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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
442/496

宣戦布告

「――――以上が、2人とアタシの間にあった出来事です」


 そう言って、話し終えたアタシはまだほんの少しだけ温かいお茶を口へと含み、口の中を潤しました。

 そして、カップを机に置くと同時に3人を見ると……やはり顔面蒼白となっています。


「そんな……、ライくん…………」

「ライト様……、あんまり……ですっ!」

「ライトォ……」


 ……やはり、言うべきではなかったのでしょうか……?

 いえ、邪神の率いる連中との戦いをするときには知ることになる可能性が高いのですし、今教えたほうが良いはずですよね。

 そう思っていると、力いっぱいに食堂から廊下へと続く扉が開かれました。


「お、おめぇらてーへんだぁ!! って、誰だぁっ!?」

「タツオ、一人で走るんじゃないと何度も言って――誰だ?」


 慌てながら入ってきた人物……タツオさんはアタシを見た瞬間、両手を上に上げて驚くという古典的な驚きかたをしました。

 そのあとに続いて、サメ系の魚人……シャーグさんが警戒心を露わにアタシを見ます。

 ……ああ、タツオさんたちはアタシとは初対面でしたよね。

 そう思いながらアタシは立ち上がると頭を下げます。


「初めましてタツオさん、シャーグさん。アタシはアリスと言います」

「アリスってぇと……、ああっ! サリーとフォードの探し人かぁ!!」

「てめぇが、アリスか……。話しどおり見た目は貧相だけれど、洒落にならない力を感じるぜ……」

「色々とツッコミたいところですが、その通りと言わせてもらいます。……ところで、2人はどうして慌てていたのですか?」


 アタシが問い掛けると、思い出したようにタツオさんは手をパンと叩いてから、今度は頭をパシッと叩いてウッカリウッカリといった感じの仕草を取りました。

 ……えっと、ちゃきちゃきの江戸っ子もどき?


「そうだったそうだったぃ!! 空に変なのが映ってるんだ! プロジェクションマッピングとか投影機で投影してる的な感じによお!!」

「はあ?」

「タツオの話はオラァにはよくわかんねぇが、空に訳わかんねぇ女が映ってるから街がざわめき始めてるんだよ」

「女、ですか? ……とりあえず、見てみましょうか。……サリー、いい加減放してください」

「……はい」


 ……一大事かも知れないと思うので、サリーにそう言うと彼女は聞き分けよくアタシの腕から離れました。

 彼女、実は正気に戻ってたけれど、離れたくなかったから正気に戻っていない振りしていたようですね。

 まあ……とりあえず、怒ることはせずに何も言わないでおきましょう。

 そう思いながら、アタシたちは外へと向かいました。

 そして、空を見上げて……呆気にとられました。

 何故なら……、妙にあざといポーズを取った少女趣味全開の衣装を着た魔族の女性が空一面に映っていたのですから。


 ◆


 しばらく、と言っても5分も経っていませんが……何らかの方法で空中に投影されているライブ映像ですが、変化が訪れました。


『え、もう動いていいのぉ~? ちょっとネズミィ~、準備が出来てるならちゃんと報告しなさいよぉ~!』

『ふひひ、申し訳ないでござる! お仕置き期待していて言うのを忘れていたでござる!!』

『そうなの? だったら、ちゃんと後でお仕置きしてあ・げ・る~ぅ♪』

『ブヒィィィィィ! ありがとうでござるぅぅぅぅぅ!! マーリアさまぁぁぁぁぁっ!!』


 ……映像外、もしくはコレを投影している何かを持っているであろう人物。

 すごく心当たりがあるのですが……、えっとだれでしたっけー? 思い出したくないので、思い出さないでおきましょう。

 そう思っていると、コホンと魔族の女性が咳払いをして優雅にお辞儀をしました。


『初めまして、人間以外の人種の皆様。魔族のかたは初めましての人も居れば、ごきげんようと言うかたも居るでしょうね。

 わたくしは、魔族四天王のマーリアと申します。

 さて、何故わたくしたちがこのように全種族に対して分かるように顔を出しているかと言うと、今此処で重大な発表をするからです。

 その発表とは、わたくしたち魔族は一部の反抗勢力を覗き、魔族の神の庇護から脱却し、邪悪なる神……即ち邪神様のもとに下りました。

 ですので、わたくしたちはこれより魔族ではなく、邪族と名乗らせていただきます』


 そう魔族の女性、マーリアは優雅に発言しますが……何でしょうか、このカンペ読んでる感……。

 残念な物を見るように見ていると、突然のことで周囲がざわめきを放ち始めているのに気づきました。

 ……が、まだこれからだと思いますよ?

 そう思っていると、事実そうでした。


『さて、だったらこれなら別に報告なんてしなくても良いと思うでしょう?

 でもね、報告するべきでしょ~? だって、ねぇ……。

 邪族から全種族へと戦争を仕掛けるのですからぁ~♪』


 堪えていた笑いを吐き出すように、マーリアはケタケタと笑い始めました。

 そして、それを聞いていた周りの人たちは呆気に取られた表情のまま、まだ理解が追いついていないようです。

 他の国ではどんな反応を起こしているのでしょうね……。気になりますが、今はマーリアの話を聞くことにしましょう。


『マーリアちゃんたち邪族が、戦争を行うのは今から7日後。

 だ・か・らぁ~♪ それまでに準備を整えておきなさいねぇ~♪

 ま、どんなに頑張ったって、邪族の糧となるだけだから無駄だと思うけどねぇ~♪

 キャハハハハハハハッ!!』


 マーリアの笑い声が世界に響き渡って居たが、挑発過ぎる挑発に一部の住民や冒険者、多分兵士もでしょうが……ふざけるなと叫んでいるようです。

 が、突然笑い声が止むと、思い出したようにマーリアは手を叩きました。


『そうそう、忘れてたわぁ~。マーリアちゃんたち邪族は、欲望に満ちた者たちも受け入れるわよぉ~♪

 相手を殺したい、女を犯したい、人や物を破壊したい。そんな黒い欲望を持っている人なんて超素敵過ぎてマーリアちゃんは胸がドキドキするわぁ~♪

 だから、邪族の仲間になりたい種族は邪神様が用意した門を通ってきてねぇ~♪

 ってことでネズミィ~。速く消しなさぁ~い、たぁ~っぷりマーリアちゃんが躾けてあ・げ・る・からぁ~♪』

『ブ、ブヒィィィィィィィィィッ!!』


 その言葉を最後に、空の映像は消えました。

 直後、空高くから何かが、中央広場へと落ちたらしく……地面が揺れました。

 その揺れを感じてから、アタシは周りに居る仲間たちを見ると……彼らも頷きました。

 それを見てから、アタシたちは中央広場に向けて駆け出しました。

ってことで、新展開開始です。

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