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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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絶望を晴らす者たち・16

 大人アリスと狐アリスが光となり、アリスの中へと入りしばらくすると崩壊が収まり……ぼんやりとした光を放ち始めた。

 そして、ぼんやりとした光は明滅を繰り返し、徐々に光は強くなっていき……最終的に眩い光と神気を地下に充満させた。

 ……ある程度発光が収まると、その場には……裸の少女が立っていた。

 妖精のようにしなやかな体型、陽光に当てなくても光り輝くほどに艶やかで長い金色の髪、今は眠たげではあるが開いたときにはパッチリとしており周囲を見通すほどの綺麗な碧色、ぷっくりと膨れて艶やかで瑞々しいピンク色の唇。

 そんな少女が……アリスが……呆然としながら、立っていた。


 ◆


「アタ……シは…………? ああ、そうだ……、知っている(・・・・・)。アタシじゃないアタシが見ていた、聞いていた。だから、知っているんだ」


 そう呟きながら、アタシは自身の胸に手を当てて瞳をしばらく閉じてアタシのためにその身を犠牲にしたアタシたちへと黙祷を捧げた……、そしてゆっくりと目蓋を開けると生まれ変わった自分の身体を見始めた。

 ……が、ある部分を見てアタシは眉を顰めた。


「…………ない。キュウビ(獣人)のときは、あったのに……ない」


 そう言いながら、アタシは自身の平原や洗濯板とでも比喩出来るほどにまったいらな胸に両手を当てたが……うん、自分で自分を貶めるのはすごく傷付くからそれ以上洗濯板とか平原とか言うのはやめよう。

 まあ、とりあえずおっぱいを両手で触れたけれど……獣人の姿のときに感じていたフニフニプニプニとしたお餅でプリンな感触は感じられなかった。

 ……あの、お胸は? おっぱい様はどちらへとお隠れになられたのですか?

 脱走? 脱走したのですか? しかも、完全に失われちゃったのですかっ!?

 ……やはり人間一度味わった感触が失われると果てしなく悲しい気分になるというものだろう。

 そんな他人にとってはどうでも良いだろうけれど自分自身にとっては重大事件であり、無くなったものへの絶望を感じるアタシの耳へと、しばらく振りに聞いた鳴き声が耳に届いた。


『ブウッ!』

「ワンダーランド?」


 何時からそこに居たのかは分からないけれど、アタシへと近づくようにしてしばらくぶりに見たワンダーランドが近づいてくるのが見えた。

 ……そういえば、アタシがアタシの珍道中……じゃなかった、魔族の国の(世直し)旅をおもいでテレビで見ていたころから見ていなかったわね。

 うん、サリーたちがポップコーンとか食べている最中も、日本食食べたりしているときとかも、お風呂に入っていたときもワンダーランドは居なかったわ。


「ワンダーランド、アナタ今まで何処に居たの?」

『ブウッ、ブウッ! ……ワターシ、シュギョウシテマーシタ』

「っ!!? え、い、今喋らなかったっ!?」

『ブウ?』


 とっても胡散臭い英語っぽい感じに喋ったよね、いまっ!!

 聞いた言葉が間違いなければ喋ったはずだ。なのに、ワンダーランドは何事も無かったように可愛らしく首を傾げていた。

 ……こ、この子、本当に得体の知れない存在過ぎるわ……。

 ワンダーランドの得体の知れない部分にアタシは恐怖しつつ次にどんな行動を起こすのかと恐怖しつつ見ていると、ワンダーランドは《異界》から紅い珠が付いた首飾りを取り出した。

 これは…………。


明赤夢(ルシッド)?」

『ブウッ♪』


 首を傾げるアタシへとその通りと言わんばかりにワンダーランドは頷いた。

 そして、改めて今現在の自分の服装を思い出すと……MAPPAだったことを思い出した。

 MAPPA、そう……真っ裸。それはもっとも神聖で、生まれたままの姿。人類は皆、裸となって大地に降り立てば良い……って、何でアタシは裸族みたいな考えを思っているのかなぁっ!?

 あ、あまりにも何時も通り過ぎて、裸だっていうことをすっかり忘れていたわ。

 ま、まあ……裸で悶えるよりも、まず先に服を着るべき……よね。


「ってことで、お願い。明赤夢ッ!」


 アタシの掛け声に応えるように明赤夢は紅い光を放つと、アタシの身体を包み込んだ。

 そして、紅い光は形を取り始め……、服へと変化していった。

 アタシは変化し終えた服を見ると、ポツリと呟いた。


「和服じゃ……ない?」


 そう、和服じゃなかった。獣人の姿のときはおっぱいを強調するようなデザインの着物ドレスといった感じの物であったけれど、今アタシが身に纏っている服装は……冒険者の服に近いデザインをしていた。

 と言うか冒険者の服だと思う……けれど、違うところと言えば、服の色が真っ赤であることとスカートにフリルがふんだんに盛られているというところだ。

 そう思っていると、アタシの目の前に文字パネル……のような物が現れた。

 いったいどういうことだと思っていると、現れた文字パネルへと文字が表示されてきた。


【マスターが寝ている間に、るしっどは頑張ってボスと共に性能を上げたよ!

 具体的に言うと、KIMONOドレス以外にも今着ている冒険者の服や普通の服、異世界の服にも変化出来るよ!

 だから、るしっどはマスターから二度と離れないよ!】

「…………え、えーっと……チェンジで?」

【へんぴんはおうけしておりません。】


 …………あー……うん、何だかこの子も変な方向に突き抜けちゃったみたいですね……。

 まあ、ここは……着れる服の範囲が増えたと思っておくことにしておきましょう。

 そんな風に思っていると、ワンダーランドが再び『ブウッ!』と鳴きました。

 どうしたのかと思っていると、ワンダーランドは天井……具体的に言うと、アークによって破壊された穴を見て……見…………あ”っ。


「わ、忘れていましたっ!! 今まさに戦闘中だったんじゃないですかっ!!」


 つまりはここでMAPPAになってたり、ワンダーランドにツッコミを入れてたりしていたときにも上ではアークによって蹂躙が行われていたということですよねっ!?

 は、速く行かないと……! って、この身体の限界ってどうなっているのでしょうか?

 普通の人間と変わりない状態だったら笑えませんよ? 鴨が葱と一緒に鉄鍋に入ってやって来るようなものですよっ!?

 そう思っていると、文字パネルが再び出て明赤夢が話しかけてきた。


【マスター、マスターの仲間たちがピンチなんだよね?

 だったらすぐに助けに行こう、今すぐに!】

「判っています。……そうですね、悩むよりも速く向かったほうがい――え? えぇ!?」


 紅い光が背中から放たれたと思った瞬間、アタシの背中には真っ赤な翼が生えていた。

 ……え、コレ何? 本当、何ナノコレ?

 そう思っていると、背中のほうにバックパック的な物が付いているらしく、シュゴーッという大層な音を立てながらアタシは浮き上がり始めた。

 こ、これって……まさかの、SFチックなアレですかっ!?

 大きく戸惑ったアタシだったが、そんなアタシを無視するかのように明赤夢はアタシを飛び上がらせて、地上へと繋がる穴へと飛び出して行った。

 ……ちなみにちゃっかりとワンダーランドはアタシの肩にしがみ付いている。

 そして、アタシは……。


「ひ、ひぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」


 高スピードで絶叫マシーンばりに飛び出していく現状に悲鳴を上げながら……、ついに外へと飛び出したのだった!

しばらくファンタジーぶち壊しになる……かも?

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