絶望を打ち砕く者・4
空間を揺らすほどのワンダーランドから放たれた一撃により、島全体が揺れ……って、大きな穴が開いていました。
う、うわぁ……これは、やりすぎ……ですよね?
そう思っていると島がやりすぎと告げるように、ゴゴゴゴゴッ! と激しい音を立てながら、水が噴出しました。
噴出した水に呆気に取られていると、水飛沫が頭に当たり――――。
「熱! 熱いっ!? って、コレってお湯っ!? マグマとか噴出さなかったけれど、温泉噴出しちゃったってオチですかっ!?」
いやまあ、マグマとかが噴出すということになったら色んな意味で笑えないことになりますけど……。
そう思っていたアタシだったけれど、アークのことを忘れていたことを思い出しました。
「そういえば、アークはどうなったのでしょうか?」
『FUSYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
「――っ!?」
呟いた瞬間、噴出した温泉の水圧で吹き飛ばされたであろう、ドロドロに融けかけたスライムのなりそこないらしきものがアタシへと襲い掛かってきました。
突然のことで驚いたアタシは対処に遅れましたが、側面からバニーナイツが2体飛び出し迫り来るスライムのなりそこないを切り裂きました。
それはもう力が残っていなかったようで、バニーナイツたちの剣を受け、崩れるようにして落ちていくのが見えました。
そして、そのときアタシは落ちていくスライムのなりそこないを見ましたが……どうやらアレはアークだったようでした。
「…………哀れな最後、でしたね。さようなら、四天王アーク」
そう呟いたアタシの目には、消えていくアークだったものの姿が見えました。
●
「ふう……、一応は一件落着。と思えば良いのでしょうか?」
間欠泉といった感じに噴出し続ける温泉が収まったころ、アタシは地上へと降り……周囲を見渡します。
周囲はアタシじゃないアタシが見ていた光景とはまるっきり違った有様となっており、一件落着とは言い難かったりしました。
とりあえず……無事だった。と思えば十分でしょうか? それでも、今までこの島に住んでいた転生ゆうしゃの方々が築き上げてきた物が台無しになったと考えるのならば、一件落着とはやはり言い辛いですね。
「まあ、直すにしてもアタシが勝手にやるよりも、彼らがどうするかというのを見てもらわないといけないよね。……怒られたりするのかなぁ?」
呟きながらアタシは、とりあえず回収できる物は回収するべきと判断して周囲を見回すことにした。
とりあえずは……放置していたらダメになるだろうと思われるオレの居た世界の食材とかを回収することにしよう。
「っと、自分で調べるのは難しそうだし……ワンダーランド、頼める?」
『『ブウッ!』』
「……あ、あれ? 7羽ぐらい居ません?」
アタシが探すよりも、ワンダーランドに頼んだほうが速いと判断し、バニーナイツから白兎型に戻るように指示して呼び寄せるとワンダーランドは数を増やしていました。
えっともしかして、何か変化起こしたのでしょうか?
そう思っていると、アタシの指示に従うようにしてワンダーランドたちはピョンコピョンコと飛び跳ねて、島の中に残っているであろう調味料とか食べ物などといった生産品の回収に向かっていきました。
…………あ、あれ? ってことは……。
「アタシ、やること無い……?」
ポツリと呟きましたが、誰も返事を返してくれるわけもなく……事実、手持ち無沙汰な状態になっていました。
うーん、どうしましょうか……。そう思いながらボーっとしていると、ガサリという音が耳に届き……振り返ると、ボロボロの服を着た……というか、下半身丸見えになっている少女がふらふらと出てきました。
ちょっ!? そ、それは駄目ッ! 色々見えてる、見えすぎてるからっ!!
物凄く慌てながら、アタシはその少女の下へと駆け寄り……。
「っ! あ、光……?!」
「だ…………れ……?」
驚くアタシに対して、光のほうは虚ろな瞳をこちらに向けてきたけれど……バタリと倒れた。
い、いったい何があったんだ……?
「と、兎に角一度着替えさせて、落ち着かせましょう!」
今するべきことを決め、アタシは光を抱きかかえて着替えと休める場所が残っていそうな地下に沈んだ家を巡り始めました。
◆
「とりあえず……、死んでいた。って考えるのが正しいんだろうけれど、どうしてフラフラしているんだろう?」
ベッドで眠り続ける光を見ながら、アタシは疑問に思う。
あの後、アタシで無いアタシが暮らしていた家で着替えを見つけ、それを着せるとアタシは服を探している最中に見つけていたベッドを取り出すと彼女を寝かしつけた。
……一応、アタシでないアタシが見ていた中で上と下が別れている姿をチラリと見ていたのだから、死んでいた。というのは正しいと思うけれど……祝福で呪いってこんな感じにフラフラするものなのかな?
そう思いつつアタシは光を見ていた。……すると、彼女の身体から漏れ出すように見覚えの無い女性が姿を現した。
「え……っと、だれ……ですか?」
『……そ』
「はい?」
『うそ……よ。しんじない……そんなの、しんじない……しんじない…………』
アタシの声は届いていないのか、女性はぶつぶつと呟いているだけでした。
……いったい何があったのでしょうか? と言うか、見覚えが無いはずなのに……アタシの中の別の記憶には似ている人物に覚えがあるような…………ああっ!
そうだ。誰かに似ていると思ったら、別世界の未来でゆうしゃライトが結婚した人物の一人じゃないですかっ!
もしかして、その人物に関係する人物でしょうか?
そんな風に思っていると、アタシの視界に詳細表示がされました。
えーっと、何々……?
強い力貰っていても雑魚は雑魚ってことで……。