表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
400/496

フェニの特訓・Ⅱ

 我輩の妹の娘……つまりは姪であるフェニに我輩は魔法の特訓を始める……はずだった。

 それなのに…………。


「フェニよ。何故我輩は椅子に拘束されているのであるか?」


 そう、我輩は今まさに座り慣れた椅子(を再現しているけれど、ほぼ同じ物)にお腹周りを何処から持ってきたのかは分からぬが縄でぐるぐる巻きに縛られていた。

 解せぬ! そう思っていると、我輩を縛った本人であるフェニは相も変わらず鍛え上げられた結果本物に見えるような上品な笑みを浮かべて我輩を見ながら……。


「あら、伯父様。ウチは何度も言ってたのにまったく聞いてくれなかったから……こうしたに決まっているじゃない」

「……ふむ? フェニが我輩に何度も言ったことであるか?」


 ……何であったか。うぅむ、思い出せない……。

 いや、そこで忘れていたら我輩の伯父としての面目が丸潰れである!

 思い出せ、思い出すのだ我輩の記憶よ! 今こそ、灰色の脳細胞を働かせるときである!!


 ――ポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポク…………ちーん?


 分かったのである! 灰色の脳細胞が我輩を刺激したのである!!

 フェニが何度も我輩に言ってること、それは――。


「思い出したのである! フェニの恋愛事情であるぶふぁっ!?」

「なっ、んっ、でっ、そうなるのっ!!」


 い、痛いのである!! 我輩が発言した瞬間、フェニは我輩の頭を杖で殴り付けたのである。

 正直、いや本当に痛いのである!!

 しかし、頭を殴られて良い感じに頭の中が揺さぶられたのか、思い出してきたのである!!

 だから今だ杖を構えているフェニへと言うのである!!


「思い出したのであるフェニ!」

「……本当なのかしら、伯父様?」

「うむ、我輩、思い、出したのである」


 キリッと顔を引き締めてフェニへとそう言ったのであるが、我輩は信用が無いのか胡散臭そうな表情でフェニは我輩を見ていたのである。

 だから、もう痛いのは嫌なので真面目に答えることにしたのである!


「フェニは、我輩が勝手に歩き出すのを止めさせるために我輩を縛り付けたのである!」

「………よかった。思い出してくれたのね、伯父様」


 安堵するフェニを見ながら、我輩も安堵したのである。痛いのからは解放なのである!!

 頭の中で小躍りをしていると、再びフェニはこちらを見てきたのであるが……先程とは違って真面目な雰囲気を感じたのである。

 その顔つきを見て、我輩は漸くフェニへと魔法の特訓をしなければならないと言うことを思い出したのである!!

 と言うか、忘れていたわけではないのである!! 別のことに夢中になっていただけなのである!!


「それでフェニよ。我輩は何処まで教えたのであるか?」

「えぇっと……たしか、火属性の魔法全般のこと。だったと思うわ」

「そうであるか。では、今回は違う属性の話をするべきであるな」

「……伯父様。鍛えて欲しいってウチは言ったけど、ウチは火属性が得意なんだからそれだけを突き詰めたら良いんじゃないの?」


 フェニは我輩にそう言いながら、用意していた椅子に座り、机に上半身を預けてグデーッとし始めていた。

 …………我輩が言うのも何だと思うが、フェニは天才であるが故に……勉強に関しては飽き性なのである。

 我輩が幼いころのフェニに勉強を教えるのを苦労していたのは懐かしい思い出なのである。

 ちなみにそのときは、フェニの母親が色々と頑張って我輩の勉強をしっかりと聞かせる方法を使ったのであったなぁ……確かお菓子であったり、玩具であったりと様々であったのである。

 ……そうである! 面倒臭がっているのならば、別の方法で引き込ませるのが一番なのである!!

 そして、フェニの魔法の才能を改めて知るのにも良い方法である!!

 そうと決まれば行動開始なのである。……ただし、我輩縛られているけれどっ!!


「フェニ、ちょっと頼みがあるのである」

「……何、伯父様?」

「そこの棚に、大きさの違う紙が数枚あるので、その中から1枚選んでもらえないだろうか?」

「分かったわ。――って、多いわね。それじゃあ……ウチは、これにするわ」


 ふむ、大3であるか。

 では次に……。


「紙の近くに絵の具があるはずだから、その紙に好きな絵を描いてみて欲しいのである。一応息抜きを兼ねてなので、好き勝手に描いてみるのである」

「絵を? ……正直、面倒なんだけど? ……まあ、息抜きって言うのは良い考えね。ここしばらくは魔法の勉強ばかりだったし」


 フェニは嫌そうな顔をしていたが、別のことが出来ると考えたのか絵を描くことにしたようであった。

 けれど、絵の具が入っている箱を見ると……顔を顰めた。


「……ちょっと、伯父様? この絵の具、赤・青・茶・緑・黒・白しかないんだけど?」

「すまないのである、我輩が用意出来たのはその色だけなのである。なので、工夫して描いてもらえないだろうか?」

「そうなの? ……まあ、やってみるわ! 伯父様、ウチの超大作に驚きなさいっ!!」


 自信満々にそう答えるフェニは水瓶に入れた絵筆を掴み、平板へと絵の具を少し載せてから執筆を開始したのであった。

 やる気を出しながら、赤い絵の具を大量に消費し始めるフェニを見ながら、我輩はこの絵を描くという作業の真の目的を考えていた。

 実のところ、その紙も絵の具も特殊な道具で……紙は意識して選んだフェニは考えているだろうが、実は紙の大きさ=自身が持つ現在の魔力最大量ということであった。

 大3、つまりは普通よりも3倍あると言うことである。ちなみに我輩は大4だったりしたのである。

 そして、絵の具。それは各属性を表す物であり、使用した色=その人物が得意とする。または潜在的に秘めている使えることが出来る魔法の属性を調べる物である。

 要するに、息抜きと言っておきながら我輩はフェニの潜在魔力や今の属性の得手不得手を調べようとしているのである!

 ふふふっ、安心するがよいフェニよ……。全て描き終えたとき、我輩はお前の総評をするのである。

 だから、我がまま言わずにちゃんと特訓をするのであるよ?

 そう思いながら、我輩はフェニの絵を待ち望んでいたのである。

NGシーン(笑)


「できたわっ!」

「ふむ、どんな感じであ――――こ、これは……っ!?」


 我輩が見たもの。それは、大3の用紙を真っ赤に染め上げられた絵であった。

 ただの炎といった絵かと思えば違う。何か底知れない闇を感じたのである。

 これは血、血なのである。

 それを見ているとガクガクと全身から震えが怒り、我輩の口からは泡がブクブクと洩れ始め……我輩はあまりの恐怖に意識を手放したのであった……がくり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ