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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
395/496

養殖場

※視点はハエやろう(アーク)です。

「も~ぅしわけ、あ~ぁりません。その場所への移動は~ぁ、時間が掛かるの~ぉで暫く養殖場で時間を潰して貰えないで~ぇしょうか~ぁ?」


 苛立ちながら、オレ様は大げさな感じに謝るドウケを見てイラッとした。

 ああくそ、イライラするぜぇ……!

 けど、オレ様は理知的な四天王なんだ。だったら、この下僕にもたまには優しいところでも見せたほうが良いよなぁ?


「そうかよ。……で、移動に時間が掛かるって言うとどれぐらい掛かるんだ?」

「そうで~ぇすね。余裕を見て、2週間……といったところで~ぇしょうか」

「2週間も掛かるのかよ……。くそっ、面倒臭いなぁオイ!」


 冷静でいよう。そう思ったが、つい舌打ちをしてオレ様はドウケを見下した。

 けれどドウケはオレ様たちに頭が上がらないらしく、ヘコヘコと頭を下げるだけだった。

 本当、使いやすいコマだよなこいつは……!


「しかたねぇな。じゃあテメェが言ったように養殖場に行って来るか。それに一番欲望に忠実な奴にこれでも渡してやりゃあ、あの裏切り者に舐めた口聞かれた腹も収まるってもんだ」

「では~ぁ、アークさまは、養殖場に一度行くということで宜しいでしょうか~ぁ?」


 そう言って、オレ様はあのクソゆうしゃの居場所が書かれた紙と一緒に淫売の部屋から盗って来た物を入れた袋を持った。

 そして、その言葉を聞いたドウケはそう口にしたから、オレ様は肯定の意味で頷いた。

 それを見届けたドウケは、オレ様へと恭しく頭を下げると《転移》を発動させた。


「それで~ぇは、養殖場へと移動いたしま~ぁす。気持ち悪くな~ぁるのは仕様で~ぇすので、お気になさら~ぁず」

「へいへい、いつもの口上ご苦労なこって」


 ドウケの言葉を聞きながら、オレ様はドウケの《転移》によって養殖場へと移動を始めた。

 漆黒の転移空間にオレ様の身体は呑み込まれ、ほんの少しの時間ですぐに養殖場へと転移を終えた。

 ちなみに転移先は養殖場となっている場所の城の中だったりするが、別にかまわねぇだろう。


「それで~ぇは、移動の準備が整いました~ぁら、呼びにきま~ぁすね」

「おーけーおーけー、わかったわかった」


 ドウケが戻っていくのを見ながら、オレ様は養殖場の出来具合を見るために歩き出し――っとそうだそうだ。忘れる所だったなぁ。

 あれは完全に動けなくなっているんだから、様子を見てやらねぇといけないんだった。

 それを思い出して、オレ様は転移した城の背後の玉座を見た。

 そこには瘴気に満たされた男が座っており、オレ様をすっげぇ睨みつけていた。


『アAあァァaaaァ、きさMAァ――!』

「ぃよう、気分はどうだい王様ぁ? おいおい、そんな風にオレ様を見るなって。元々はテメェの野心が招いた種なんだからよぉ……クヒヒッ」


 そう言いながら、オレ様は人間の国の王をせせら笑ってやる。

 っと、肩のほうに良い感じに出来てやがるなぁ。他にもいい感じに出来てやがるぜ。

 そう思いながら、オレ様は睨み付けている人間の国の王へと近づくと、瘴気に汚染され過ぎた身体から盛り上がる珠を取るために手を伸ばした。


「おっと、幾つか出来上がってるみてぇだな。ってことで、取らせてもらうぜぇ」

『――っ!? ク、くRUな……くルNAァ――――あ、アGYAあああああぁぁぁぁアアア!!!!?』


 すると、睨み付けていた王は前に取られたときの恐怖が甦ったのか怯え始めたが……そんなことは知ったことじゃねぇ。

 というわけで、オレ様は王の肩に手を突っ込むと周りの肉ごと珠を取り出した。

 直後、王の笑えるような悲鳴が洩れたが、まだまだ苦しむべきだろう? ケケッ。

 肩から珠が剥がれるときに、グジュリとヘドロのような感触と共に瘴気塗れの腐り切った肉が珠にこびり付いていたが……オレ様はその状態の珠を口へと入れた。


「あ”~……うめぇうめぇ。この味がたまらねぇんだよなぁ」


 この腐り切った臭い、腐った肉の食感……本当、たまらねぇ。

 笑みを浮かべながら、オレ様は珠にこびり付いた腐肉を舐め取るとひぃひぃと荒い息を吐く王を見た。


「しっかし、本当にテメェは馬鹿だろ? どうして自分がこんな目にって思ってる顔をしてたけどよぉ、全て自業自得だろぉ? 周りの声をまったく聞かなかったんだからよぉ」


 ま、そういう風に仕向けたのはオレ様だけどなぁっ!

 けどまあ、オレ様は馬鹿にして言ってるんだけど、この王まったく耳に入っていねぇな。

 仕方ねぇな。じゃあ、何時ものように良い夢を見させる言葉を言ってやるよ。


「王様よぉ、テメェはオレ様たち魔族に負けた。だけどその代わりに、この養殖場の王としてやっていけるんだ。よかったなぁ?」

『お、ウ……?』

「ああ、そうだ。良かったなぁ王様よぉ。この世界はこの国だけだ。だったら、この国の王であるテメェは唯一無二の存在だ」

『YUIイつ……ム、NI……? フ、フHU、ふフ……ふはははHAハは……!』

「ま、こんなもんだろう。ってことで王よ。また良い珠を頼むぜぇ」


 頭がおかしくなって笑っている王は無視して、オレ様は城の外へと歩き出した。

 ちなみに廊下を歩いていると、王ほどではないが頭がおかしくなっている城の兵士たちが涎を垂らしながら、フラフラと徘徊していたが何時も通りだから気にはしねぇ。

 だが、今から会う奴。……一応この養殖場の管理人として従えてやった奴だが……そいつはこのオレ様でさえも頭が痛くなるような奴だったりした。

 正直、邪神様に認められた魔族では無いにも関わらず、ただの獣人のはずなのにこの瘴気に満たされた養殖場で狂っていないどころか逆に輝き始めている奴は……何というか嫌悪感しか生まれない存在であったりする。……ま、餌を与えておけば気色悪い奴だが特に問題は無い。

 そう思いながら、オレ様は暫くぶりの養殖場の街中へと続く扉を開けた。


「………………うへぇ、何だよこりゃあ……」


 そう呟いたオレ様の顔はきっと歪んでいるだろう。

 何故なら、街中を歩く男たちはまだ良い……、良いのだが。問題は女たちだった。

 特に見た目が若い女たちは管理を任せた獣人の趣味なのか、布面積が少ない服やら下着姿で歩かされていやがった。

 ……オ、オレ様でさえも、それはしないだろう。ついでに言うと、女の身体の良し悪しなんざ分かる訳が無い。

 そう思っていると、オレ様の立つ方向へと近づいてくる何かが見えた。……いや、何かじゃねぇな。

 そいつは土煙を上げながら近づくと、跳び上がってオレ様の前へと降り立った。


「ぶひひ、お久しぶりでござるなアーク氏!」

「あー……そう、だなドブ野郎」

「ぶひっ、辛辣な言葉でござるなぁ! それで、今日はどういう用件でござるか?」

「ただの時間潰しだ。暫く養殖場も見ていなかった。というのもあるがなぁ」

「そうでござるかー……くんくん、何だか素晴らしい匂いがするでござる!!」


 弾力性のある岩のような体型の獣人、ドブはオレ様好みでありながら嫌悪感を抱かせる笑みを浮かべつつオレ様に挨拶をして近づくと……手に持った袋に興味を示していた。

 だから、オレ様は袋をドブへと差し出した。

 それを迷わず受け取ったドブは、袋から中身を取り出すともろ手を挙げて喜びやがった。


「ぶひゃう! これは良いアダルトな下着でござる! くんかくんかすーはーすーはー……うむ、これを穿いていたのは狐系獣人のオッパイが豊満な女性でござるな!!」


 そう言って、ドブは盗んできた下着のにおいを嗅いだり、ペロペロと舐めたりちゅーちゅーと吸ったりしていた。

 ……こいつは、本当にいかれてやがるぜ。別の意味にな……。

 そんな風に思いながら、オレ様は養殖場を見回るための算段を考えることにした。


 ……とりあえず、この最悪な時間は暫くの間だ。それが終われば、あのクソムカつくゆうしゃを今度こそ始末出来るんだ。

 だったら、これはそれまでの我慢の時間ってことだよなぁ?

 ああ、あのクソゆうしゃの最後が目に浮かぶようだぜ……! クヒヒ、クヒヒ、クヒャヒャヒャヒャ……!!

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