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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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絶望を晴らす者たち・4

 サリーとキュウビが戦いを始めたころ、それまでアークの命令で動いている風にしていた(・・・・・・)ゴーレムたちはアークという邪魔な楔が外れたために自己での判断を開始し、動き始めた。

 ある個体は腕を振り上げて森を薙ぎ倒し始め、ある個体は地中へと沈ませた家を壊そうと地面を踏み潰し始め、ある個体は島の住人に害をなすべくその身体を使って彼らを押し潰そうとしていた。

 自分たちが創った物で殺され、住処を蹂躙される。それほど悔しいものは無いだろう。

 そして、フォードが戦う個体も戦いかたに変化が起きていた。


『BWOOOOOOOOOOOOOOOOOO』

「くっ!? こ、こいつ……アークが居なくなった途端強くなってないか!?」


 金切り声を上げながら、切られた箇所からドロッとしたどす黒い瘴気の腕を生やすとゴーレムはフォードを殴りつけるために鉄の拳を振り上げた。

 フォードはその攻撃を剣で捌いたり回避しながら、反撃を行おうと剣を振るうが……生やした瘴気の腕は鞭のように俊敏に動き、フォードが接近するのを妨げていたのだった。

 更に、向こうのほうでは別のゴーレムによって、島の住人たちが潰されようとしているのか呻くような悲鳴が聞こえた。


「くそっ! あっちはあっちでヤバイじゃねーかよ!! サリーさんも助けに行くのは無理だろうし……、どうすれば良いんだよ……ッ?!」


 すぐに助けることが出来ない現状に苛立ちながら、フォードはゴーレムとの攻防を行いながら声を荒げ叫ぶ。

 その声を聞いたサリーも、ゴーレムたちの手によって潰されようとしている住人である彼らのほうを向こうとするが……。


「わしとの戦いの最中に余所見は命取りと思うが良い」

「ッ!? くぅ……!!」


 キュウビの放つ鋭い突きによって、向こうとすることも出来ずにいた。

 いや、それどころか拮抗していた戦いだったはずなのに、力を完全に制御出来ていないサリーは身体の痛みを覚え始め……、彼女は徐々に押され始めていた……。

 このままでは、フォードとサリーは倒れ……島の住人たちは成す術無く殺されてしまうことだろう……。

 ……そう、このままならば。


「誰か、誰か居ないのかっ!?」

『いるよー? すーぱーあーすごーれむ、あたーっく!』


 そんな声が周囲に響き渡ったと思った瞬間――その個体の眼前に空間の穴が開き、腕が飛び出してきた。

 その腕から放たれた一撃は、島の住人たちを押し潰そうとしていた個体を殴り飛ばして彼らの命を救った。

 だが一撃だけでは殴り飛ばされただけだったらしく、その個体はすぐに起き上がると空間の穴へと拳を打ち込んだ。

 しかし、腕がもう一本空間から飛び出し……殴りつけようとしていた拳を受け止めた。だが、受け止められた拳に対する代案をすぐに考えたらしく、もう片方の腕を振り上げると殴りつけた。


『防御だー!』


 先程と同じ声が響いた瞬間、黒い穴を殴りつけようとしてたゴーレムの拳を空間から出るもう片方の拳が受け止めていた。

 それを驚いた様子で周囲の者たちは見ていたが……、両手を塞がれたゴーレムへと空間の穴から飛び出してきた黒い影によって、胴体を斬り付けられた。

 そして、斬り付けられたゴーレムは何が起きたのかは分からないが、突然変な感じに震えるとその動きを突然停止させた。


『よーし、今だよー。すーぱーあーすごーれむー!」


 その言葉と共に、空間から完全にゴーレムと組み合っていたゴーレムが動きを停止したゴーレムを押しながら姿を現した。

 ……無骨ながらも、温かみがあるような造りをしたゴーレムで、その傍らには妖精の少女が立っていた。

 その様子をフラフラとしながらも立ち上がった島の住民が見ていると、黒い影が彼らの前へと降り立った。


「あなたがた、怪我は無いか!?」

「あ、ああ……。たとえ酷くても、回復魔法を使えるから問題は無い……」

「ならば、すぐにこの場から離れろ! アレを止めているのも、長くは持たないっ!」


 戸惑う住民たちへと、黒い影……ティアはそう言う。

 その様子に、彼らも今は聞くべきではないと感じたのかすぐに仲間同士で肩を担ぎ、その場から離れて行った。

 ……最後の住民がこの場を離れたのと同時に、動きを停止させていたゴーレムは活動を再開しフィーンのゴーレムと再び組み合った。

 邪魔する者は誰も居ない、力と力のぶつかり合いといった様子を見せるように、ギギギとゴーレムの関節が軋む音が周囲に響き渡る。

 その様子をフィーンはジッと見ており、ティアは攻撃を仕掛ける隙を探そうと瘴気でつくった細剣を構え狙いをつけていた。


「堪えてくれよ、フィーン。あたしの攻撃が当たれば今度こそいけるはずなのだから」

「頑張って、フィンのすーぱーあーすごーれむ……!」


 手を組んでフィーンは祈りを捧げた。すると、スーパーアースゴーレムの瞳が光り、身体の表面を覆う琥珀が光を放ち始めていた。

 彼女は……、と言うか森の神しか詳しいことは知らないことだろうが、フィーンが特訓しティアが眠りについていた異空間は森の神の神気に満ち溢れており、そこにある樹や土……土地すべては聖なる属性に満ち溢れている場所であった。

 なので、森の神との特訓では判明していなかっただろうが、それらで創られたゴーレムは神聖過ぎる存在であった。


『――――ッッ!!』


 まるで咆哮を上げるかのように、スーパーアースゴーレムは唸りをあげると組するゴーレムの手を握り潰した。

 そして、握り潰した手の間から漏れ出す瘴気はスーパーアースゴーレムの光に焼かれるようにして、霧散していった。

 更にそれをチャンスと見たティアは瘴気の細剣でゴーレムの核となっている場所に狙いを定めて一気に飛び出した。


「貫け! <ライトニング・ピアース>!!」


 それらの攻撃を受け、ゴーレムは悲鳴を上げるように黒い瘴気を霧散させながら、倒れた。

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