満たされる器
短めです。
くらい、サムイ、ここは……ドコ?
オレは、だれ……?
わから……ナイ。ワカ……らない。
そんな、ナニモわからない。
オレは、いったい……ダレなんだろう……?
ひとだった? むしだった? もんすたーだった?
わからない、ワカラナイ、わからない……。
『し――ょ――う』
そんななか、ソトからこえがかけられた……ようなきがした。
なんだか、すごく……なつかしいような……こえ。
そうおもいながら、ゆっくりと、めをあけると……どこかでみたことがある、獣人がオレをみていた。
だれ、だろう……? おもい、だせない…………。
『あに――――き』
獣人のとなりに、いる少女が……オレをそう、呼んだ。
どこかで、見たことのある……しょうじょだった。
あれ、は……、だ……めだ。おもい、だせな――ちが、う……あ、れは……オ……レの…………。
思いだそうとしたしゅんかん――、辺りが……もえさかっていた。
そして……オレは、何かが圧し掛かっているのかまったく、身動きが取れなかった……。
もえる、燃える、モエル! 熱い、苦しい……だれか、だれかたすけ――。
オレは無我夢中に、手を動かし誰かに助けを求める……。
だけど、その手は……誰にもにぎられることはは――。
『大丈夫……、アタシが……助けるから……』
不意に、そんな声が聞こえた。……そして、手に伝わる……手の温度。
その温度を感じた瞬間――何も無かった空間に、オレの手がアタシの手を握っていた。
…………温かい。そして、すごく……安心する。
この手は、いったい……だれだろう?
オレは、その手の人物が気になった瞬間――、手の先に肘が浮かび上がった。
……違う、浮かび上がったのではなく、見えるようになってきたんだ。
これは……前にもあったような気がする……。
……いや、あった。これは、あった。
アタシはそれを、思い出した。――直後、頭の中にそれまでの記憶が思い出されていった。
すると、オレは人としての形を取り戻した。
ひとつになっていたオレたちは互いを見て……微笑みあった。
「……ひさしぶり、だな」
「はい、ひさしぶり……です」
オレが彼女を抱き締めると、アタシは彼を抱き締めた。
トクン、トクン……命の音が聞こえる。
重なり合う音、別つことが無い音……その音を感じながら、オレは再び一つになるまでの一時を感じていた……。
●
「…………始まったようですね」
彼女たちを特訓に送り出してから、私は地下の施設に置かれた私が創ったアリスさんたちの器へと、魔力が満たされるのを見ていました。
……あの獣人の国の戦いのさいに、アリスさんと向こうの世界から連れて来た魂が混ざり合ったのを見ていた私でさえも、顔を引き攣らせたくなる程の魔力の高まりを感じていると……器に魔力が満たされたのか、吸収するのをやめたようです。
と言うか、神に匹敵するほどの魔力を内包するというのは、本当に洒落になりませんね……。
そう思いながら、器を見ていると……顔の無いマネキンだった物が段々と輪郭を取り始め……、新たな形へと変化していくようでした。
「……生まれるのは、人か……それとも神か。どちらでしょうね…………」
やはり異常すぎる魔力に私はポツリと呟きながら、それを見ます。
……まあ、こういう風に見ているのも時間潰しに良いですし……ね。って、今この暇人がって思いましたか?
ええ、暇人ですよ! サリーさんたちの特訓は基本的には他の神が制御しているんですからねぇ! 一応、私だって神使が居ますよ? 居るけれど、もう殆ど人ですから彼女たちの力を少しだけ高めることしか出来ませんよ!
うぅ……威厳があったころの私はどこに行ったんでしょうね……。
…………え? 無いですって? ありますよ、あるはずなんですからね!!
「……はぁ、疲れているんでしょうね。なんだか変な幻聴が聞こえて、返事をしているんですから……」
とりあえず、全て幻聴と言うことにして、私はアリスさんが如何変わるのかを見続けていました。