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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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モンスターと戦おう

 あら? 今日はもう寝るの?

 え、早くベッドに入ったほうがお話をいっぱい聞けそうな気がするから?

 まったく、あんたって子は。まあいいか、それじゃあ話すことにするよ。

 ほら、ベッドに入った入った。


 そんなに興奮しないの。っと、何処まで話したっけ……ああ、城に向かう途中か。

 その道の途中で、彼女は初めてモンスターと戦うんだよ。

 踏み固められた街道を彼女は他の冒険者や商人たちと同じように歩いてたんだ。

 でも、ある程度街道に沿って歩いていると、途中でその場所を避けるようにして街道が曲がってたんだよね。

 真っ直ぐ行ったほうが近道になるはずなのに誰もそうしないことに疑問を抱きつつ、彼女は真っ直ぐ歩き始めたんだ。

 すると、冒険者であろう男の人に肩を捕まれて止められたんだ。


「ちょ、お前馬鹿か!? 死にに行くつもりかよっ!」

「えーっと、真っ直ぐ行ったほうが近いんじゃないの?」

「まさかお前知らないのか? この道を真っ直ぐ行ったら魔物溜(モンスタープール)があるんだぞ?」

魔物溜(モンスタープール)?」

「……お前どれだけお嬢様?」


 冒険者はそう言って、彼女を珍獣を見るような目で見てきた。すごく失敬だよね。

 ちなみに魔物溜というのは、その場所に歪みが出来て入ってきた人間を倒すために魔物がどんどん湧いてくる現象だと言ってくれたよ。

 地上版のモンスターハウスのようなものなんだろうね。

 うん? モンスターハウスって何かって? 簡単に言うと、ダンジョンの広い部屋で魔物がどんどん湧いてくるって現象だね。

 ダンジョンだから逃げ場は無しっていう、最悪な罠だよ。

 ああ、そんなに怖がらないでも良いじゃない。え? 彼女は他の人たちと同じように歩いていったのかって?

 そうだったら良かったんだけどねぇ……。


「ほら、早く街道に戻って、王都に向かうんだぜお嬢様」

「お嬢様かは分からないけど、初めてのモンスター戦……心ときめかない人が居るものですか? いいえ、居るはずがない!!」

「え、あ――ちょ、ちょっ馬鹿野郎! 丸腰で死にに行く気かよ!!」

「あ、そういえば丸腰だったんだ……オレ」


 冒険者が止める間も無く、彼女は魔物溜へと飛び込んだ……のは良いんだけど、丸腰だってことに気がついたんだよね。

 正直、装備といえる装備なんて、冒険者の服(女性用)と皮のブーツだけだよ?

 ……セーブ&ロード画面があったら、即座についさっきに戻りたいと思うね。ん、こっちの話、こっちの。

 で、魔物溜に足を突いた瞬間、空気が変わったって言えば良いんだろうね。

 のどかな感じだったのが、戦乱巻き起こるって感じになったんだよ。

 そう思っている彼女の目の前で、空間が歪んでプルプルとした青い塊がひとつ姿を現したんだ。

 ボールほどの大きさで青くて透明でプルプル震える物体。ぶっちゃけスライムだね。

 初心者の経験値稼ぎの元とも呼ばれるモンスター(魔物)だ。

 そんなスライムにときめいていたのだけど、考えても見て欲しい。

 水が詰まったボールが身体目掛けて体当たりをしてくるんだよ。当たると痛いだろうね。

 どうするべきか? 避けるか、防御するか……そんなことを考え始めた瞬間、スライムは彼女へと飛び掛ってきた。


「う、うわぁっ!?」

『ピ――ギィ』

「え……えー……?」


 飛び掛ってきたスライムに避けることが出来ず、彼女は両腕を前に出して痛いと思いつつ、ガードしようとしたんだ。

 すると、どういうことだろうか……飛び掛ってきたスライムは両腕に当たると共に、ぶちゅんと弾けてしまったんだよ。

 ちなみに弾けて飛び出たスライムの粘液は顔に掛かってかなりベトベトしたね……ちなみに変に甘い味だったね。

 何が起きたのかはさっぱりだったけど、彼女は飛び掛られたことの恐怖に少し混乱し始めたんだ。

 だけどそんな彼女を笑うかのように……他にもモンスターが姿を現してきたんだ。

 甘い考えで居た自分を心の中で叱りつけながら、彼女は逃げようとしたんだけど周囲は魔物に囲まれていたんだ。


「うわ! く、来るなっ、来るなぁぁっ!!」


 怯えた声を上げながら、彼女は近場にある物を適当に掴んで、モンスターがいる方向へと投げつけていった。

 それは石ころだったり、スライムだったりしたけど、構わずに彼女は投げた。

 瞬間、ヒュゴッ――という風切り音が響き、少ししてから物凄い風が突き抜けていった。

 いったい何が起きたのか、彼女は恐る恐る、音と風がしたほうに視線を向けてみた。

 すると、一直線に地面が抉れて、その遥か先に連なっていた山の一部も抉れているのが見えた。

 どういうことかと目を白黒させている彼女だったけど、直後頭の中で鐘が鳴る音が響き渡ったような気がした。


「お、おい、お前大丈夫かよ!? いったいそこで何があったんだっ!?」

「え――えーっと……わ、わかりません」

「中で何かあったのは確かなんだろうけど、中の様子は分からないから入ったお前が頼りだったんだけどな……」


 飛び込んだ彼女を心配してたのか、先程の冒険者が近づいてきたが驚いた表情をして彼女に事情を問い質した。

 けれど、正直なところ彼女も何が起きたのかなんて分かるわけが無いので、苦笑しつつそう言うしか出来なかった。

 そして冒険者の言葉を聞く限り、魔物溜で何が起きているかは外からは見えないようだった。

 状況的に考えると、これを起こしたのは彼女のはずなので見えなくて正直助かったと思う。


「まあ、無事なら良かったじゃねーか! ほら、世間知らずなお嬢様はとっとと王都に逃げ込むんだな!」

「うっ……いろいろと否定できないのが悔しいところだけど……まあ、立つことにしますか」

「ああそうし――って、ちょっと待ったっ!!」

「え? どうしたの?」

「お、お前の服、ちゃんと見ろよ! ボロボロになってるから!!」

「お、おぉ……。ここはとりあえず、きゃ、きゃーー」

「えっ、なんで棒読みなのっ!?」


 悪態を吐く冒険者だったけど、丸腰一般人みたいな彼女を見たらそう言うのは当たり前よね。

 で、立ち上がった彼女だったんだけど、突然冒険者が叫び声を上げて両手で顔を隠した。理由は簡単だった。

 物凄い風を浴びた際に彼女の服がボロボロになっていたんだ。

 どれくらいボロボロかって? 簡単に言うと、冒険者の服の前がボロボロに破けて下着がチラチラ……というかかなり見えているくらいボロボロだった。

 この世界に来る前まで彼だったからか、彼女は恥かしい気分はあまりしなかったが……とりあえず、空気を読んでかなり雑に悲鳴を上げたんだ。

 本当、見事な名演技って感じにね。


 これが、彼女の初めてのモンスターとの戦いだった。

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