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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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絶望を晴らす者たち・6

「…………は? な、何ですかアレはっ!?」


 上空で起こった出来事に呆気に取られたワタシは、つい余所見をしてしまいました。


「ッ!? し、しまったっ!!」


 余所見をした瞬間、キュウビのことを忘れていた自身に気づき……即座に正面を向きました。

 ワタシ自身の予想では、キュウビはワタシへとセンスを突き立てている。そう判断していたのですが、その予想とは裏腹にキュウビはワタシと対峙した場所から一歩も動いては居ませんでした。

 ……どういう、ことですか?

 疑問に思っているワタシでしたが、視線がルーナと……異空間から現れたシターちゃんに注がれていました。

 と言うか、どういうことでしょうか? 2人とも髪の色も……チラリと見える瞳の色も全て違っていますよね……?

 そう思っていると、キュウビの口から愉快そうな声が洩れました。


「カカッ、異世界人だけかと思ったら、この世界の2人はまさかの人の神使の生まれ変わりじゃったか」

「人の、神使……?」

「ん? おお、すまぬすまぬ。懐かしいものを見たのでつい動きが止まってしまったわい。……じゃが、わしが止まっていなければ、お主は死んでおったのう?」


 ワタシに謝罪しながら、キュウビは笑みを浮かべる。……そうだ。今は生かされたような物なのだ。

 そう思うと、かなり悔しい気持ちになりましたが……、その怒りを発散すべくワタシは再び短剣を構えキュウビと対峙します。

 ……正直、今の状態だとすぐに劣勢になると思いますが、身体が追いつかなかった。そんな理由で負けるわけにはいかないんです……!


「ふむ。そうかそうか……お主の考えは嫌いではないぞ? じゃが、蛮勇は死を呼ぶだけじゃぞ?」


 ……そんな、ワタシの考えを読んでいるのかは分かりませんが、キュウビは呆れ返りながらも心配するようにワタシを見ます。

 その表情にワタシは違和感を覚えました。……貴女は、邪神に染め上げられているのではないのですか? おもいでテレビで見た映像でも、それは間違いないはずです。

 だったら、普通ならワタシを殺すことが出来ることに笑みを浮かべるのが当たり前なのでは?


「……貴女は、正気ではないのですか? ワタシには貴女が操られているとは到底……」

「何を言っておるのか分からぬな。今のわしは邪神様の手先のキュウビじゃよ」


 そうキュウビはワタシに言います。

 ……ですが……ワタシにはそうは思えません……。

 そう思っていると、キュウビがこちらに語りかけてきました。


「それより、お主……まだ気づかぬとはなぁ?」

「え?」

「何、アークの襲撃、ゴーレムとわしによるこの戦いが……時間稼ぎ(・・・・)だということにのう」

「……な、なにを、言ってるんですか?」


 キュウビの言葉にワタシは嫌な予感を覚えながら、訊ねます。

 すると、先程の表情とは打って変わった……まるで、騙すことに成功したとでも言うような表情を浮かべ……。


「お主、わしが……いや、わしらがこの島を陥落する目的だけで動いておったとでも思っておったのか?

 アークの奴も言っておったじゃろう? 『あのクソガキは何処に居る』とな」


 その言葉を聞いて、ワタシはようやく彼女が言いたいことを理解しました……。

 そうだ。何故……何故、この島を襲ったのか。そう考えるべきでした。

 元々は、師匠がこの島に来たから……この島は狙われた。だったら……だったら……。


「貴女たちの狙いは……師匠?」

「カカッ、当たり前じゃろう? わしの身体を器にしておってもアレだけの力、それが完全に動かすことが出来る器を手に入れたら邪神様をも倒すかも知れぬ。ならば、それが完全に姿を戻す前に破壊するのが一番じゃろう?」

「そん、な……。――――ッ! い、今は師匠のもとには誰も居ないっ! 速く、早く戻らないと!!」


 ワタシはすぐに駆け出そうと、地下に行くための階段があるしばらく暮らした家へと戻ろうとしました。

 ですが、ワタシを行かせまいとするようにしてキュウビが立ち塞がりました。


「邪魔です! どいてくださいっ!! ――皆さん、敵の狙いは師匠です!!」

「カカッ、邪魔をしておるのじゃから、どくわけが無いじゃろう? おっと、他の面々にも行かれたら面倒じゃのう……どれ、では久方振りに行ってみるか」


 ワタシの声を聞いて動き出そうとしたフォードくんたちでしたが、キュウビが足元から煙を出すと……そこには、ワタシたちと同じ数のキュウビが立っていました。

 これって、分身……という奴ですかっ!?


『『『カカッ、では……お主らが迎えないように邪魔をさせてもらうとするかのう!!』』』


 キュウビたちがそう告げると、ワタシたちへと接近してきました。

 早く……早く行きたいのに……行かなければならないのに…………!!

 師匠……、無事で……無事で居てください――師匠ッ!!


 ●


 サリーたちがキュウビと彼女の分身によって、邪魔をされているころ……。

 アリスが人間の神に用意された器に合わさっていく地下……、そこにアリス以外の存在が何処からとも無く姿を現した。


「ふ~ぅ、ようや~ぁく辿り着けま~ぁしたね。本当、神の目を掻い潜るのはほんと~ぅに難しいもので~ぇすね」


 そう言いながら、その場に現れた人物……ドウケは眠るアリスへと近づく。

 眠り続けて、意識が無い今のアリスにとって……敵の攻撃は危険なものであり、きっとガラスのように器は砕けてしまうことだろう。

 そして、ドウケはそれを実行するために光に包まれる裸体へと手を伸ばした。

 だが、あと少しというところでドウケの動きは止まり、その身を消すと少し離れた場所へと転移した。

 直後――、ドウケが立っていた場所を走るように一筋の炎が燃え上がった。


「ふう、危なかったで~ぇすね。いきなり攻撃するのはどうかと思いま~ぁすよ?」

「ふんっ! あにきを狙おうとしていたんだから、敵でしょ? だったら、攻撃するに決まってるよ!!」


 そう言いながら、暗がりに潜んでいた少女……ヒカリはナイフを握り締めた片腕を焦がしながらドウケの前へと姿を現した。

 そんな彼女を見たドウケは、呆れたような仕草をし……。


「そうで~ぇすか。だけど、ユーにおれっちを倒すことが出来るのか~ぁな?」

「それはやってみないと……分からないでしょ!」


 そう言うと、ヒカリはドウケに向けて駆け出して行った。

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