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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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絶望を晴らす者たち・10

※ロン視点です。

「隙だらけだぜっ! くらえっ、<グランドインパクト>!!」

『クッ、クヒッ!? そ、そんな大振り……食らうか~ぁよ!!』


 フェニの魔法を受けて転げまわっているアークへと、先行といわんばかりにタイガは大振りに振るった拳を振り下ろした。

 しかし、全身高温の蒸気を浴びて爛れ始めてるアークだったがその攻撃は回避した。

 タイガも分かっていたのだろう、舌打ちをしつつも再び距離を取り始めた。

 そんなタイガへと、自分は語りかける。


「タイガ、何度も言うが先行するのは」

「わ、分かってるって! 今度はちゃんとロンと合わせるからよ!!」

「……そう言うことにしておこう。では――行くぞっ!!」

「おうっ!!」


 自分の掛け声と共にタイガも再びアークへと走り始める中で、アークにかけられていたフェニの魔法は弱まってきたのか転げ回っていたアークはフラフラとしつつも立ち上がり始めた。

 だが……今は弱まってるはずだ! ならば一気に畳み掛けるのみっ!!

 そう考えながら、自分はタイガと共に駆け出す中で如何攻めるかを聞こえるように語る。

 その言葉に頷くとタイガは自分と歩幅を合わせていたものを更に速め、アークの背後に回るように駆けて行った。

 そして、自分はアークの前に立つと腕に力を込め、槍を構え――。


「<百連突き>!!」

『ヘッ、そんな攻撃受ける義務はね~ぇんだよ!』


 そう叫ぶと、自分はアークに向けて素早く突いてすぐに引くといった連続動作を行い始めた。

 だが、アークは自分の攻撃をすぐに回避してその場から離れようと行動し始めたが……、自分は合図を送る。


「タイガッ!」

「おうっ! 逃がすかよ、<ブレイクラッシュ>!!」

『ッ!? お、お~ぉっ!?』


 合図を受けたタイガが握り締めた両の拳を、引いては戻し連続的にアークを殴りつけていく。

 背後から回ったタイガの攻撃を避けようとアークは動いたようだが、自分とタイガ。2人の猛攻を回避するのは至難の業だろう。

 その結果、アークの身体は自分とタイガ、2人の拳と槍の連撃を受けることとなった。

 後からタイガの拳が連続的に打ちつけられると、前からは自分の残像を残すほどに速い槍の襲撃。

 だが、前だけでは収まらず……自分たちの攻撃を受けて徐々にアークの身体は回転し、ボロボロになり始め血が飛び跳ねているのが分かる。

 そして、自分の背後……フェニのほうから熱を感じるところを見ると、彼女が得意の魔法である《火球》を使おうとしてるのだろう。


「九十九、百…………ッ! タイガ、下がれッ!! 頼んだぞ、フェニッ!!」

「わかったぜ! ただしてめぇはその場で止まっていろ!! グランドインパクトォォォォ!!」

『が――グギャッ!?』

「さあ、いくわよ!! 燃え上がれ、ウチの炎よ! 我らが仇敵を焼き尽くせぇぇぇぇ!! 《天・炎・球》ッッ!!」


 頭からタイガの一撃を受けて、アークは地面に突き刺さるようにしてその場に留まることとなり、自分たちが下がった瞬間――自分たちの代わりに前に出るかのごとく、白く燃える火球が飛んでいくのが見えた。

 ……ジッと見ていると、目が焼けてしまいそうなほどに熱いそれは……アークに命中すると、一気に爆発するかのごとく燃え上がった。

 ――だが、これは……不味いな。


「トール、この辺りに魔法が届かないように防いでくれ。そして、フェニ……やりすぎだ」

「わ、わか……った。<クリスタルシェル>……!」

「ま……まさかこれほどの威力だなんて……って、わ――悪かったわねッ!!」

「ま、まあまあ、落ち着けよフェニ……。けど、これだけの魔法を受けたらアークだって一溜まりもねぇよな?」


 自分の正論に怒鳴り声を上げるフェニを宥めるように珍しくタイガが間に入り、今だ燃え広がっている炎の中心を眺めていた。

 ……これで、倒せたのか……? …………なんとも、呆気無い幕切れ……だったな。

 そう思っていると、周囲に響き渡るように笑い声が聞こえた。


「な、何よこの不快極まる笑い声はっ!?」

「……笑い、声…………? いったい何処から……」

「あ、あそ……こ……」

「お、おいおい。あれって……アークのクソ野郎に張り付いていた仮面じゃねぇのか?」


 逸早く気づいたトールの指差した方向を見ると、タイガが言ったように……アークの顔に張り付いていた仮面が宙に浮いていた。

 いったい……どう言うことだ?

 そう思っていると、笑い声が止み……アークとは違った声が聞こえてきた。


『クヒッ、クヒヒヒッ、クヒャ、クヒャヒャヒャ……!! すごいですね~ぇ? 捨て駒にするつもりだったのに、ここまで強くなるなんて意外でしたよ~ぉ?

 アークさまのせいで、転移が使えなかったおれっちを傷つけたのですからね~ぇ』


 そう言いながら、仮面もフェニの炎を受けていたからか端のほうが燃えており、徐々に仮面を燃やし始めていた。

 このまま放っておいても、特に問題は無いように思えるのだが……今、転移と言わなかったか?


『……は~~ぁ。この仮面(ドウケ)はもう駄目ですね~ぇ。だったら、最後に受信機代わりにアークに力を与えて潔く割れるとしますかね~ぇ』


 仮面はそう言うと、闇色の光を放ち始めた。

 その光は……見ている自分たちの心をキュッと鷲掴みし、妙な不安感を心に湧き起こすようであった。

 直後、炎で隅になり始めてるアークに向けて、仮面が放っていた闇色の光は放たれた。

 その瞬間――、アークを燃やしていた炎はまるでそこに何も無かったとでも言わんばかりに掻き消えた。


「な、なんだ……? ッ!? ほ、炎が……消えた。のか……?」

「ち、違うわ……あの、あの虫……ウチの炎を、魔力ごと……喰らったのよ!!」


 初めて見る現象だったからか、信じられないと言わんばかりにフェニは口元を押さえて、目を見開いていた。

 そして、自分もアークを見たが……フェニに焼かれていたからか殆どひとつの黒い固まりが残っているだけのように見えた。だが……。


「お、おい……皆。あのクソ野郎、急激に回復してないか……?」

「ほん、とうだ……!?」

「……皆、気をつけろ。何か……嫌な予感がする」

「いや、嫌な予感しかしないわよ……!」


 自分が武器を構えてそう言うと、ツッコミと言わんばかりにフェニがそう言う。

 だが、自分はそれに返す余裕はありそうに無かった。

 そして、アークは動き始めた……。


『さ~ぁ、今から地獄の始まりで~ぇすよ。けど、おれっちは見れね~ぇんだよな~ぁ……。残念だ。ああ、残念だ~ぁ…………』


 聞こえてくる仮面の声が徐々に小さくなっている所から、完全に燃え尽きたのだろう。

 そう思いながら、アークを見ていると……奴は、咆えた。

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