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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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チュー族のゆうしゃ

 うん、綺麗に焼けたっと。それじゃあ食べようか――って、熱いから気をつけなさいって言ってるでしょ。

 あなたも微笑んでないでちゃんと見てて上げなさいって言ってるでしょ? ……え、見てた? 何処を見てたのかな? もしかして、アタシのお尻を眺めてたなんて言ったら引っ叩くよ。

 ……白々しいけど、ご飯前にそんな馬鹿みたいなことを言うんじゃないわよ。いや、別に夜なら構わな――って子供いる前で何言わそうとしてるのよ!


 はぁ……、しばらく大人しいと思ってたら、忙しかっただけでそろそろ暇になり始めてるかぁ……。

 まあ、忙しかったら忙しかったで寂しいけど、暇だったら暇だったでちょっとエッチな発言言うからね父さんは。

 でも暇になったら今度皆でピクニックにでも行こうか。綺麗な花畑とか見にさ……さ、それじゃあ寝ようか。

 ……え、お話を忘れてないかって? 大丈夫、覚えてるわよ。それじゃあ、続きを話そうか。

 しばらくして、他のチュー族の戦士たちに宥められてハツカは落ち着きを取り戻し……恥ずかしそうにしながら彼女に謝ったの。


「も、申し訳ありません。ゆうしゃ様……つい興奮してしまい我を忘れてしまいました」

「別にいいけど……その、男にはそういうのはしないほうが良いよ」

「? 何故ですか? 尊敬、敬愛、敬意を抱く者への最大限の感情の表しかたは抱きつくことだと我は教わりました」

「あー……そうなんだ。あとさ、いきなり敬語を喋られても困るから、普段通りで良いから」


 とりあえず、獣人の国にはブラジャーという概念は無いのかと思いつつ、彼女はハツカに言ったわ。で、言ってから気づいたけど……人間の国にもブラジャーなんてあったっけ。と思ったの。

 ブラジャーって何かって? んー、胸が大きな人がつける下着ね。え、母さんは必要無さそうだって? それはどの口で言ってるのかなー?

 ……うん、人に言って良いことと悪いことがあるって覚えておきなさいね。それでどうしてそんな話になったかっていうとね……ハツカは胸が大きいのに、着けていなかったのよ。だから、柔らかい感触が彼女の胸元に当たったけど、男性としての彼のドキドキする感情と女性としての彼女の巨乳に対する怒りがぶつかり合って微妙な気分になったみたい。

 それでね、彼女が普通に喋るようにと言ったから、少し困った顔をしたけど、ハツカはコホンと咳をして彼女を見たわ。


「分かった。けれど、我はゆうしゃ様のことを敬愛させてもらう。それは構わないか?」

「別に良いけど? あと、ゆうしゃじゃなくて、オレにはアリスって名前があるんだ」

「失礼した、アリス様。それで、話をさせてもらっても良いだろうか?」

「んー、まあ……聞くだけ聞いてどうするかは分からないよ?」

「それで構わない。この場で野営を考えたほうが良いだろうし、準備を終えてから話をさせてもらう。それで良いか?」

「オレは別に良いけど、2人もそれで良い?」


 ハツカの言葉にどうするかをサリーとフォードの2人に聞くと、2人も休憩したほうが良いと言ったので休憩することにしたわ。まあ、彼女自身よく分かってなかったけど、かなり疲れていたみたいなのよね。魔力の使い過ぎで。

 そして、野営の準備を整え終わると時間が過ぎて、空は夕焼け模様を描いていたわ。

 考えてみたらそうよね。昼ごはんを食べて、ハツカに襲われたのはすぐだったけど、そのあとの移動はかなり時間を掛けてたんだし。

 少し離れた場所にあった座るのに適した石を持って、それに腰掛けながら焚き火を眺めてしばらくしていると、ようやく準備を終えたハツカが焚き火のほうへとやってきたわ。


「それで、あんたらのゆうしゃの目を覚まさせてくれってどういうことなの?」

「ああ、実は……我らチュー族の村に居るゆうしゃドブは元々寡黙で周囲とは距離を置く人物だったが、類稀な強さで周囲を襲うモンスターを蹴散らしてくれていたから人望がある男だったんだ……けれど」

「けれど、ってことは何かが起きたんですか? まさか、深手を負ってから眠りから覚まさないとか?」

「いや、ドブに傷を負わせるモンスターなんてこの近辺に居るわけがないんだ。それに……眠っているわけでもない」

「じゃあ……目を覚まさせてくれってどう言う意味だ? 俺にはまったくワケが分かんねぇぞ」


 フォードとサリーが首を傾げながら問い掛けると、言い辛そうにしていたハツカだったが口を開いたの。

 ある日、何時ものようにドブはモンスターを狩って、食べれる類のものは村の皆で分けて、外敵となるものは被害が及ばないようにしていたそうよ。

 で、村の皆がお礼を言って、返事は無いけど軽く手を振る仕草をして家に入って行ったドブだったけど……翌日から可笑しくなったそうよ。

 寡黙だったはずの彼が突然狂ったような大声を上げて、よく分からない奇行に走り出して……って、良く分からないから奇行って言うのよね。

 まあ、初めは村の皆は何が起きたのだと驚いていたけど、ドブはまるで人が変わったかのような行動に走り続けていたみたい。積極的に行っていたモンスター狩りは行かなくなり、家に引き篭もってダラダラとし始め……とか思ったら、ワケの解らない単語を空に向けて放っていたそうよ。

 まるでゆうしゃで狩人だった職業が自宅警備員にジョブチェンジしたって感じに思えたわ。自宅警備員? んー……家でごろごろとしてる人かな、簡単に言うとね。

 何だか嫌な予感を感じつつ、彼女はハツカに問い掛けたわ。


「……ちなみに、どんな言葉を放っていたか分かる限りで良いから教えてもらえないか…………?」

「あ、ああ……確か……『リアルケモミミキター!』だとか『ハタラキタクナイデゴザルセッシャハタラキタクナイデゴザル!』とか本当にワケが解らない言葉だった」

「な、何言ってるのか本当に解らないな……アリス?」

「解らない言葉なんですけど、背筋がゾッとしますね……師匠?」

「だから、村の皆はドブと距離を取って……どうしましたか、アリス様?」

「………………………………………………………………」


 この世界ではまったく聞き覚えが無い言葉だったけど、彼の世界の一部地域でかなり聞き覚えがある言葉だったから……彼女は頭を抱えたわ。

 まさか、自分以外にも居るかも知れないって思ってたけど、こういうタイプが来ただなんて……ね。

ドブとかハツカとか、ジャーノンとかアルとか、そんな名前のチュー族

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