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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
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候補地選び

「えっと、師匠……満足、した……みたい……ですね……」

「あの、サリー……? 何故、顔を背けるのですか? そ、それに他の皆さんも何で触れちゃいけないものに触れてしまったって表情をしてるんですかっ!?」


 食後、タツオさん以外のアタシを見る視線が妙に痛々しい視線だったり、壁が作られたりしているのに驚愕しながらアタシは問い掛けます。

 ですが、彼女たちの返答は「きにしないできにしないで……」という機械的な返答ばかりでした。

 …………も、もしかしてアタシ、はっちゃけ過ぎていたのですか?


 ――うん、はっちゃけ過ぎていた。


 そんな感じに彼が心の中で頷いているような気がします。


 ――いや、そう言ってるんだって。


 気のせいです。きっとそれは気のせいなんです……。

 アタシは心の奥から聞こえるツッコミを無視し……遠い目をしながら、食後のお茶を飲みます。

 ……あぁ、お茶が美味しい……。

 そして、心が空しい……。


 ◆


「……さて、食事をして満足したので、防具は無理ですけれど武器を創ろうと思うのですが良いでしょうか?」


 現実逃避を終了し、アタシを見る生温かい視線が薄らいだところを見計らい、アタシは皆さんにそう言います。

 そんなアタシの考えを読み取ってくれたのか、皆さんは頷いてくれました。

 ……物分りの良い人たちで本当、嬉しいです。


「あの、師匠。質問があるのですが良いでしょうか?」

「何ですかサリー?」

「えっとですね、武器を創ると言いましたけれど、何処で創るつもりですか? こんな街中……いえ、歓楽街の真っ只中で夜に創ろうとしたら、たとえ師匠が鍛冶でない方法で創ったとしても気づくのでは……?」

「あー……。それも、そうですねー……」


 サリーの言葉にアタシはこの場で《創製》で創る場合のデメリットに気づきました。

 正直、今サリーたちのために創ろうと考えている武器って神気込めるつもりなので、かなり光りを発するんですよねー……。

 多分、サリーが思っている以上の。

 けど……、神聖な場所でアタシが知っていて、何人居ても問題が無い場所って何処かありましたっけ……。

 頭を捻りながら、アタシは周りの皆さんを見渡します。

 人間の国……は、如何考えても邪族の本拠地になりますよね。というかなっていますよ絶対に。

 獣人の国は……、山は消し飛ばしてしまいましたから温泉しか見所がな――げふげふん。乱獲したので今はやめておきましょう。

 翼人の島は……時間の感覚が狂いそうなので危険ですね。行って帰って、世界滅亡なんて笑えませんよ?

 魔族の国は……神気よりも瘴気が高そうですね。偏見だと思いますけれど、かなり危険なにおいがプンプンします。

 じゃあ、やっぱり……。

 そう思いながら、アタシは最終候補の国の出身者2名を見ます。


「あ、あのアリス? な、なぜあたしを見ているんだ……?」

「んゆ? アリス、どうしたのー?」


 いきなり視線を向けられた2人の反応は別々でした。

 ティアは不安そうに問いかけ、フィーンは首を傾げながらアタシを見ます。

 そんな2人へとアタシは優しく問いかけをしました。


「2人とも、問題です。アタシは今、武器を《創製》するために神気が満たしやすく、かつ発光が気にならない人が少なく、広い場所は何処でしょうか?」

「んー、どこだろー??」

「いやいや、それってもう答え言ってるからっ?! というか、もう帰らないと誓ったあたしにもう一度森の国へと帰れと言うのか君はっ!?」


 うん、頭の回転が速くて良いですね。さすがティアです。

 そしてツッコミの腕も良い感じだとアタシは思いますよ?


「はい、帰れと言わせていただきます。どうせ防具兼衣装を彼女にお願いしようと思っていたのですから、世界樹まで連行しても構わないじゃないですか」

「よ、予感はしていたけれど、本当にアルトに依頼する気だったのかっ!?」

「え? 言っていませんでしたっけ?」

「言ってないし、初耳だっ!!」


 うーん、言ったと思ってたのですが言ってませんでしたか。失敗失敗、てへっ☆

 …………やっぱりこういうことをするのはキャラじゃないですね。一瞬キラッ☆って感じに心で思ったらアタシ自身これじゃない感を感じました。

 というか、何だか食事のときのテンションがまだ残っているのでしょうか……、まだはっちゃけていそうです。

 そう思いながら、アタシは行きたくないと言っているティアの肩をポンと叩きました。


「我侭言ってはダメですよティア?」

「いや、我侭というか、君が勝手に話を進めているだけだろうっ!? 何度も言うが、アタシは行くつもりはな――」


 ティアが全てを言い終わる前に、アタシは問答無用で彼女を世界樹前に向けて《転移》を行いました。

 突然消えたティアに周りが驚いたようでしたが、今は気にしません。


「タツオさん、少し皆さんを連れて出て来ますが、1日ほどしたら戻ってきますので心配しないでください」

「おうよっ! 惚れ惚れする思い切りのよさだねぇ!! この場はあっしに任せておきなぁ!!」

「はい、それでは皆さん行きましょうか」


 多分、行きたくないという人も居たりすると思います。

 ですが問答無用でアタシはティアに続いて他の皆さんも強制的に《転移》させました。

 そんな彼女たちの表情は様々だったりしましたが、気にしません。気にしないったら気にしません。

 そしてタツオさんに手を振るとアタシ自身も《転移》を行いました。

 一瞬の暗闇の後に、アタシの視界には篝火が焚かれた森の広場が見えました。

 ちなみに他の方々もアタシが来るのと同時に着くようにしていますので問題はありません。


「……しばらく振りに来ましたね。世界樹のほうは……育っていますかねー」


 そんなことを呟きながら、森の広場に進むと……ログハウスから見覚えのある少女たちが顔を出して来ました。

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