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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
415/496

絶望を晴らす者たち・5

※視点はティアです。

少し遅れました。

「…………ふう」


 動かなくなったゴーレムを見ながら、あたしは息を軽く吐いて精神を整え、機能を停止させたゴーレムを見た。

 ……島の住民たちが創ったというゴーレムは、森で戦ったフィーンのアンバーゴーレムよりも強いと感じた。瘴気に汚染されていると言えど、高性能だと厄介な存在となるな……。


「やったね、ティアー! すごく強かったよー♪」


 そう思っていると、あたしのほうへとフィーンが駆け寄ってくるのが見えた。

 そんな彼女へとあたしは手を挙げて答えようとしたが――彼女の背後から迫る存在に気づき、駆け出した。


「フィーン! 早くキミのゴーレムに指示を出すんだ!!」

「ふぇ? あ、あわわ……!?」


 あたしも、フィーンも目の前のゴーレムを倒したことで気が緩んでいたのかも知れない。

 だから彼女に向かって接近してくるゴーレムへの対応が遅れてしまっていた。

 くそっ! 戦場だから、気を抜いたら駄目だったはずなのに!!

 あたしは急いで駆け出すが、それよりも早くゴーレムは近づき……フィーンを襲おうとしていた。


「間に合えっ! 間に合ええええええーーッッ!!」


 それでもあたしは間に合わせようと脚に力を込めて全力で走らせ、フィーンへと近づく。

 そんなあたしの耳に……いや、周囲に響き渡るように声が聞こえたんだ。


『――――――《重力》』

「え――? !?」


 声が聞こえた瞬間、空から淡い光が落ちてきてゴーレムを包み込んだ。

 そして、その光に包まれたゴーレムは突如、まるで何か重石でも載せられたとでも言わんばかりに潰され始めた。

 い、いったいどういうわけだ!? ……い、いや、悩むよりも先にフィーンをこちらに連れて行かないと!!


「フィーン! 無事かっ!?」

「ティ、ティアー……うん、無事だよー。お月様が護ってくれたからー」

「月?」


 空を見上げたあたしは、ゴーレムを押し潰している光が空に見える月から落ちているということに気が付いた。

 だが、月がいったいどうしてあたしたちを……?

 唖然とするあたしだったが、背後から威圧感を感じ……急いで振り返った。

 すると、そこにはあたしとフィーンが出てきたものと同じ空間の穴が広がっており、その中から悠然としながら白に限り無く近い銀の髪を靡かせた女性が出てきた。

 ……あれは…………。


「ルーナ、か?」

「ふぁあー♪ すごいすごーい、お月様とひとつになってるー!」


 本質を見るフィーンが何を見たのかは分からないけれど、彼女はすごく驚きながらルーナを見ていた。

 お月様とひとつに? ……いったいどういうことだろうか。

 そう思っていると、ルーナが何らかの魔法を使って押し潰しているであろう、ゴーレムだったけれど無理矢理立ち上がろうとしているようだった。……だが。


「無駄よ。立ち上がろうだなんてさせないから」


 そうルーナが口にすると、押し潰されているゴーレムの周囲が更に重量が増したのかグッと押し潰されていき、身体がミシミシと音を立て始めていた。

 これなら、勝てるのか……? そう思っていたあたしだったが、ルーナに押し潰されている個体の存在に気が付いたらしく、側面から駆け寄ってくるのが見えた。

 しかも、ルーナは……気づいていないのかっ!?


「ルーナッ、後ろだ!!」

「大丈夫、全てまるわかりよ。それに……瘴気ってここまで禍々しい魔力を放っているのね。――《重力》」


 迫ってくるゴーレムだったが、ルーナはその場所を見ずに同じように魔法を唱えて、押し潰していった。

 す、すごい……丸で周囲に目があるようだ……。まるでフィーンみたいだな。


「違うよー? フィンは本質から分かるけど、ルーナは魔力を見てるよー」

「?? えっと、どういう……訳だ?」

「えっとねー、フィンはキラキラした物は宝石とか色々と分かるんだけどね。ルーナのはキラキラした物のないほーする魔力を見てるってことー」

「…………す、すまない。あたしには難しいようだ……」


 あたしの返答に頬を膨らませるフィーンだったが、そんな彼女を宥めるためにあたしは頭を撫でる。

 そうしていると、ルーナは更に驚くべきことを行い始めた。


「…………このまま押し潰しても、効果は無さそうだし……シターちゃん! 今から他のも纏めて打ち上げるから、纏めて出来る!?」

『大丈夫ですっ。手頃な物も空で見つけたので、タイミングはルーナ様にお任せしますっ!』

「分かったわ。それじゃあ……行くわね!」


 声だけしか聞こえないが……、空間の向こう側にはシターも居るらしく、ルーナがこれから行う準備としてなのか詠唱を開始し始める。

 すると押し潰された2体のみならず、他の家々を壊したり木々を破壊していたり、フォードと対峙していたゴーレムの足元に魔方陣が展開されるのをあたしは見た。


「うわっ、な……なんだぁっ!?」

『フォード様、そこから離れてください。巻き込まれますからっ!』

「シ、シターか? あ、ああ……わかった」


 いきなり戦っていたゴーレムの足元に魔方陣が浮かび、フォードは驚いたらしいが……シターの声に従うようにして後ろへと下がっていった。

 と言うよりも、ルーナの魔力はどれだけあるんだ……!? 普通、あのゴーレムを押し潰している物を持続するだけでも精一杯だと思う。それなのに……これは、アリス並の魔力が無いと不可能なことだと思うぞ?!

 そう思っていた直後、魔方陣が光を放ち――――。


「吹き飛びなさい! ――《反重力》!!」


 聞いたことが無い魔法を唱えた瞬間、魔方陣が爆発するかのごとくゴーレムたちを天空へと吹き飛ばしていった。

 その光景に驚くあたしとフィーン、それにフォードだったが……そこにシターの声が響いた。


『目標を確認、ということで調整しながら落とします――《隕石群》!!』


 空を強大な魔力が覆ったと思った瞬間、あたしの目に……空から落ちてくる影が見えた。

 な、何だアレはっ!?

 驚くのも無理は無いだろう……、何故なら空から星が落ちてきて……吹き飛ばされて天空に飛んだゴーレムたちへと命中していったのだから。

 そして……ドゴンッ、と激しい音を立てながらゴーレムたちは全て爆散していった。

 とりあえず、魔法名を《反重力》にしましたが、明確な名前が無いのでそういう風になったということで……(目逸らし)

 ……ごめんなさい、ただの良い訳です。

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