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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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キュウビの遊戯

一方そのころ、敵のほうでは……。的な感じに挟んでみます。

「ふんふんふふふ~ん……♪」


 点々と等間隔に設置された灯りが揺らめく通路を、わしは鼻歌交じりで歩いておった。

 ん? 何故、こんなにも機嫌が良いかじゃと?

 当たり前じゃろう? 何故なら、ある集落とそこに隣接する集落の中が徐々に悪くなっておるのじゃから。

 元々は、親を同じとしていた集落の長たちじゃったが、わしが耳元で声を掛けることで……「まさかアイツが……」とか「そんなはずが無い! ……いや、でも……」などと言い出す始末じゃ!

 本当に愉快じゃわい! あと2回ほど疑惑を抱かせれば、きっと互いが血を見ることになることじゃろうな。

 そして、疲弊し……理想を言えば、どちらかの集落の長が殺されたときに耳元で「本当に信じていないからそうなったんじゃよ」と言って、絶望の悲鳴を上げさせたいわい。

 いやいや、それとも互いに致命傷を与えて死に掛けてるところに、わしがお主らの信頼という名の歯車を壊したと暴露してやろうかのう。

 ああ、考えただけども、尻尾がムズムズするわい……クフフ。

 そんな風に楽しみながら歩いておると、柱の陰に隠れていたのかわしの前に立ち塞がるようにボロ布を頭からズッポリと被った人物が現れおった。


「いよぉ、楽しそうにしてるじゃねぇかよ。この裏切り者の淫売が」

「ん? 今何か声が聞こえたような気がしたが……気のせいじゃな。何せ、目の前に居るのはただの小汚いハエなんじゃからのう」

「テメェ! 舐めてんじゃねぇぞ!! 聞いてんのか、おいっ!!」


 挑発されたから仕返したら、そやつは勝手にぶち切れおった。

 ま、ハエなのじゃから単細胞なんじゃろうな。

 そう考えながら、わしは憤慨するハエ……もとい、アークを見た。……というか、等身大のハエの分際でアークという大層な名前とは……普通に名前負けしておるな。

 そんな風に残念な物を見るようにアークを見ておったのじゃが……、吠えるだけ吠えて血の気が下がってきたのか、荒い息を吐きつつもわしを見ながら鼻で笑いおった。


「フンッ、まあいい……おい、テメェ。あのクソムカつくゆうしゃの居所を知ってるんだよな?」

「うむ、知っておるぞ? それがどうしたのじゃ?」

「だったら、今すぐオレ様に教えやがれ」


 ニチャァと口が開かれ、粘性のある唾液がそんな音を立てて……不快感が上がった。

 じゃから、わしははっきりきっぱりと答えることにした。


「断る」

「…………はぁ? テメェ、どういうつもりだ? テメェは新入りなんだから、先輩であるオレ様の命令に答えろよ。あぁん?」

「先輩だの後輩だの、お主が言うと滑稽にしか見えぬな」

「……少し、身体に教えてやら無いと分からないみたいだなぁ……?」

出来るものなら(・・・・・・・)、やってみせよ。ただし、吠え面をかいても知らぬがな?」


 殺意を込めた目でわしを睨みつけるアークへと、わしも睨み返すと奴はビクリと震えおった。……雑魚め。

 とりあえず、上下関係という物をその身に教えてやろうか? ……いや、待て。面白いことを考えたわい……。

 ククッ、如何転ぶかは分からぬが、本当に……本当に面白いことを考えた。

 わしは必死に笑みを浮かべないように、自制するとアークを睨みつけ……鼻で笑った。


「な、何だぁ……? やる気か?」

「いいやぁ、わしも忙しい立場なんじゃ。じゃから、お主の相手をしている暇なぞない。ではな」

「――ッ!! テ、テメ……チクショウ!!」


 軽くせせら笑い、わしはその場から離れて行った。

 ……が、少し移動してから独り言のように小さくも聞き取り易いように呟くことにしたのじゃ。


「さぁてと、アリスどもの居場所を紙に書いて自室に置いてあるが、必要が無くなったことじゃしそろそろ処分するとするかのうー……」


 そう呟いて、しばらく耳を済ませてみると……案の定、馬鹿が釣られおった。

 しかも、「ケケッ、アイツ馬鹿だろ。……あぁ、邪神様に尻尾を振ってる時点で馬鹿か」と言うわしを馬鹿にするような声が聞こえた。

 ……とりあえず、絞め殺してやろうかと思うが、今は堪えることにして先にすることをするか。

 そう考えて、わしは呼べばすぐ来る人物を呼び出すことにした。


「おい、ドウケ。用件があるから、すぐに顔を出すが良い」

「は~ぁいはい、ど~ぅかしましたか~ぁ?」


 わしがそう言うと、本当何処で待っていたのかは分からぬが、ドウケが何処からとも無く姿を現しおった。

 とりあえず、何処に居たのかは気にせずにわしは用件だけを伝えることにした。


「ドウケよ。多分近いうち……早くて今日にでも、アークの馬鹿がお主に翼人の島に連れて行けと言うと思う」

「翼人の島で~ぇすか? あそこって、空間が異常で行くのが面倒なんで~ぇすよね~ぇ」

「じゃろうな。じゃから、とりあえず3週間を目安にでも通れるようにしておいてくれ。それぐらいの時間があれば通れるじゃろう?」

「それは勿論、大丈夫で~ぇすよ」


 独特の喋りかたをしながら、ドウケはわしへと語り掛ける。

 それを聞きながら、わしは満足そうに頷く。


「うむ、それならば良いじゃろう。とりあえずは……頼まれたら、今の理由ですぐには無理とでも言って『繁殖場』にでも連れて行って様子を見させれば良い」

「お~ぉう、それはい~ぃですね~ぇ。とりあえず、分かりました~ぁよ」


 大げさな仕草でドウケはわしに返事を返すと、来たときと同じように何時の間にか居なくなっておった。

 ……本当、不思議な存在じゃな。いや、油断ならぬ存在……か?

 そう考えながら、わしはとりあえずアークの馬鹿が荒らしているであろう、自分の部屋へと少し時間を置いてから向かうことにしたのじゃった。


 …………まあ、結論から言うなら予想通りと言うべきか、分かり易いように机の上にアリスが居る翼人の島の情報を書いた紙を置いていたというのにアークはわしの部屋をぐちゃぐちゃにしていきおった。

 とりあえず、今度見たら殴り飛ばすことを決意しつつ……わしは部屋の片づけを開始した。……のじゃが、どういう訳か、いや犯人であるアークがわしの下着(パンツ)を数枚ほど盗んでいったようじゃった。

 ちなみにデビルカイコの糸で作った邪絹製の黒色の大人系の横がスケスケの下着だったりするのじゃが、穿くのはわしとか、若作りのマーリアぐらいじゃったりする。


「……いったい何に使うつもりなんじゃろうなぁ……」


 わしは軽く溜息を吐きながら、わしが手を掛けている集落の最後を見届ける前の部屋の掃除を開始するのじゃった。

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