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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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トールの特訓・2

※視点はウーツです。

「ん~~~~~~……っ!!」


 わしの前で、わしの可愛い孫であるトールが腕を前に出して頬を膨らませながら力んで、わしが教えたスキルを使おうとしておった。

 最後に会ったのは随分前じゃったが、あのころは愛らしいだけじゃったが……今のトールは本当に超絶最高に可愛く愛らしいんじゃ。

 この発言に孫馬鹿とか言う奴がおったら来い。わしが直々に潰してやるから。


「は、あ……っ!」


 可愛らしい声と共に、トールの突き出した腕の先から透明な甲羅型の障壁が姿を現した。

 それを頑張って維持しながら、トールはわしのほうを見ると……精一杯に力を使っているから喋れない代わりにどうかなっとわしをキラキラした目で見つめおった。


 …………うむ、さすがわしの孫! 超可愛い!!

 この一生懸命にしておる姿が本当最高なんじゃー! それに、上手に出来たでしょって目で言ってる姿も最高じゃ、絵に取っておけるならば取っておきたいわい!!

 とと、興奮するのも良いが、トールの出した物をちゃんと見ることにせねばな。


「ふむ……、よく出来ている……ように見えるのじゃが、広げすぎている分、強度が脆くなっておるようじゃぞ?」

「ふぇ……っ?!」


 わしがそう言うと、上手に出来ていたと思っていたトールの表情が曇って、今にも泣きそうな顔をしおった。

 しかも、声を出したからかトールの展開した<クリスタルシェル>は消えてしまった。

 し、しもうた! わしの馬鹿! わしの馬鹿! トールを悲しませてどうするんじゃい!!

 何とか、何とかふぉろーをせねば……!


「そ、そのように悲しい顔をするでない。トールよ、きっとその<クリスタルシェル>は仲間を護りたいと思ったからそれだけの大きさになったのじゃろう?」

「う……ん。わた、し……護ることしか……できない、から……」


 トールは恥かしそうにしながらも、わしにそう言った。

 …………ほんっとうに愛らしい上に優しい孫じゃあ……。

 じゃから、わしは本当にこの子を甘やかしに甘やかしておったんじゃよなあ。

 けれど、悔いは無いわい。じゃってなあ、舌足らずでわしの服の袖の端を掴んで……「おじー……ちゃん」って呼んでくれるんじゃぞ? ジジイ冥利に尽きるじゃろ!


「おじー……ちゃん?」

「ほら、今じゃって……。む、むぅおっほん! な、なんじゃ?」


 危ない危ない、トールの前ではわしは優しいけど厳格なお爺ちゃんでいる……つもりなんじゃが、なっておる……よなあ?


「あの、……ね。広げすぎてる……って、言って……たけど、小さかったら、大丈夫……なの?」

「ふむ……そうじゃな。小さかったら面白いことが出来るんじゃよ。例えばじゃ」


 そう言いながら、わしはトールが発動させた<クリスタルシェル>を同じように展開させた。

 ただし、大きさはトールが展開していた物の半分よりも小さい物としていた。

 けれど侮る無かれ、小さいがその代わりに強度は折り紙つきじゃ。


「じゃが、何か放ってもらわないといけないが……わしもトールも攻撃は増えてじゃから……。多分見ておるじゃろうから言ってみるかのう。神よ、わしに向けて四方八方から普通の魔族が放つほどの威力と速度の《火弾》を何発か撃ってもらえんかのう?」

「え……!? お、おじー……ちゃん、そんな、ことした……ら、当たっ……ちゃうよ?」

「大丈夫じゃよ。っと、来たようじゃな。……どれ、トールや、ちょっと離れてみておるがよい」


 心配するトールを離れさせると、わしは優しく微笑んだ。

 ああ、心配するトールもかわええのう……。

 そう思っておると、わしの周囲へと《火弾》は放たれた。

 ふむ、この威力じゃと……命中すれば、甲羅が焦げるのう。……まあ、当たれば。の話じゃがな。


「それじゃあ、始めるとするかのう。トールや、小さくて心許ないように見えるじゃろうが……これはこれで便利なんじゃよ? 小さいから移動にも便利じゃし、それに……」

「うわぁ……、うい、てる……?」


 わしが手を動かすと小型の<クリスタルシェル>は空中を動きだし、わしへと向けられておった《火弾》の一番近い物に防いだ。

 魔法の防御に特化した<クリスタルシェル>は《火弾》を霧散させると、次に近づいてくる《火弾》の前へと移動し……防ぎ、霧散させていった。

 そんなわしの姿を、トールは目を輝かせながら見ており……、内心では本当にわしは喜びに踊りたくなったが必死に堪えた。

 ふむ、ついでにじゃ……わしの凄いところをもう少し見せるとするかのう。

 《火弾》を全て霧散させ終えたわしは、<クリスタルシェル>を消した。


「どうじゃ、トールよ。大きい障壁は仲間たちを一度に守れることが出来るじゃろう。じゃが、小さい障壁にもこんな使いかたがあるんじゃよ」

「う、ん……! お、じー……ちゃん。ほんとー……に、凄い……っ!」


 キラキラとした瞳を向けられて、わしは嬉しく思った。

 ちなみにこうやって無数の魔法を放たれた上に接近戦を仕掛けられたりしたら、今の方法で魔法を防ぎつつ盾を持って攻撃を防ぐという方法を行うというのが良いと思うのじゃが……それはトールが考えることじゃからわしが口出しするべきではないじゃろうな。

 そう思いながら、わしは頑張って障壁を小さく展開しようと、身体をプルプル震わせながら頑張るトールを微笑ましく見た。


 …………ふう、たとえ今が仮初の時間じゃとしても、これは……感謝するべきじゃろうな。

 死の直前にわしはトールにああするべきだった。こうするべきだったと後悔した。

 そんな中で、魔族の神ではないが他の国の神がわしにこうして時間をくれた。

 じゃから、今はこの手でトールに戦う……いや、守るための力を教えることが出来る。

 世間ではアリスというゆうしゃに殺されたと言われているが、本当の原因は……。きっと、この子はわしの死の真相を知ることになるじゃろうな。

 既に……奴ら(・・)に敵対したのじゃから。


「おじー、ちゃん……出来た……よっ」

「おっ、おお、いい感じに出来ておるのう。じゃったら、魔法対策を終えたら今度は物理防御に特化した障壁のスキルを教えるとするかのう」

「う、ん……! 教えて、おじー……ちゃん」


 小型の<クリスタルシェル>を展開させながら満面の笑みを浮かべるトールを見つつ、わしはトールへと歩み寄るのじゃった。

 ああ、本当に……幸せな時間じゃあ……。

まったく出番が無く、本編で即座に死んだお爺ちゃんですが、実は孫馬鹿だったりします。

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