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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
431/496

兄妹

 ――――――――――


 名称:太陽

 種族:神使

 主神:人間の神

 宿主:

 説明:

  遥か昔、人に恋をした神使。

  本来ならば、自身の転生した人物の奥底で眠り、生命の危機に瀕したときに力を貸し与える存在。

  しかし現在、不幸な出来事で本来の宿主でない人物の中に居るために力は振るえない状態となっている。


 ――――――――――


 ……神使、ですか。つまりはキュウビや、森の国であった彼女たちと同じ存在というわけですね。

 そして、それぞれの神に3体居るというのが基本みたいですし……多分、ルーナとシターの2人の中にも神使が居るんでしょうね。

 そう思いながらアタシは太陽を眺めていましたが、彼女自身は茫然自失としているようでアタシが居るのにも気づいていない様子でした。

 ……いったい何があったんでしょうね? 何か分かることが出来るアイテムとかは無いでしょうかー……っと、そういえばおもいでテレビがまだ残っていましたよね?

 それを思い出したアタシはワンダーランドが呑み込んでいることを期待して《異界》を覗き込みましたが、予想通りと言うべきかやっぱり呑み込んでいました。あと、ミソや醤油、コーラなどの飲み物や調味料もたっぷりと……。


「壊れては……居ないようですね」


 《異界》から取り出したおもいでテレビの様子を見つつ、アタシは(あきら)のほうに近づくと……彼女の手に映像を読み取るための端子を握り込ませます。

 すると、映像は荒いながらも映し出され始め……、身体中から黒瘴珠らしき物が生えた人物の顔がドアップで表示されました。

 その映像は誰かの視点なのか、その視点の主はまるで果実をもぎ取るようにして黒瘴珠らしき物を人の顔や身体から抉り取っていました。……うっ、吐き気が…………。


『あ……A……ア…………』

「っ!!? こ、これは……、黒瘴珠……ですよね? それに、まともな意識はもう……無さそうですね」


 映像に初めはギョッとして驚きましたが、それを堪えつつ観察すると色々と分かるものがありました。

 そして、移り変わり……黒い空が見え、街並みは……多分人間の国の王都だと思える場所でした。

 大通りだったはずの街並みを人々が歩いていますが……男たちは半裸の状態なのですが……女性たちは変な感じに着飾られており、と言うかコスプレされていました。

 そして、そのコスプレを強要させている人物らしき者が通り過ぎ……あの、何だかドブ居ませんでしたか? ……仮に本人だとしたら何してるんだよあのオタク戦士……。

 まあ、それは置いておくとして……、画面に映る街並みでは黒瘴珠を肉体からボコボコと浮き上がらせた人々がゾンビのようにフラフラと歩いているのが見えました。

 それを最後にプツンと映像は途切れました。……多分、これは……。


「人間の国の現状……といったところでしょうね。そして、彼女の本来の宿主がその中に混ざっていた。そんなところでしょうか?」


 で、この神使は何気にプライド高そうですから、本来の肉体に入りたいのに、本来の肉体がこうなっているというのを知ってしまったけれど信じたくない。と言ったところでしょうか?

 そう思っていると、ゆっくりと光の目蓋が開くのが見えた。


「う…………ここ、は……?」

「あ、気が付いた? 気分は如何?」

「あー……うん、大丈……って、えっ!?」


 目を空けて、フラフラと置き上がった光にアタシは問い掛けると……ボーっとしながらも返事をしていたけれどアタシを見て即座に驚いた様子で、キョロキョロと周囲を見渡してから、もう一度アタシを見た。

 そして、恐る恐る……腫れ物に触れる様子で、アタシに向けて口を開いた。


「あ、あに……き、なの?」

「あ、えっと……。ちょっと待ってください」


 ……ここはアタシが話すよりも、アナタが話したほうが良いって思うので、アナタを主体にさせてもらいますね。

 そう言って目を閉じて、アタシはオレの意識を押し上げた。そのことで意識が女性寄りから女性っぽい男性寄りに変わった。

 そして、ゆっくりと目蓋を開けて光を見ると……呆気にとられた表情でオレを見ていた。

 そんな光に、オレは優しく微笑み……。


「……久しぶり、光」


 ……昔、と言うか前の身体のときみたいに笑っているつもりだけれど……上手く笑えているだろうか?

 そう思っていると、突然光が抱きついてきた。

 その突然の行為に驚いていると――。


「……にき、あにきだ……。ごめん、ごめんなさい……ごめんなさい…………」


 オレの胸に抱きついたまま、啜り泣きをし始めた光に気づき……優しく背中を撫でた。

 ……そうだよな。コイツにとって、オレはあのとき炎の中で会ったのが最後だったんだ。きっと謝りたかったんだろうな。

 けど、光。オレはそんなのを望んでいないんだぞ? そう思いながら、オレは光を胸から引き剥がすと目線を合わせた。

 拒絶。そんな感情がまったく無くなった代わりに、後悔といった感情が映る瞳を見ながらオレは口を開いた。


「光……、あの火事でお前が無事でよかったって……オレは思ってるんだぞ? だから、謝らないでくれよ。それに……もしもオレに告げる言葉があるなら、それは謝罪じゃなくて感謝にしてほしいな」

「あにき…………。うん、分かったよ……。あの火事のときに……助けてくれてありがとう。こんなことになっちゃったけれど……本当に、本当にありがとう」

「うん、それで良いんだよ」

「あ…………」


 涙を引かせ、光は照れているのか頬を赤くしながら頭を下げた。……こんなこと、つまりはこの世界に来なければきっと幸せで過ごすことが出来たかも知れないな……。

 そう思いつつ、オレは光の頭を優しく撫でていた。

 突然の行為に光はポカーンっとオレを見ていた。……あ、あれ? オレってこんな風に光を撫でていたよなぁ? ……あ、良くて小学生辺りまでだった。

 確か、中学生辺りからは避けるようになってたり、払われたりしてたよな……。

 そう考えると、やばいことをしたのか? まさかまた払い除けられたり……?

 そう思っていると、光は顔を紅くしつつも……跳ね除けることはしなかった。あ、あるぇ?

 え、えっと……この反応は、いったい何なんだ……?

 とりあえず、どんな反応すれば良いのかとオレは心底悩み続けながら、光の頭を撫で続けた……。

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