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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
422/496

絶望を晴らす者たち・12

※前半ロンで、後半サリーです。

 ――ガッ――――キン――ッ……!


「な――――に………………」


 いったい、なにが……起こったのだ…………?

 いや、分かっている。分かっているが、頭が……現状を、理解しようとするが……追いついていない。

 だが……少しずつだが、頭は現状を、認識し始めた。


 ……そう、だ…………。

 自分は、アークに向けて……<バーストブレイク>を放った。

 その一撃に、自分は絶対の自信を持ち、倒せることは出来なくても……腕一本は、持って行ける。

 そう信じていた。

 なのに、それなのに……。


『KEヒャ! 残念ダッタな~ぁ? ってKOTOデ、死NE――』


 音の速度で突き出された槍を砕き、アークの手は自分を掴もうとしていた。

 それは、間違いなく……自分を死に導く物だ。

 それを理解し、自分は下がろうとしたが……見えている速度と動いている速度は違うらしく、自分の身体はまるで沼の中に沈んだかのように重かった。

 ……そう、か。これが、死に直面したときに見えるという……世界。

 心で納得しつつ、心臓は恐怖を感じているのかバクバクと音を立て、目は迫り来るアークの手へと注がれていた。

 だが――、そんな自分の耳へと声が聞こえた。


「ロンッ! 避けなさいッ!! 燃えろ、天を焼き尽くす炎! 《天炎球》!!」

「――――ッッ!! す、すまない……助かったフェニ……」


 聞こえた声で精神が正気に戻ったのか、死地の世界から自分は脱することが出来……直後、アークに向けてフェニが放ったであろう炎の球が放たれた。

 それを合図に自分は脚に力を込めると、全力で後ろへと下がっていった。

 直後、フェニの魔法はアークへと直撃――


『無駄DAッテんのGA、分カラねぇNOカよっ!!』

「なっ!? ウ、ウチの《天炎球》が……吹き飛ばされ――くっ!!」


 まるで、アークは埃でも払うかのようにフェニの全力で放った魔法を手で弾いた。

 それを信じられないと言ったフェニの顔が見えたが、直後に吹き飛ばされた魔法は天井に当たったのか激しい熱気を周囲に放出した。

 トールの防御があって耐えられていたそれは、防御無しでは耐え切れるはずも無く……自分たちは身体を襲う強烈な熱気に膝を突いた。

 けれど、アークのほうはまったくダメージを受けていない。とでも言うかのごとく、自分たちのほうへとゆっくりと近づき始めていた。

 ……これは……余裕があるから、自分たちが恐怖するのを楽しんでいるのだろう。

 強くなった。そう思っていたはずなのに……まだ、まだ通用し無いというのか……?!

 自身の弱さに、唇を噛み締めながら……自分はアークを睨みつける。


『くヒャHYA!! おREっち様との力の差ヲ思い知ったミテぇだな~ぁ? それJAア……、今度KOソ――死NIナ』


 そう言って、アークは自分たちが膝を突いている方向に向けて、筋肉のよって異常なまでに膨れ上がった腕を振り上げ――――。


 ◆


「くっ……! いい加減に退いてください……!!」

「クフフッ、退けと言われて退く阿呆が何処におると言うのじゃ?」


 早く師匠が眠る地下へと向かいたいと言うのに、ワタシを足止めするようにキュウビの本体が立ち塞がり……戦いを繰り広げています。

 それに……、他の仲間たちも助けに行こうにもキュウビの創り出した分身に阻まれ、向かうことが出来ません。

 ……師匠、無事で……無事でいてくださ――――、っ!!?


「ッ!? な、何ですかコレは……!? 島が……揺れているっ!?」

「な、何じゃこれは……っ!? ドウケの奴……何をしたというのじゃっ!?」


 突如、島全体が揺れているのではないかと思うほどの激しい振動が地面から伝わり、ワタシは戸惑いました。

 そして、キュウビのほうも計画の中にコレは無かったらしく、驚いた様子で叫び声を上げています。

 いったい、これは…………? ッ!?

 いったい何が起きたのかと思った瞬間、地面が吹き飛ぶように弾けました。

 土や岩、そしてそれに混じるようにして……。


「ロ、ロンさんっ!? タイガに、トールちゃんにフェニさんっ!?」


 宙を舞うように、見覚えのある4人の姿が見えました。

 彼らの姿はボロボロとなっており、よく見るとトールちゃんは血塗れとなっていて、3人も生半可な傷ではないのが分かります。

 そして、彼らは受身も出来なかったようで……地面に叩き付けられるようにして落ちると、呻き声を上げて動かなくなりました。


『おいOI、呆気無さ過ギじゃNEェのか~ぁ?』

「え……あ、あれって……アーク…………? ――ッッ!!?」


 彼らへと駆け寄ろうとしたワタシですが、彼らが出てきた穴から出てくるように何者かの影が見えました。

 そして、それが視認出来る範囲まで近づくと……先程と姿が変わっていますが、アークでした。

 ですが……その変化はいったい……? そう思っていた、ワタシでしたが奴の気配を感じた瞬間――身体が、本能が言い知れないほどの恐怖を感じ、立つ気力も奪われてその場にへたり込んでしまいました。

 しかも、アークは片手に引き摺るようにして何かを持っており、それに視線を向けた瞬間……言葉を失いました。


「ヒ、ヒカリちゃんっ!?」

「ヒカリ様っ!!?」


 遠くでアークの様子を見ていたであろう、ルーナとシターちゃんの叫び声が聞こえましたが……ワタシは引き摺られるヒカリの姿から目が放せませんでした。

 何故なら、引き摺られる彼女の身体は……まるで力を込めて引き裂かれたとでも言わんばかりに裂けられて、半分のみとなっていたのですから……。

 そんなワタシたちの反応でようやく思い出したとでも言うかのようにアークは手に掴んだそれを見ました。


『ン? あァ、KOれカぁ? ゴミどもWO一気に潰SOウとしたときNI、間に入ってKITAからあいつらを殺SHI損ねたンだYOなぁ……だKAラ、腹いSEニ千切ってYAッタんだよ』


 それを聞きながら、ワタシの心には恐怖を上回るほどの怒りが湧き上がるのを感じました。

 許せません……許せません…………!!

 沸々と湧き上がる怒りのまま、ワタシは立ち上がりましたが……それよりも先に動く者が居ました。


「アークッ! お主、いったいどういうことじゃっ!? ドウケはどうした!? それに、お主のその身体……それは!?」

『ウルSEえよ~ぉ! テメェは、DAまッテロよ!』

「なッ!? ――――っぐ!?」


 掴み掛からんと言わんばかりにアークへと詰め寄ったキュウビでしたが、彼女を煩わしく思っているらしくアークは掴んでいたヒカリの身体を彼女にぶつけた。

 突然のことで対処出来なかったらしく、キュウビはヒカリの身体と共に吹き飛ばされていきました。

 そして……、ワタシたちを見ると……笑みを浮かべ…………。


『さ~ぁ。楽SHIい、楽シI虐殺げームの始まRIだ~ぁ。テメェら、イKIておれっち様を楽しMAせロよ~ぉ?』


 まるで、ゲームのようにアークはワタシたちに告げます。

 ……その声を聞きながら、ワタシは短剣を改めて握り締めました…………。

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