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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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3人娘の特訓~シター~

 さあさあと草原を優しく風が撫でるのを感じながら、太陽と月と星が瞬く空を見上げていると……遠く離れた場所に月の光がキラキラと降り注ぐのが見えました。

 多分、ルーナ様が魔法を唱えているのでしょう……。

 そう思っていると、頭の中……いえ、心の中に声がしました。


『向こうも始めたみたい。……さ、それじゃあ始めようか』

「は、はいっ。それじゃあ……行きますっ」


 心の中に聞こえる声にシターは返事をすると、両手を空へと掲げました。

 空に手を掲げるのは、空の気配を読み取り易くするためだそうです。


『それじゃあ、復唱して』

「はいっ」


 そして、シターの口からは心の中に聞こえる声に復唱するようにして、呪文の詠唱が始めましたっ。

 複雑で、繊細……、紡ぐ一言一言に魔力を込められた詠唱は、唱える毎に込められた魔力をシターの身体を包み込むようにしてシターの周囲を回っていきます。

 そして詠唱が進むに連れて、自身の魔力に包み込まれたシターの身体は一時的に人間としての存在から上位の存在に変化していきました。

 その変化を具体的に言うと……。

 髪が徐々に黒と紫を混ぜたような色へと変化して行き……その中にきらきらと小さな光が輝きを放ち始め、最終的には夜空を彩る星のようにキラキラと輝きを放つようになっているみたいです。

 さらに、瞳にも無数の星を煌かせてキラキラしているらしいです……。

 ……みたい。や、らしい。というのは、シターは鏡などを持っていないため……自分の姿がどうなっているのかは分からないので、心の中の声から聞いた情報です。

 ちなみに最後はわかります。シターの身体からほんわりと光が放たれてるのですから……。

 ……この姿になったのは、まだ3回目ですが……やっぱり慣れません。本当に、これはシターの力なのかって不安になるからです。

 そう思っていると、心の中に聞こえる声がシターに声を掛けてきましたっ。


『神使への移行完了。続いて、第二詠唱開始――』

「はっ、はいっ! ――」


 ビクッとしながらも、シターは心の中に聞こえる声に従って、詠唱を始めました。

 先程のように複雑で繊細な詠唱。ですが、この……神使状態になっているからか、つい先程まで戸惑っていた詠唱は滑らかに口から紡ぎ出て、まるで歌うように詠唱が口から放たれていきます。

 すると詠唱をするにつれて、またもシターの身体……いえ、魂に変化が訪れました。

 その変化とは…………シターがシターを上空から見ているというものです。

 え? シターは、地面に居るはずなのに……空からシターが見えます? いったいこれは……?

 不思議に思いつつも、同時にこれは当たり前で……今シターは空高くまで飛んで、星を手に入れなければならないという使命感を感じていました。

 そして、真っ暗な冷たい空へと上がったシターは、そこに散らばる幾つかの星に手を当て……地面に向けて押しました。

 それを行い……真っ暗な空に居るシターは役目を終えて自身の下へと戻りました。


「『――――来るっ」』


 同時にシターは口から言葉を漏らし、空を見上げると……空から真っ赤に燃えた星が複数落ちてくるのが見えました。

 それを見ながら、シターは詠唱を続けます。……何故なら、この詠唱で最後の目標に命中させるための位置を決めるのですから。

 だから、万が一のことがあっては危険ということだったりしますっ!

 そう思いながら、シターは詠唱を続けます。

 ……続けます…………が、あ……あれ?


「あ、あの…………。何だか、落ちる場所が決めれないのですが…………?」

『…………ああ、なるほど。多く落としすぎだ』

「………………はい?」


 あっさりと告げる心の声に、シターは首を傾げました。ですが、とっても嫌な予感を感じますっ!

 そして、その予感は心の声が次に放った言葉で核心に変わりましたっ!!


『つまり、星を多く落としすぎたから、制御出来ずに、周囲に無差別落下』

「えぇっと……つ、つまり、落とすなら1個だけのほうが……良かったのですか?」

『そう』

「そ、それを早く言ってくださいっ!!」

『大丈夫、一度の失敗はこれ移行繰り返さない』

「一度の失敗でこれ移行出来なくなったりする場合もあるんですからーーっ!!」


 シターは叫びながら、近づいてくるお星様から逃げるために走り出しましたっ!

 ここでひとつ気づきましたが……、この神使状態になっていると素早さ……というか肉体能力は桁外れに上がっているようです。なので、シターはお星様の直撃を避けることは出来ました。

 ……出来ましたが…………。


「――――へぶっ!?」


 ズズズズズズズズンッというお星様が一気に地面に落下する音が周囲に響き渡しました。

 そして、その震動に身体が揺れ……顔から転んでしまいました。

 その直後、お星様が地面に落下して生まれた衝撃がシターの身体を葉っぱのように吹き飛ばして行きました。


「ひゃ――――ひゃあああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!?」

『飛んでるね』

「冷静に言わないでくださいぃぃぃぃぃぃぃっ!!」


 空高く舞ってから、シターの身体は一気に地面へと急降下しました。

 ああ、これは駄目です……死にます。シター死んでしまいます……!

 死を覚悟したシターでしたが、生きなければいけないと言うことを思い出し、どうにかしなければと考え直しました。

 だって、死んだらもう一度ライト様に会うことが出来ないのですからっ!!

 そう思った瞬間、フワッと身体が軽くなったのを感じ……ゆっくりと身体が地面に降りていきました。


「え……? こ、これ……は?」

『天の川、神使状態だから纏うことが出来る羽衣。効果は浮遊』

「あ、あまのがわ?」


 驚きつつも、シターは何時の間にか羽織っていた薄い布……確か、ハゴロモっていう物でしたよね?

 あまのがわと呼ばれたそれを見ました。

 それは……、今のシターの髪の色と同じような色合いをしたハゴロモで、キラキラと輝く何かが散りばめられているようでした。

 たぶん、見る人が見たら、目を輝かせて欲しがるような代物だと思えました。

 ですが……見た目よりも、シターはその性能に目を見開いてしまいました。……何故なら、今現在あまのがわを纏っているシターは地面に降りてはいるのですが、浮こうと思えばすぐに浮けるようになっているのですから……。


『ちなみに浮遊だけじゃないから』

「え? ――――っ!?」


 それはどういう意味かと訊ねようとした瞬間、シターの周囲を透明な球状の壁が現れました。

 驚くシターでしたが……、よく見ると周囲に熱風が吹いているのか周りの草が燃えていました。

 これは…………、ヒカリ様でしょうか?

 それに、あまのがわが浮遊だけじゃないっていうのは……このことを言ってるのですか?


「えっと、これって……」

『天の川の能力――、浮遊以外に纏う者への防御を行うから』

「そ、そう……なのですか?」

『そう。ただし……使えば使うほど魔力が消費されるから出来るだけ使わないように』

「い……言われてみれば、魔力が……もう……」


 魔力が枯渇し始めたのに気づき、シターはその場でしゃがみ込んでしまいました。

 すると、あまのがわも消えてしまい……、シターの髪も瞳も元に戻ったようでした……。

 しばらくして……そよそよと再び草原に風が吹くのを感じ、シターは息を吐きました。


「まずは……、お星様を1個確実に落とすようにすること……ですね」

『そう。だから、頑張ってね』

「は、はい……。あの、でも…………」


 シターは、回復専門だったんですよ……?

 そう心で思いました。

回復系が実は一番過激な技を持ってる?

ハハッ、当たり前じゃないですか。

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