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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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お礼の食事

「まずハ、助けてもらった礼ヲ言わせてクレ。ありがトう」

「――えっ!? い、いいえっ! 気にしないでください!!」

「いや、礼ハ大事だ。それに、あのママだとわしの命は無かッタと思う。だからせめてもの礼として、食事を用意したノデ、食べてくれ」


 そう言って、ポーク将軍が合図を送ると食堂に隣接する扉からメイドさんや執事たちが姿を現しました。

 その手には料理が乗せられているだろう皿が乗せられており、何とも言えない匂いがそこから漂っています。

 その匂いに反応してか……、しばらく食べ物を食べずに眠り続けていた身体は食料を欲し……自然と喉がゴクリと唾を飲み込んでいました。

 そして、アタシは気づいていませんが……背後ではお尻の辺りから生えている4本の尻尾がブンブンブンブンと振るわれていたらしいです。……本当、穴に埋もれたい。

 けれどアタシの目の前に置かれた料理を見て、そういう考えは一気に吹っ飛んでしまいました。

 何故なら、目の前にあるのは肉! 肉なのですから!!

 ……え? しばらく寝ていたのに、いきなり肉は厳しくないかですって? そんなの関係ねぇ!!

 そう思いながら、すぐに手をつけようとするアタシですが、何とか自制をしながらポーク将軍を見ました。


「で、ではいただかせてもらいます……」

「うム、思う存分食べてクレ」

「……えっと…………」

「我輩たちのことは気にするな。とりあえず今は食べることに集中したまえ」


 恐る恐るポーク将軍にそう言って、アタシは食べようかと思いましたが……端のほうにいる2人の反応も一応見ておいたほうが良いと感じて、そっちを恐る恐る見ると……カラアゲさんのほうが食べることを勧めて来ました。

 ……で、では、食べることにしますか……。

 そう考えて、アタシは食事をすることにしました。

 初めに置かれた料理は肉、というかステーキでしたが切り分けるためにナイフを差し込むと、スッと切れました。

 肉じたいが軟らかいのか、それとも特殊な製法で軟らかくしたのかはわかりません。ですが、今現在そんなことは関係ありません……。

 何故なら、アタシの目にはフォークによって持ち上げられた肉から溢れんばかりの肉汁が垂れているのが見えるのですから……!


「あ~~むっ♪ …………ん~……♪ おいしぃ~!」

「それは良かッタ。調理した者もきっと喜ぶことだろウ」


 ポーク将軍が何かを言っていますが、アタシはそれ以上に今食べてるステーキに夢中で話が耳に入りません。

 というか、このステーキは薄い肉を何層にも重ねられたミルフィーユ状になっているんですね。

 そして、噛み応えがある部分と軟らかくジューシーな部分があるということは……きっと、焼く前の段階で層にするときに何かを行ったんですよきっと!

 もしかしたら、2種類の肉を使っているのかも知れませんし、はたまた筋切りした肉ともうひとつ軟らかくジューシーなほうは何かをしてこうしたと言う可能性もあります。

 ああ、美味しいですね……!

 そう思いながら、ステーキを食べ終えると次の料理が乗せられた皿がアタシの前に置かれました。

 ……今気づきましたが、コース料理って珍しいですね。もしかして転生者とかいたりするんでしょうか? まあ、居たら居たできっと美味しい料理が多いことでしょうね。

 次の料理に期待しつつ、待っていると次々と料理は運ばれてきました……。


「…………ふう、美味しかったです……」

「うむ、本当に美味しそうに食べてイタな……」


 料理を食べ終えたアタシは満足感を感じながら、食後のお茶を飲みました。

 ……魔族の国原産のお茶なのか、紫色のお茶は独特な渋みとさっぱりとした酸味を持った物で脂っこくなっていた口の中を洗い流して行きます。

 ……料理は美味しかったので、一気に洗い流されたのは残念ですね……。そう思いながらも、飲んでしまったものは仕方ないと考えてアタシはお茶を飲み干します。

 そんなアタシの様子をポーク将軍は見ていました。

 とりあえず、視線を感じるのはもう諦めていたので、アタシは気にせずに食べた料理の味を思い出します。

 肉汁たっぷりで噛み応えがあるのに噛み切れるステーキに、濃厚でノッペリとした味わいのするチーズが振りかけられたレタスっぽい野菜のサラダに蒼色であるのにコーンみたいな味がする摩訶不思議なスープ。

 ちなみにパンは硬い黒パンではなく、厨房に竃があるのかピタみたいな薄いけれど中が空洞でポケット状に食べ物を入れることが出来る種類のパンでした。


「……満足したみたい……ダナ?」

「はい、久しぶりの食事だったこともあって、凄く美味しかったです」

「そうカ、それは良かった。……では、そろそろ話し合いを始めるとするカ」


 問い掛けてくるポーク将軍に笑顔で答えると、ポーク将軍が突然そう言いました。

 すると、その言葉を受けてかはわかりませんが、カラアゲさんとスキヤキさんが立ち上がるとこちらへと近づいて来ました。

 ……あ、あれ? いったいどうしたのかと思っていると、対面するように3人が座り……そこからひとつ席を外してシストさんも対面に座りました。

 え? ……え? え?

 いきなりのことで混乱するアタシだったけれど、ポーク将軍からカラアゲさんに主導権が移り、話し合いという名の尋問が開始されることとなりました……。


 ●


 …………ああ、そうでしたそうでした。そんな感じに話が始まったんでしたよねぇ……。

 とまあ、目覚めてからのことを思い出していたアタシですが、改めて彼らを見ました。

 と言うか、スキヤキさんは結界から抜け出て大丈夫だったんでしょうか?

 カラアゲさんも、街の滞在は大丈夫なのでしょうか?

 そんなことを心で思っていると、視線に気づいたのか2人はアタシを見ました。


「国境砦のほうは、つい数日前から外に出ても胸がムカムカするといった感じの妙な気配は無くなったのだ。多分、お前が何かをやったのではなかろうか?」

「は、はあ……」

「我輩のほうは、メリマニを代理として置いてきたので大丈夫であろう。あやつは頑張れば頑張れる者なのだから」

「そ、そうですか……」


 言いながら、いったいどうして彼らはここにやって来たのかと疑問に思い始めたので、アタシは聞いてみることにした。


「あの、先程も話し合いと言いましたが……いったい何を話し合うのですか?」

「そうだな……。貴公が我らが主に会うに相応しい者か……という話だな」

「まあ、それもあるが……お前からは色々と聞かなければならないことがありそうだ」

「だから、寝ている間に勝手だと思うガ、話し合いの場を持たせてモラった」


 そう3人はアタシに向けて言いました。

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