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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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3人娘の特訓

※ヒカリ視点です。

「ま、まだ落ちるのぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」


 真っ暗な空間をボクは落ち続けているけれど……、かれこれ1時間以上経っているように感じられた。

 ……いったい何処まで落ちて行くのだろうか? そんな疑問を抱きつつ、ボクはどうにも出来ない状況をどうするべきか悩んでいた。

 ……悩んでいるんだけど、普通に無理だよね……無理!!


「か、神様ーーっ!? いい加減、何処かに落ちるか出るかぐらいして欲しいんですけどーーーーっ!!」


 もしくは、誰か話し相手を増やしてっ!!

 そんな風に思っていたボクだったけれど、ボクの呼び掛けに応えてくれた……と言えば良いのか分からないけれど、耳に聞きなれた2人の声が聞こえた。


「きゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「おっ、落ちます……! 落ちてますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

「えっ!? そ、その声……ルーナにシターッ!?」

「え? ヒカリちゃんとシターちゃん!? ついさっきまで一人で落ちてたのにどうしてっ!!?」

「た、助けてくださいライト様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 聞こえた声に驚くボクだったけれど、暗闇に目が慣れた……というよりも、薄ぼんやりと2人の姿が輝いて見えたため、2人が同じように落ちているのが分かった。

 ……ちなみに、見えたから仕方ないって思うんだけど……下から上へと風が来ているからか、2人のスカートは捲くれ上がって下着が丸見えとなってしまっていた。

 な、何ていうか……同じ女性だけど、恥かしい気持ちになるね……。

 左に見える紫のルーナ姉の大人っぽいパンツとか、右に見えるシターの子供らしい白パンツとかに頬を染めつつも……ボクはズボンで良かったって思ってしまっていた。

 なんて思っていると、下のほうに大きな光が見えたのにボクは気がついた。多分出口だと思う。


「ふ、ふたりとも! 下、下のほうに出口っぽい場所があるよっ!!」

「「えっ!!」」


 ボクの言葉に、2人は下を見て……安堵したような顔をしていた。

 ……けど、いったい何処に出るんだろう…………。空中とかじゃ……無いよね?

 そんな不安を少しだけ抱きながら、ボクら3人は落ちるスピードが徐々に遅くなっていくのを感じながら……その光の中へと降り立った。

 光の先は落ちる……と思っていたのだけれど、その光が出口であり着地点だったらしく……落ちること無く、ボクたちはそこへと降りたった。


「……えっと、これって…………?」

「しばらく待っていろ、ってことかしら?」

「っ~~~~…………あ、あれ?」


 首を傾げるボクとルーナ姉、ちなみにシターは落ちるかも知れないと思って目をギュッと閉じていたみたいで、何時まで経っても落ちないので不思議そうにゆっくりと目を開けていた。

 ……いったい、どういうことだろうか? そう思っていた瞬間――ボクたちの足元の光は弾けた。


「「「――――ッッ!!?」」」


 その光に目が耐え切れず、目を手で覆ったボクたちだったけれど……目蓋越しに光はすぐに収まったのを感じ、ゆっくりと目を開けた。

 すると……、さあ……っと優しく心地が良い風がボクたちの頬を優しく撫でた。

 いったいどういうことかと思いつつ、開けた目が光を見てぼやけていたのが徐々に治るのを感じ……、見えた周囲の景色にボクは唖然とした。


 そこは、夜の草原だった。

 けれど空には無数の星が光っているために灯りなんて必要が無いように思えた。……いや、灯りは逆に不必要かも知れないとさえ感じれた。

 けれど星だけならまだ良かったかも知れない……、何故なら夜空には星以外にも輝くものがあったのだから。


「えっと……なにあれ?」

「何って……月、よねぇ?」

「えと、太陽……も出ていますよね?」


 そうなのだ。ボクたちが見ている景色には、ありえない光景が広がっていたのだ。

 瞬くほどの星と共に綺麗な満月が輝いているのは分かる。……なのに、そのすぐ近くでは真っ赤な太陽が光り輝いていたのだった。

 その異常ともいえる空をボクたちはただただ見つめていた。

 ……普通、こんな異常な空間に来たら何かがあるとか思うのが当たり前のはず。それなのに、そんな気にならない……それどころか、これは元々こうであるのが正しいとさえ思えてしまっていた。

 そう思っていると……。


『『『やって来た。やって来た』』』

『……漸くやって来たか』

『待っていたぞ、お前たち!!』


「「「ッ!?」」」


 空を震わせながら、そんな声が周囲に響き渡った。

 その突然の声に、ボクたちは驚き……目を見開いた。


 ――こ、この声ッ、いったい何処からッ!?


 驚きつつもボクは、周囲に何かが居ないかを探知し始めるのだが……声の主と思しき存在は何処にも発見されなかった。

 では、魔術的な何かかと考えて、ルーナ姉を見たが……ルーナ姉も分からないらしく、首を振るだけだった。

 声の正体がわからず、不安になり始めていると……不意に胸の奥が熱くなるのを感じた。

 そして、その感覚を感じているのはボクだけじゃなかったらしく、ルーナ姉とシターも胸を押さえ始めているのが見えた。


「え? なに……これ……?」

「むねが……くる、しい…………?」

「肉体じゃ、なく……魂、から何か……でそ、うです……?!」


 耐え切れない苦しみを味わっていると、周囲に再び声が響き渡った。


『『『貰うね、貰うね。ちょっと力を貰うね』』』

『このままでは喋り辛い。少し借りるぞ?』

『お前に貸し与えた物、一度返してもらうぞ!!』


 その声が、ボクたちの耳に届いた瞬間――身体は耐え切れずにあお向けのような体勢になって倒れてしまった。

 直後、抑えていた胸の間から光の珠……ううん、光が珠のような形になった物が、空へと飛び上がっていくのが見えた。

 そして、光はある程度の高さまで上ると、形を取り始めていった。そして、最終的に……人の形をした何かへと変わっていった。

 ただしその姿は……。


「え? ボ、ボク?」

「わ、わたしっ!?」

「シ……シター、ですかっ!?」


 そう、ボクたちと良く似た姿をしていたのだった。

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