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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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タイガの特訓・2

「ぐはあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 儂の拳を受けて、獣人の子供……いや、儂の息子のタイガは吹き飛ばされて、石畳の上を転がっていった。

 本気の一撃を受けて、タイガはピクピクと身体を震わせるが……儂は遠慮はしない。

 何故なら、我が子ならばこれしきの困難を乗り越えて欲しい。

 その思いがあるから、厳しく言えるのだ。そして、殺す気で当たることが出来るのだ!!


「立て、貴様が本当に我が子と言うならば、全力で儂を退けてみせよ!!」


 さあ、立て。立つのだタイガよ! 儂は……儂らはそんな風に柔に育てた覚えは無いぞ!!

 未だ動かぬタイガを見ながら、儂は拳を握り締めつつ、心で声援を送っていた。

 ……きっと、そんな儂の様子を亡き妻が見たらきっと「本当、この人って死んでからも相変わらずね……」と呆れることだろう。

 しかし、儂には儂のやりかたというものがあるのだ!!

 誰が何と言おうと治ることは無いだろう。


「………………っくっそぉ……。まったく、追いつけねぇ……くそぉっ!」

「ッ! ……ふん、息子を騙る獣人などが儂に勝てるはずもないであろう!」

「だから、騙っているつもりも無いって言ってんだろうが、このクソ親父!! だったら、こっちも使ってやるよ!!」


 怒り心頭で儂を睨みつけながら、タイガは腰に下げていた木板で創られた飾りを掲げた。

 ……いったい、何をする気だ?


「――変身ッ!!」


 へんしん? 叫んだ言葉に儂は首を捻るが……変化はすぐに訪れた。

 飾りが輝くと、タイガの獣人のようであった身体はむくむくと膨れ上がり……毛が全身を多い尽くしていった。

 そして、着ていた服がビリッという音を立てて破けると、そこには儂が見慣れた……いや、そのころから少し成長をしたタイガが立っておった。

 へんしん……なるほど、変身と言っていたのか。だがこの場合は、変身ではなく元に戻るほうが正しいのではないかと思うが……儂にはよく分からん。


「へっ、待たせたな。クソ親父。こうして元の姿に戻れている時間は限られているから、全力で即効沈めてやるよッ!!」


 そう儂に向かってタイガは歯を剥き出して言った。

 そうか、全力か。……面白いっ!


「口だけではないことを証明して見せるのだな! さあ、掛かって来い!!」

「言われなくても、かかってやるぜ!! うおおおおおおおおおおっ!!」


 儂の言葉に反応して、タイガは石畳を蹴ると一気に儂へと突進してきた。

 なるほど、魔族本来の姿に戻ったために力は格段に上がった……という訳か。

 だが、代わりに素早さが削られたと……。

 ここはかわせば良いだろう。良いだろうが……本来の力を見せたタイガの実力を、儂は見たいのだ。

 そう思いながら、突進してきたタイガへと対抗するために儂も接近するタイガに向け、体当たりをかました。

 直後、儂とタイガがぶつかり、ドゴンという音が周囲に響いた。

 その音は儂とタイガがぶつかり合った衝撃が音となって響いたものであり、儂らは互いに拮抗していた。


「ふ――――んっ! 息子を騙る者にしては、やるみたい……だ、なッッ!!」

「うるっせぇよ……、クソ――親父ッ!!」


 タイガに儂はそう言うが……、儂はタイガが儂と拮抗するようになっていたことに内心驚いていた。

 ……こいつめ、3年前から進歩はしていたみたいではないか。

 心踊るのを堪えつつ、儂はタイガの身体を押してから石畳を蹴った。


「ならば、これは――如何だ?!」


 儂は距離を取ると拳を大振りで放つために腕を振り上げると、そのまま走り出した。

 獰猛な一撃ではあるが、回避はしやすい……ように見えるが、その実、回避したところをもう片方の手で横に殴りつけるという攻撃だったりする。

 その攻撃にタイガは如何来るかと興味を示しながら、儂はタイガへと距離を詰める。


「っ! これは!? だったら、こっちは……!」


 接近する儂の動作で、次に何を放つかを理解しているらしくタイガは気を引き締めると、儂へと駆け出してきた。

 いったいどうするつもりだ!? 生半可な攻撃では逆に痛い目を見ると分かっているのだろうなっ!!

 どのように対処するのかを期待しながら、儂は振り上げた腕を一気に振り下ろした!


 ――そして、儂の振り下ろした拳は石畳を砕いた。


 だがそこには、タイガは居らず。儂の拳は空を切り、地面を穿つだけであった。

 ぬうっ!? タイガはいったい何処に行ったッ!?

 驚きながら周囲を見渡す儂だったが、上から声が掛けられた。


「貰ったぜ、クソ親父!! <シューティングバスター>!!」

「ぐ――――ぬおおおおおぉぉぉぉぉっ!?」


 上を向いた瞬間、儂の背中へと衝撃が走り……それがタイガの放った踵落としであることに、儂は漸く気づいた。

 渾身の力ではなったであろうタイガの攻撃は、儂の背中から体内に衝撃が走り久方振りの痛みを儂は感じた。

 …………だが、儂は簡単に倒れるわけには行かない。だから……。


「ぬあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!! ふん、多少はやるようだが……こんな攻撃、儂には効かん! フンッ!!」

「ちっ! ……くそっ! まだ駄目ってことかよ……!」


 力を込めて起き上がると、タイガは丸まってクルクルと空中を回転させながら、地面へと降りるとそう言いながら地団駄を踏んでいた。

 ふんっ、鍛えるというのに儂のほうが貴様よりも先に倒れたら、親としての威厳が無いだろう!?

 けれどそれは言うつもりは無い、語るのは……拳で十分だ。


「そうだ。まだ駄目だな。貴様が息子だと言うならば、儂が使っている技ぐらい使えるようにならねばな……。まあ、出来る……と思ってはいないがな」

「~~~~ッ!! やってみないとわからねーだろ、このクソ馬鹿親父!!」


 儂の挑発に乗ってタイガは、儂へと飛び掛らんばかりに飛び掛ってきた。

 それを見ながら、儂はタイガへと最後の贈り物というなの特訓をより過熱させるのだった。

悪態ついてたり色々しているけれど、実は全員嫌っていなかったりする身内やら師匠連中。

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