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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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トールとフェニの特訓

「ん……、ゅぅ……」


 うとうととしながら、わたしは丸いこうらの上で、同じように丸まる。

 とくん、とくん……って、わたしの生きている音、こうらから聞こえる優しい音……。

 温かい、とっても温かくて……もう感じることができなくなっていた……わたしのだいすきな音。

 だけど……これは夢、げんじつだとしても……夢と同じ……起きないといけない。

 そう思っていても、わたしは……おじーちゃんとすごした日々を、簡単にはわすれることなんて……出来ないの……。


「……トールや、そろそろ起きて特訓をしようか」

「……や、ぁ…………」


 こうらの下から聞こえる、優しいこえに……わた、しは……拒否をする。

 だ、って……まだまだ、わた……し、甘えたいんだ……もん。

 そのこえを、聞いた……おじー、ちゃんもうれしいのか、それとも困っているのかは……わからないけど、ふう……。って溜息を吐いた。


「そうか……じゃったら、もう少しだけ……じゃぞ?」

「ぅ……ん」


 そう言うと、わたし……はおじー、ちゃんのこうらの上で……思う存分、甘えることに……した。

 そん……なわた、しをおじー、ちゃんは……落ちないように、ジッと動かないで……いてくれた。


 しばらくだけど……、うん……っとおじー、ちゃんに甘えたわた、しは……ゆぅっくりと、おじーちゃんから……降りた。

 する、と……おじー、ちゃんもこうらのなか、から……ゆっくりと顔をだし、て……立ち上がった。

 たちあがった、おじーちゃんは……本当に、ほんとうにでかい。だけ、ど……さいごに、会ったときと、比べたら……わた、しもおっきく……なったから、首を目いっぱい……伸ばさなくても大丈夫、になっていた。


「ほんとぅに、本当に久しぶりじゃなあ……。最後に会ったときよりも、ずぅっと……大きくなったんじゃな」


 そう言って、おじー……ちゃんは、わたしのあたまを……やさしく、撫でてくれる。

 おっきな手には、優しさが……いっぱい詰まっていて、すごく……うれしい。

 けど、気になったことが……あった。


「おじー……ちゃん。わた、し……いまは、じゅーじんみたいな……姿だよ? なのに、わかる……の?」

「わかるとも……、トールはわしの可愛い孫なんじゃ……。どんな姿であっても分かるものじゃよ……」


 おじー……ちゃんは、わたし、にそう言って……優しく、微笑んで……くれた。

 あぁ……やっぱり、おじーちゃんは……わたしの、だいすきな……おじーちゃんだ。

 そう思うと、わたしは嬉しくなって……おじーちゃんへと抱きついた。

 そん、なわた……しに、おじー……ちゃんは、嬉しそうに……頭を撫でてくれた。

 ……うん、これ……なら、とっくん。がんばれ……そうっ!


「やる気満々、じゃなぁ……。じゃったら……わしも頑張ってトールを鍛えようではないか!」

「う、ん……。わた、し……がん、ばるね……!」


 そう言って、わたしは……やる気を、見せた。

 だって……おじー、ちゃんととっくん……だ、もん!


 ●


「ふぅむ、興味深い! 興味深いのである!! 一体全体どうやって魔族であるフェニの身体を、獣人と同じように変えたのか非常に興味深いのである!!」

「ちょ! お、伯父様! 少し落ち着いてってば!!」


 はあはあと荒い息を吐きながら、ウチの顔を両手では挟むように掴むと、マジマジとウチを見始めた。

 ちなみにウチは落ち着くように声を掛けるのだけれど……、まったく聞いちゃ居ないわコレッ!!

 荒い鼻息に顔を歪ませながら、ウチは両手で伯父様から離れようと押すのだが……向こうに行ってはくれない。

 ああもう、本当にどうしようかしらっ!?


「顔、身体つきはまったくフェニとは見分けがつかぬようになっているが……魔力などは以前と同じ? ……いや、色々と使いやすくなっているように見えるのである!

 ちなみに、尻尾とかはどうなって――ぬふぉっ!?」

「ッッ!!? い――いい加減にしてって言ってるじゃないの、伯父様!!」


 スカートを捲りあげようとした伯父様の行動に我慢の限界を迎えたウチは、丁度しゃがんでいた伯父様の頭へと踵を落とした。

 その衝撃は大分痛いものだったらしく、伯父様は頭を押さえて蹲った。けど、ウチには自業自得だとしか思えなかった!


「やって良いことと悪いことがあるって分かってるわよね、伯父様っ!!」

「む、むぅ……す、すまなかったのである……フェニよ」

「……はあ、伯父様は死んでからも相も変わらず探究心が凄いわ……」

「それは違うぞ、フェニよ! 我輩は死んでからも更に、探究心が向上したのである!!」

「それ自慢にならないわよ!!」


 溜息をつくウチに対して、伯父様は照れながらもエヘンと言うかのごとく胸を張ったわ。

 だから、普通に怒鳴ることにした。と言うか、怒鳴らないといけないわ!! いくら血の繋がりがある親戚だからと言って、スカートを捲ろうなんて死あるのみ!!

 そんな憤慨するウチを見て伯父様は、したり顔でうんうんと納得したように頷いた。

 ……何を納得したの?


「そうであったな。フェニも花を恥らう乙女であるな……、そういうのは想い人にされたほうが良いのであるな!」

「ぶーーっ!!? な、なんでそういう結論に達するわけッ!?」


 そそ、それに想い人なんてまだ……! いやまあ、居るけど……アイツ鈍感なんだから仕方ないじゃないの!!

 焦るウチだったが、伯父様はうんうん頷きながら、1歩、2歩、3歩と……あ。


「そうである! 胸のほうはいったいどうなって――ごはっ!!」

「だから、何でそういう結論に達するの伯父様はぁっ!!」


 3歩歩いてど忘れした伯父様を持っていた杖で殴り飛ばし、ウチは叫んだ。

 と言うか、昔からウチとお母様と話をするときは3歩歩くなって言ってるのを忘れて……居るわ伯父様は……。

 溜息を吐きながら、ウチはあの神様たちに落とされた場所である……実家にある伯父様の書斎を見渡して、椅子を掴んで伯父様の前へと置いた。

 すると帰巣本能でも持っているのか伯父様は頭を擦りながら、椅子へと座った。

 一応伯父様も、お母様に躾けられて椅子を出したら座ると言う記憶は残っていたらしい。……さすがお母様。

 それを見て安堵しつつ、ウチも同じように椅子を取り出すとそこに座ったわ。


「さてと、これで安心して話が出来るわね。伯父様」

「そ、そうであるな……」

「それで……、伯父様がウチにどんな特訓をしてくれるっていうの? ウチは3年前に伯父様に、一応だけどお墨付きは貰った覚えがあるんだけど?」

「そうであるな……。我輩はフェニにお墨付きを出した。……が、魔力の量だけである! それに、3年前からあまり魔法の腕は上がっていないように感じられるのである!!」


 そう伯父様に言われたけど……正直、鍛えていないと言うのも当たっているので何も言えなかった。

 だって、四天王となる将来を奪われたり、いろいろあって新しい魔法を覚える余裕なんて無かったのだから……。


「いや、それはウチの言い訳に過ぎない……か」


 そう呟いて、ウチは伯父様を見た。


「お願い、伯父様。ウチに……魔法の特訓をしてください」

「うむ、任されたのである!! 見ているが良いのである、フェニよ! 我輩がお前をより強くしてみせるのである!!」


 妙に張り切る伯父様を見ながら、ウチは少し早まったかと思ったけれど……強くなるために手段を選ぶべきではない。そう考えて、ウチは割り切ることにした。

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