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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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ロンとタイガの特訓

「「<十連突き!!>」」


 二つの声が重なった直後、ガガガガガガッ!! という激しい音が周囲に響き渡った。

 しかし、最後の一突きを放った瞬間――自分の身体は目の前の人物の突きに耐え切れずに吹き飛ばされてしまった。


「くっ!!」


 吹き飛ばされながらも、身体が無防備にならないように注意しながら、地面を転がると武器を構え……目の前の人物が追撃を行う可能性を考えながら武器を構え直した。

 しかし、目の前の人物は<十連突き>を放ってから追撃をせずに、武器である槍を持ってこちらを見ているだけだったのだ。

 そんな自分を見て、目の前の人物は何時ものようにフンと鼻を鳴らした。


「追撃を対処するのは教えたとおり守っているみたいだが……、お前と我では実力は違うのだ! そんな相手に追撃をすると思っているのかっ!?」

「くっ……! 言う言葉はやはり、辛辣なものですね……師匠」

「当たり前だ! しかも、そのように腑抜けた姿となったお前に優しい言葉をかけるとでも思っているのか!?」

「……思っていないな。ならば、自分も師匠が死んでからの3年間を無駄にしていたわけではないことを…………思い知らせてみせようか!!」


 もう一度戦える、その喜びが高揚感となり自分は槍を構えると再び師匠……【最強の矛】と謳われたハガネへと掛けていく。

 そんな自分を見ながら、師匠は獰猛な笑みを浮かべた。


「ふんっ、未だ十連しか出来ない馬鹿弟子が……。ならば見せてもらおうではないか!!」


 斜め下から斜め上に薙いだ自分の槍と、自分とは逆に薙いだ師匠の槍がぶつかり合い激しい金属音が放たれ、腕に痺れが走るが……そのままグルリと身体を回すと鋭い突きを放った。

 しかし師匠も同じ動作をしている……いや、自分に合わせてくれているのだろう。

 それを理解しながら、放たれた槍は穂先がぶつかり合い、動かなくなってしまった。


「くっ……うぅ……ッ!」

「どうした? まだそれぐらいなのか? 我は半分も力を込めていないのだぞ?」

「さ、すが……師匠、だ……。これでこそ……、特訓のし甲斐がある!!」

「そうか。ならば、我との特訓をするならば、全力で……全力を超えてでも来るが良い!!」


 師匠の言葉と共に、ぶつかり合っていた槍は、限界を迎えて軋みを上げた。

 此処は仕切り直しだ。自分が師匠を見ると……師匠も同じ意見だったらしく頷き、槍を引くと共に互いに距離を取った。

 そして、互いに再び槍を構えると……。


「「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」」


 気合を入れて、再びぶつかり合った。


 ●


「ぐああぁぁぁっ!?」


 拳から放たれた拳圧に、オレの身体は吹き飛ばされ……ゴロゴロと石畳を転がった。

 い、いてぇ!! けど、拳圧だけでこれほどなら、身体に直接当たってたら……ぶるる。

 命中したらどうなるかを考えて、オレの身体はガクガクと震えそうになるが、今は身体を動かすべきだと頭が身体に言い聞かせてきた。

 何故なら、今まさにオレが転がり止まった辺りへと拳を突き出してきた相手が迫って来ていたのだから!!


「う――うおおおっ!!?」

「ちっ、避けたか……」

「あ、あぶねーだろ! 父上!!」

「誰が父上だ! 貴様のような獣人なぞ、儂の子ではないっ!!」

「だ、だから、何度も言ってるだろ! これはアリスによっ――てぇぇぇっ!?」


 言い訳をしながら、オレは相手……父上に語りかけるが、そんなのは知ったことかといったレベルで父上はオレを殺す気で殴りかかってきていた。

 その攻撃を何とか避けながら、オレはどうやってこのピンチを乗り切ろうかと考える……が、まったく思い浮かばねぇ!!

 父上を倒す? 無理だ無理!

 この場から逃げる? 神様が送りつけたんだから如何帰れば良いのかわからねぇよ!!

 じゃあ、どうするか? どうにもできねぇよ!!


「避けるなと言ってる! それに儂の子と言うのならば、これしきの拳……受け止めてみせろ!!」

「~~~~っ!! 無茶言うんじゃねぇよ!! そんなの喰らったら死ぬだろうが!!」

「殺す気で放っているのだから当たり前だろう!!」


 あぁくそ! 父上って、頭に血が上りすぎるとこうなるんだった!

 オレの前だと結構デレッデレだったからすっかり忘れてた!!

 突き出してくる拳を避け、速度を上げて突進してくるのを身体を転がすことで回避し、避けることが出来ないほどの速度で蹴り上げてくる脚を紙一重で何とか回避する。

 死ぬ、絶対に死ぬ!!

 ガクガクと震える心が、身体の動きを阻害し始め……やばいと思い始める。

 そんな中で、オレがビビッてしまっていることに気づいた父上は、オレを鼻で笑いやがった。


「ハンッ! 此処まで逃げ続けるなど、やはり貴様は儂の子ではないな。この臆病者めが!」

「なん……だと…………? おい、父上……今、オレのことを何て言いやがった……?」

「だから、父上と呼ぶなと言っておろう! そして何度でも言ってやろう、逃げ続ける貴様は臆病者だと!!」


 そう言うと、父上はオレに向けて拳を打ち放ってきた。

 ……ふざ、けるなよ? オレが、臆病、もの……だと?

 勝手に死んで、オレに遺言の一つも残さなかったくせに臆病者呼ばわりと言ってくるのか?

 ふざけるな、ふざけるな! ふざけるなっ!!


「ふざっ、けんなっ!!」

「ムッ? くおおおぉぉぉぉぉっ!!?」


 頭の中に渦巻き始めていた怒りを拳に乗せると、オレは近づいてくる父上……いや、親父の拳に打ち合うように拳を打ちつけた。

 直後、拳に激しい痛みが走ったが……止まる気にはなれなかった。だって、ここで止まったり、引いたりなんてしたら臆病者じゃねーかよ!!

 オレの気迫が親父の拳に打ち勝ったのか、オレの拳は親父の拳を後ろへと飛ばした。

 それに親父が驚いた様子を見せたが、すぐに戦闘狂特有の牙を見せる笑みを浮かべてオレを見た。

 一方オレも、多分……笑っているのだろう。


「ホウ、儂の拳を弾いただと? 面白い、しかし……本当に儂の子だと言うのなら、儂を倒してみせろ!!」

「上等だよ、このクソ親父!! だったら、やってやんよっ!!」


 獰猛に吠えると、オレは親父に向かって駆け出した。


 ――ぜってぇにぶっ飛ばす!!

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