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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
創製の章
437/496

ボルとライ・1

「アタシが出会った……ボル(・・)ライ(・・)、その2人のことはおもいでテレビで見ていたのですから知っていますよね?」


 アタシがそう言うと、少し戸惑いつつも彼女たちはその映っていた映像を思い出しつつ頷きます。


「え、あ……う、うん……」

「ええ、覚えてるわ。それが……?」

「名前は似ているって思いましたが……、ライト様とボルフ様とは似ていませんでしたよね?」

「あ、ああ……、それにおやっさんたちは人間だぜ? 人間だってのに、あんな化け物みたいな力なんて出せないだろ?」


 そう彼女たちは口にしつつ、否定をします。

 けれど、そんな中……今まで黙っていたティアが手を挙げました。


「良いだろうか? おもいでテレビに映っていたあの2人が戦闘の際に使っていた力だが……あたしにはどうしようもなく覚えがあるんだ」

「「「「え?」」」」

「それは何ですか? ティア」


 アタシ自身は解っていますが、ティアに答えてもらおうとアタシは尋ねます。

 すると、彼女は一度ヒカリさんたちを見てから、目を閉じて……口を開きました。


「あの力は……、あたしと同じだ。そう……自身の中に溜め込んだ瘴気を武器とし戦う力……他種族が無理矢理魔族に変えられた者たちが得た力だ」

「「「「!!?」」」」


 ティアの言葉を聞いて4人が目を見開き、息を呑んだのを見ながら、アタシは目を閉じます。

 きっと、彼女たちの中で考えないようにしていた可能性が、もしかして……に変わり始めただろうと考えながら、アタシは口を開きます。


「いま、アナタたちが思ったこと。それは間違いないでしょう……、ええ、それは本人から聞いたので間違いありません……」

「マジ……かよ……」

「――っ!!?」

「ど――どういうことですかっ!? 答えてください、アリス様っ!!」

「……………………」


 信じられないと頭を抱えるフォード。

 突きつけられた現実に、口を押さえるルーナさん。

 彼女にしては珍しく、アタシに掴み掛かろうとするシターさん。

 ヒカリさんは…………、目が死んでいますね。やっぱり、大丈夫と言っても大丈夫じゃなかったんですね。


「あのとき、皆さんに見てもらっていたおもいでテレビですが、一部だけ端折ったところがあったんですよ」

「それが、おやっさんたちとの話し……ということか?」

「ええ、彼らの希望でアナタたちに変わり果てた姿を見せたくなかったのです。一応人間の神様がそれを汲み取ってくれたみたいですよ?

 けれど、あの仮面が受信機であると聞いた時点で、隠してたらダメだと思うので……アタシから言わせていただきます」


 そう言うと、アタシはあのときのことを思い出し始めました。

 アレは、そう……カラアゲ将軍が統治する街に滞在し、2人に声を掛けたあとのことでした……。


 ●


 その日……あの悪趣味な像を入れ替え、そろそろ街を出ないといけないと考え始めたアタシの元へとボルさんは現れました。


「……良いだろうか」

「はい、待っていましたよ。……ライさんは?」

「ある場所に置いている。少し遠いが……、来てもらえるだろうか?」

「ええ、勿論そのつもりです」


 アタシは頷くと、ボルさんは歩き出したので……後を追うようにして、アタシは歩き出しました。

 カラアゲ将軍の屋敷を出て、街並みを歩き……門から離れた壁の側まで向かうと、ボルさんは壁を蹴って外へと飛び出しました。

 とりあえず、アタシもついて行くと言ったのですから……行きますか。

 脚に力を込めると、アタシは一気に跳び上がり壁を越えました。

 壁を越えると、アタシが来ることを分かっていたらしくボルさんは待っていました。


「……やはり、越えるか……。こっちだ」

「はい」


 そう言って、アタシはボルさんについて街を離れて駆けて行き……、しばらく進んだところにあった巨大な岩山の前へと辿り着きました。

 そして、そこにはライさんが立っており、アタシたちに気づいたのか軽く手を挙げました。


「待たせたな」

「……いえ、思ったよりも早かったです」

「そうか。それじゃあ、話をするか」


 そう言いながら、ボルさんは岩山の隅に隠れるようにしてしゃがむと、ライさんも同じようにしゃがみました。

 ……一応、彼らの前には話が出来るように椅子代わりの平らな岩が置かれているので、アタシはそれに座りました。

 お偉いさんとかそういう人たちだったら、こんな風に座ったらお茶とか出されたりするのでしょうが……そういうのは期待しないほうが良いですね。

 なので、気になっていたことを聞くことにしましょう。……多分、向こうも話したいことは結構あるかも知れませんが、時間が無いでしょうし。

 そう考えながら、アタシは羽織っていた外套を脱いで岩の上に敷くと、その上に座ります。


「……単刀直入に聞きます。ボルさん、アナタは……ボルフさん……ですよね?」

「……そうだ。そういうお前は、アリス……で良いのか?」

「はい、獣人となっていますが、アリスです」


 あっさりと認めたことにアタシは驚きつつも、ボルフさんを見ます。

 そして、隣のライさん……多分、名前に覚えがあるので、きっとあのイケメンゆうしゃ……かも知れませんね。

 そう思いながら、アタシは2人を見ます。……向こうも、露わとなったアタシの姿を見ていました。

 見られていると思うと……、何だかムズムズしますね。


「……確かに、お前の顔は俺の記憶の中に僅かに残るアリスにそっくりだ」

「僅かに、ですか? ……教えてもらえませんか? アナタがたに何があったのかを……」

「……良いだろう。俺たちに何が起きたのかを……、だがそれを知る前に今の俺の姿を見てくれ……」


 そう言うと、ボルフさんはアタシの前で仮面を外し……上半身を露わにさせました。

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