたちを魔族の国に送って色々と行ってもらおうと考えたわけですよ』

「は…………ぁあっ!?」

「ど、どういうことだよっ!?」

『まあ、言葉通りの意味です。サリーとフォードはハスキーさんの様子を見に行って、どんな状況下を確認してください。

 とりあえず、食糧難だったりしたら一応魚人の国に居る転生ゆうしゃの方々に話を通しますので』


 そう言って、師匠は一気に話を進めて行きます。

 ワタシは驚きのあまり固まっており、フォードくんは師匠にツッコミを入れたいのか大声で叫んでいました。


『さて、そろそろサリーたちの武器が出来上がるので《異界》に入れておきますね。

 スペース、出来上がったそれらを彼女たちに渡してあげてくださいね』

「了解しました。ますたー。では行ってまいります」

『はい、気をつけてくださいね。では――――』


 その一言を持って、師匠の声は届かなくなりました。

 ……し、師匠?! ししょーーうっ!!

 驚くワタシたちを他所に、師匠との会話は終了したのか師匠の声がスペースちゃんからすることはありませんでした。


「事情が分かったと思いますので、そろそろ街のほうに向かいますか?」

「……色々と釈然としませんが、とりあえずこんなところに立っているよりも向かったほうが良いですよね」

「そう……ですね。それじゃあ、向かいましょうか」


 この場で口論したり、暴れたりする意味は無いとワタシもフォードくんも判断し……3人で歩き出し始めました。

 ……と、スペースちゃんがふと思い出したように《異界》を開くと中から2つの光る球体を取り出しました。

 これって……ティアやフィーンちゃんに与えた物と同じ物……ですよね?


「ワタシたちの武器……ですか?」

「はい、出来立てです。武器の形は持った者によって変わるので、お二人が持ってから形が決まります」


 スペースちゃんはそう言って、ワタシたちへと光を放つ球体を渡しました。

 それを受け取り、ワタシたちはそれを持ったまま再び荒野を歩き出しました。

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