異世界の村で発見! こんなところに●●人!?
こういうタイプってわかってどうして、彼女は頭を抱えたのかって?
それを知るには知らないといけないことがあるんだけどね……彼の世界には、アキバ戦士って言う自称職業があるの。え、どうして自称なのかって?
えっとね、彼の世界にアキバって呼ばれた街があるんだけどね、そこにはアニメやゲームや漫画って言う、彼の世界独特の娯楽がたっぷり詰まっているの。それでね、そういうのが好きな人たちはオタクと呼ばれていて……そこから更にどっぷりと染まっていった人たちが自分たちをアキバ戦士と名乗るようになっていたの。
彼? 彼は一応週刊少年誌……うーん、ゲッツの日からサンの日までを一週間って呼ぶんだけど、その一週間に一冊出る漫画ね、週刊少年誌って言うのは。まあ、彼は週刊少年誌とかを読んだり、悪友から小説を借りるぐらいのオタクとかアキバ戦士じゃなかったわ。しいて言うなら、そうね……可も無く不可も無い、地味って奴ね。
「まさか……何か知ってるのかアリス?」
「えーっと、多分だけどね……ケモミミって言うのは、サリーとかハツカみたいな感じの動物の耳を生やしてる人間のことだと思う」
「な、なるほど……って普通に獣人なんだからチュー族とかでいいんじゃねーのか?」
「そうだと思うんですけど……そのドブというゆうしゃは良く解りませんね……それで、もうひとつの言葉も分かってたりするんじゃないんですか?」
「多分、多分だけどね……本当に多分だよ。知らないから適当に言ってるだけかも知れないけどね……『働きたくないでござる。拙者働きたくないで御座る』って働く気が無い意志の表れだと思うんだ」
何というか物凄く白々しいような感じに彼女は言ったけど、怪しいと思わなかったみたいで回りの人たちは納得したように頷いていたわ。
というか、まだ見ていないけど……ドブと呼ばれるゆうしゃは外見はハツカたちが知ってるドブなのだろうけど、中身はきっと別物になっているんだろうと彼女は確信していたわ。だって、彼女も同じような存在なんだもの……。
そう思ったら、彼女はふと思ったわ。同じ存在なら、彼の外見が彼女になって転生したと思ってたけど……彼女の中に彼が入ったという考えが正しいのではないかと思い始めたわ。
そして、彼が入った瞬間から元々の彼女はどうなったのかと……考えたらいけないことを考え始めたの。けど、それを考え始める前に中断させられたわ。
「なるほど、ということはドブは狩りに出たくないと言い出しているということで良いのか?」
「えっ!? あ、ああ……多分そうだと思う」
「? あの、師匠? 何だか顔色が悪いですよ?」
「もしかして、あれだけの魔力使ったんだから疲れが出てきてるんじゃないのか?」
「そ……そうかも知れない。とりあえず、晩の食事を取ってしばらくしてからすぐに寝ることにする……」
心配するサリーとフォードにそう言って、彼女はチュー族が作ってくれたスープを分けて貰ってすっぱ辛い思いをしつつもそれを食べたわ。まあ……すっぱ辛いスープの中に麺が入っていたから少し食べ易くはなってたわね。
それを食べ終えて、明日はチュー族の集落に向かうと話をしてから、彼女は先に眠りに着くことにしたの。
ちなみにサリーとフォードはハツカと話をして明日の準備をしていたみたいだったわ。彼女たちの話し声を子守唄にしながら、彼女は眠りに着いたわ。
眠る前まで彼女は頭の片隅に残った疑問を抱き続けていたわ。だからだと思うの、夢の中で彼女は彼女に会ったのは……。
「ここって……アリスの部屋? いや、でもなんで……?」
チュー族の聖地で野営していたはずの彼女だったのに、目が覚めるとホンニャラッカにある彼女の家の部屋だったの。そして周りを見ても、サリーもフォードもハツカも居なかったわ。
どういうことかと首を傾げていたけど、部屋の中には彼女だけじゃないと感じたの。
周囲を見渡して……彼女は見つけたの。部屋の隅で蹲っている彼女を。
金色に輝くサラサラとした髪、エメラルドのように綺麗な碧眼、陽にあまり焼けていないのか真っ白い白磁のように白い肌をした少女……もう一人の自分。
いや……、本当の彼女。この世界に彼が来るまでアリスと呼ばれていた少女。アリスを奪われた少女。
その少女が、彼女の目の前で蹲っていたの。エメラルドのように綺麗な碧眼を涙に濡らしてね……。
「ひっく、もう……やだよぉ……怖い、怖いよぉ……ひっく、助けてよぉ……っく」
別の転生者だと思う人物が出たから思い始めると思うこと。