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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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絶望を晴らす者たち・1

※フォード視線です。

「はぁ…………。――――ふっ!」


 軽く息を吐き、全身の力を抜いたオレは、木剣を頭上に掲げると大岩を前に立っていた。

 そして全身の力が抜け切った瞬間――、オレは一気に木剣を振り下ろした!

 ただし、余計な力は入れずに振り下ろす一瞬だけに力を込め、地面に木剣が当たる直前に力を再び込めて木剣を止めた。


「…………ふぅー……」


 ……そして、オレはゆっくりと息を吐いてから、顔を挙げて大岩を見た。

 すると大岩は、真っ二つに斬れており……そしてドキドキしながらオレは木剣を見た。


「折れて……ないっ! よっしゃーーーーっ!!」


 握られた木剣は折れてはいなかった。

 それを見てオレはガッツポーズを取った。

 そんな浮かれたオレの肩がポンと叩かれ、振り返ると……未来のオレが立っていた。


「やったな、フォード(過去のオレ)

「あ、ああ……。まあ、半年(・・)も殆ど同じ行動し続けてたんだから、出来ないほうが可笑しいと思うぜ……」


 満面の笑みを浮かべる未来のオレに、苦笑しながらオレは言う。

 ちなみに思い出されるのは苦渋に満ちた日々であった。とりあえず、めげなかったのはサリーさんを護れる力を求めたからだ。

 ……え? アリスはどうしたかって? ……サリーさん護るのとアリスを守るのは同じ意味になりそうな気がするんだよな。

 そう思っていると、未来のオレはうんうんと頷いていた。


「本当、お前は頑張ったなフォード……、特訓はひと段落着いたってことで良いだろう。これからも精進しろよ?」


 つまりは練習を欠かすなってことを言いたいんだろうな。そう思っていると、成長した過去の自分の姿が嬉しいのか未来のオレは飲み物を用意しようとしていた。……だが、不意に動きが止まると真面目な顔でオレを見てきた。

 ……どうしたんだ?


「あー……悪い、フォード。本当なら、ひと段落ついたあとにもう少し教え込ませたかったんだけど、そう言えない事態が発生したようだ」

「事態……? 何が起きたんだ?」

「今、お前らが暮らす世界の神様経由で情報があった。どうやら、翼人の島が襲われているらしい」

「えっ!?」


 お、襲われているだってっ!? それを聞いたオレは驚いた。

 そんなオレの様子を見ながら、未来のオレは詳細の説明を開始した。


「ああ、敵は魔族……と言うか、四天王のアークらしい。で、現在オレんところのアリスが立ち向かったらしいが……、アイツもオレたちと同じで強いといえば強いがこの世界のアリスに比べると普通の勇者並だ」

「そ、それって強い部類なんじゃ……?」

「普通の奴らと比べると強いだろうな。けどな……アイツも人間なんだよ。だから……」


 ――もう助けることが出来ないオレの代わりに、アイツを助けてやってくれ。


 その言葉を最後に、オレは突如地面に開いた穴へと落とされた。

 その時点で、オレは未来のオレとの特訓が強制的に終了したのだと理解した。

 だから、だからオレは……息を吸い込み、張り裂けんばかりに――未来のオレに届くように叫んだ。


「ありがとうっ! 助かった!! 絶対、絶対にこの剣でサリーさんを……アリスを護ってみせるッッ!!」


 叫び、穴を落ちるオレだったが、未来のオレに会ったときとは違い、すぐに暗い空間から出ることが出来た。

 しかも、高さもほんの少しだけ高いだけだったので軽く跳んだだけで地面へと突いた。

 地面に降り立ったオレがまず最初に目に付いた物……それは、ゴーレムたちによって蹂躙される島だった。


「これは……酷い…………。っ! あれは……!!」


 島に来てから出会った島民たちがゴーレムに掴まれ、連れて行かれるのを見て助けようとオレは駆け出そうとした。

 だがそんなオレの耳に、切羽詰った声が届いた。


「マ、マァ!」

「あ、あれは……獣人のアリ――ッ!!」


 一目散に駆けて来る獣人アリスを見たオレだったが、その背後からゴーレムが迫り来るのが見えた。

 そして獣人アリスが近づく方向を見ると……大人アリス、未来のオレと共に居たアリスがズタボロな状態で居るのを見つけた。

 しかも、その大人アリスの前には外套を羽織った人物……多分、あれが四天王のアークだと思う。そんなやつが居た。


「おい、今すぐこっちに近づいてくるあのチビを踏み潰せ!」


 アークは獣人アリスへと近づくゴーレムに指示を出すと、その指示に従うように足……じゃなくて拳を振り上げた。

 踏み潰せって言ったのに拳かよ!!

 心でそうツッコミを入れながら、オレは一気に駆け出した。


「今なら、今ならまだ間に合う……! いや、間に合わせてみせるッ!!」


 そう声に出し、オレは駆け出した。

 一歩、足を前に出し、地面を踏み締め――。

 二歩、地面を駆けて行きながら、腰に掛けた剣を鞘から抜き放ち――。

 三歩、迫り来る拳に驚いてその場で立ち竦んでいる獣人アリスの前に立つと、抜いた剣を振り……迫り来る拳を斬り飛ばした――。

 四歩、獣人アリスを抱くと、急いでその場から駆け出した――。


 離れると、オレは抱いていた獣人アリスを地面に降ろした。

 獣人アリスは目をギュッと閉じていたが、恐る恐る目を開け……数日暮らしていた人物であることに気づいたのか、目に涙を浮かべ始めた。


「フォードォ?」

「怖かったな。少し、隠れてろ……あっちのアリスは、オレが何とかするからさ」

「ぅん……!」


 オレの言葉に頷き、獣人アリスが近くの岩の後ろに隠れるのを見届けてから……オレは立ち上がった。

 大人アリスとアークのほうを見ると、アークはゴーレムの腕が落とされていることに驚いているのかそれを行った犯人を探そうと周囲を見渡しており……、ようやくオレを見つけたようだった。


「テメェ、どういうつもりだ? オレ様の邪魔をしやがって」

「邪魔か……、お前がアリスに何かをする奴だったら、オレは全力でお前を邪魔してやるよ」

「……テメェ、このクソガキの仲間か?」

「ああ、仲間だ。そうかよ……だったら…………、死にやがれ! いけ、ゴーレムども!!」


 そう言って、アークは周囲のゴーレムをオレへとぶつけたらしく、一斉にゴーレムたちが近づいてくるのが見えた。

 ……というか、奇抜すぎるデザインのゴーレムだな。

 そう思っていた瞬間、ゴーレムたちがオレへと迫るよりも早く白いなにかがアークに向けて駆けて行くのが見えた。――って、アレって……!?


「サリーさんっ!?」

踏み潰せと言ってたのに、拳を出したゴーレム。

ぶっちゃけ誤植でしたが……アークの残念っぷりに利用します。

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