Q&A
「……やっぱり事情聴取じゃないですかっ!!」
「「「話し合いだが?」」」
三将軍は頑なに話し合いと言いますが、どう見ても事情聴取にしか思えません!
で、ですが、とりあえず落ち着いて彼らが何を聞きたいのかを噛み砕いてみましょう……。
軽く深呼吸をして息を整えてから、アタシは先程3人が言った言葉を思い出します。
えっと確か、カラアゲさん……チキン将軍はアタシが魔王と会うに相応しいかと言うもので、スキヤキさん……ビーフ将軍は色々と聞きたいらしくて、ポーク将軍はまだ分からないという感じですね……。
そんな風に頭の中で整理して、改めて彼らを見ます。
「えっと、一つ一つ話を崩して行こうと思うのですが……大丈夫ですか?」
「構わぬ。皆もそれで良いだろうか?」
「うム」
「話が聞けるならば構わない」
頷く3人を見てから、アタシは初めにカラアゲさんを見ます。
「えっと、チキン将軍は……アタシが魔王……さんに会うのに相応しい人物かを見極めに来た。と言っていましたね?」
「そうだ。現時点で我輩は貴公を認めてはいるが、他の2人からも判断を聞くべきと考えたのだ」
「ちなみに魔王さんに会うのに相応しい人柄と言うのは何ですか?」
「そうだな……、あえて言うならば無双の力を持つ者、類稀なる知識を持つ者、死地へと赴かんとする勇気ある者、ギスギスとした今にも殴り合いになりそうな状況の中で笑いを誘う者……といったところだろうか」
そうカラアゲさんは口にします。……ん? 最後のひとつは何ですか、最後のひとつは。
きっと気のせいですよね……気のせい気のせい。
「おオ、あの者の話カ! 懐かしイな……あのときは、本当ニ久しぶりに笑わせてもらったゾ!」
「そうだな。あとにも先にも心の底から面白いと笑ったのはあの者のことんだったかこんとんだったかだった」
き、気のせいじゃなかったーー!!
と言うか、コントって……どんなコントをしたんですか!?
アタシ、微妙に少しだけど気になります!
そう思っていると、三将軍は互いに頷き合ってから……一斉にアタシを見ました。
しかも、その表情は真剣そのものです。
「我輩はこの者は、力を持つ者だと思う」
「わしはこの者を、勇気アル者だと考エル」
「……この者を、知識を持つ者と考える」
え、えーっと……? いったい何を言ってるのでしょうか? まるで儀式か、宣言めいたことのように見えますし……。
そう思っていると、3人は割り札らしき物を取り出しました。それをまじまじと見ていると、3つの割り札が重ねられました。
すると、割り札は繋ぎ目が無くなったかのようにひとつに合わさり、一つの木札へと変化しました。
そして合わさった木札をアタシへと差し出しました。
「受け取るが良い。この札があれば、我輩たちの権限で魔王様に会うことが叶うはずだ」
「まア、所謂証明証と言ったところダナ」
「魔王様の居る場所は話がすべて終わったら教えるので、それまで付き合ってもらうぞ」
「わ、わかりました……」
そう言って、アタシは木札を受け取ると話を続けることにしました。
……そういえば、こちらも一応聞いておいたほうが良いですよね。と言うか、スキヤキさんの色々はこちらから色々と聞かないと始まらないと思いますし……。
そう考えて、アタシはスキヤキさんとカラアゲさんに尋ねます。
「えっと、チキン将軍のほうはあの四天王はどうなりましたか?」
「その件か……、アレは貴公の予想通り、燃え盛ったが言い包めておいたので問題は無いだろう。それとここ数日、傷を負って眠っていた兵士たちの傷の治りが異常に早いが……像の効果だろう?」
「まあ、そんなところ……とでも思っていてください。祈ればその分、祝福は来ると思いますので……。
それで、ビーフ将軍は結界の外に出て大丈夫だったのですか?」
カラアゲさんにそう言ってから、アタシはスキヤキさんを見ます。
と言うか、あの状態で外に出たら、周囲に居る仲間を傷つけていた可能性が高いと思うんですよね……。
そう思っていると、スキヤキさんがついさっき言ってくれた説明を分かり易く説明し始めてくれました。
「実はだな、お前が砦から出て行って数日たったある日から山肌から黒い紫の煙が空に上がり続けていたのだ。初めは我々も奇妙に思いながらも、お前の言葉通り出て行ったらロクでもないことになるだろうと判断して砦の外には出ようとはしなかったのだ。
それからしばらくして、砦で引いている井戸から奇妙なことに水と一緒にアップの実が紛れるようになったのだ。それも光り輝いている……な」
「…………そ、そうなんですか……?」
「ああ、そうだ。それが何度も続いて、一度調べるべきだろうと判断した我々は、外に出ることに決めた。……ちなみに異常が無いかを調べるために、タダノモーブを縄で括りつけて外に歩かせてみたのだが……不思議なことに可笑しな気分になることは無かったようだ」
そのときのことを思い出しているのか、スキヤキさんはそう言いますが……アタシのほうはアタシのほうでちょっと身に覚えがあり過ぎて何も言えません。
と言うか、あそこの水源って砦にも引いてるんですね……。よく届きましたね。
ですが、そう考えると数日前に煙が上がったというのは、浄化した水が地中を通った結果……土の中に含まれていた瘴気が浄化されていったと考えるのが一番ですよね……。
でもそう考えると、アタシが原因なんですよね……。
「そして、我々は一度近くにある集落に顔を出して、その集落の者に話を聞いてみたのだが……狩りに出た際に襲ってきたクアトルサ4頭を倒した上に、水源の様子を見に行った冒険者が居たと言うではないか。……お前だろ?」
「……はい」
誤魔化すのは無理と判断して、アタシは集落で何が起きていたのかを話しました。
すると、3人とも呆けた顔をして唖然としました。
まあ、仕方ないですよね……。
「……という感じになっていました。多分、色々と問題は無いと思いますよ?」
「まあ、問題は……無いだろう。事実、水源に実り井戸へと流れた果実は子供たちがおやつ代わりに食べていたのだから……。それに、水のほうは飲むと身体の中が綺麗になる感覚がした」
「ああ、それなら良かったです……」
自分の行った行動が間違っていなかったと実感出来たのでホッとしてから、最後にポーク将軍を見ました。
「最後に、ポーク将軍は……何を話せば宜しいのでしょうか?」
「ふむ、そうダな……。わしはあまり聞くべきことは無いのダガ……。代わりにそチらがエレクと戦って知り得た情報があれば教えてもらえナイだろうカ?」
「アタシが知った情報……ですか?」
そう言われたので、アタシは何か知り得たものは無いだろうかと考えます。
……あ、そういえばこの人たちは知っているのでしょうか……?
思い当たったことがあったので、アタシは訊ねてみることにしました。
「あの、聞きたいのですが……。皆さんは『邪神』というものに聞き覚えはありますか?」
アタシが訊ねると、全員分からないのか首を傾げました……。
木札は合っても無くても構いませんが、交友を築くためには必要だと思います。