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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
時狂いの章
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目覚めた彼女

「では、これより話し合いを行うことにするが……皆は特に問題は無いだろうか?」

「こちらは問題は無い」

「同じく問題はナい」

「えっと、わたくしも……特に問題は……」


 鶏魔族のかたの言葉に従うように牛魔族と猪魔族の2人が頷き、躊躇いがちに紫色の石を額に宿した女性が頷きます。

 そんな彼らを見ながら、アタシも頷くことにしました。


「はい、アタシも問題はな――――いえ、あるに決まっているでしょう!? 何ですか、何なんですかこの状況は!?」

「「「話し合いだが?」」」

「話し合いというなの事情聴取ですよねこれっ!!」


 そうアタシは叫びます。

 何故なら、今現在彼らとアタシの立ち位置は3人の魔族に囲まれているという状態なのですから……!

 と言うか、ポーク将軍はわかりますよ? ついさっき自己紹介してもらったのですから……。

 でも、でも何でこの2人が此処にいるんですか?

 心の底から叫びたくなるのを堪えながら、アタシは牛魔族と鶏魔族の2人を見ます。

 いえ、牛と鶏では失礼ですよね……。ビーフ将軍とチキン将軍が何でいるんですかっ!?

 と言うかそもそも何でこういう状況になったのでしたっけ……?

 ……と、とりあえず、少し思い返してみましょうか……。

 そう思いながら、アタシは目覚めたときからのことを思い出し始めました。


 ●


 冷たくなっていた身体に熱が入るかのようにベッドで眠っていたアタシの身体は温かみを取り戻し始め、同時に意識が覚醒へと導かれていくのを感じました。

 その感覚に逆らうこと無く、アタシは自身の身体を覚醒へと導いていくと……ピクピクと目蓋が揺れて、ゆっくりと瞳が開きました。

 そして、起き上がるとアタシはキュウビに聞かされていたように大きめのベッドで眠っていたらしく……起き上がります。


「ぅ……、かなり寝ていたみたいですね……、関節を曲げると痛いです……」


 歳のせいではない、それはわかっているのですが……ベッドから這い出て、腕を動かそうとしたらビキッと肘が痛むのを感じて、アタシは呟きます。

 しかも、肘だけではなく膝もですね……。事実ベッドから降りるために膝を曲げたときも動き辛さを感じましたし……。

 まあ、だいぶ寝ていたと言うのを実感しながら、アタシはゆっくりと歩いて厚手のカーテンに遮られている窓へと近づきます。ちなみに厚手のカーテンと言いましたが、彼の世界の材質よりも技術は劣るためか完全には光を遮ぎ切れていません。

 なので、光はカーテンの隙間隙間からは洩れており、躓くこと無く窓辺まで向かうことが出来ました。

 そしてアタシはカーテンに手を掛けると、シャッとカーテンを両開きしました。

 するとカーテンに遮られていた光がアタシが居る部屋の中へと射し込んできました。


「…………良い天気ですね」


 ポツリとそう呟きながら、アタシは窓から見える景色を見ます。

 屋敷は大通りに面した場所に立てられているのか窓の外では、子供たちが元気に駆けている姿や買い物をする主婦の姿が見えます。……きっと、何時もと変わらぬ景色だったりするんでしょうね。

 そう思いつつも同時に、あのとき暴虐のエレクとの戦いに敗れていたらアタシ自身とこの街はどうなっていたのかを考え、身震いしました。

 そんなとき、後ろの扉が開かれる音が聞こえたので振り返ると……驚いた顔をしたこの屋敷のメイドさんが立っていました。


「お、起きてりゅ…………」

「あ、あの……?」

「――ッ!! し、失礼しましたッ。お目覚められたのですね! あ、あの……それで、申し訳ありませんがしばらくその場に居てもらえますか? すぐにこの屋敷の主であるシャブシャブ様に声を掛けてきますので……」

「え? あ、あの……行っちゃった」


 アタシが話を聞こうとする前に、メイドさんは慌てて部屋の前から出て行き……その場にはアタシだけが取り残されていました。

 え、えーっと…………?

 しばらく唖然としていたアタシですが、それから少しして再びメイドさんが部屋へとやってくると更に後ろから数名のメイドさんたちが姿を現しました。


「お待たせしました。シャブシャブ様がお会いになりたいと言っておられます。ですがその前に眠り続けていたので、身体が汚れていると思います。ですので、一度身体を綺麗にしてからにします」

「は、はあ……」

「と言うわけで、お願いします」

『『はいッ!』』


 先頭に立っていたメイドさんの言葉に反応して、残りのメイドさんたちは頷いて一斉にアタシへと近づいてきました

 そして、驚くアタシを担ぎ上げると一気に歩き出しました。


「――って、うぇぇぇぇぇっ!? な、何なんですかっ!?」

「安心してください、シャブシャブ様に会われる前に綺麗にいたしますから!」

「いえ、そういう問題じゃなくてぇぇぇ~~ッ!」


 叫ぶアタシを無視して、メイドさんたちはアタシを担いで浴室まで向かうと……複数の人間が入れそうな広さと深さを兼ね備えた湯船へと入れるために服を脱がそうとしました。

 けれど、明赤夢はアタシにベッタリとした呪いの装備……じゃなくて、アタシの意思の元で着脱を可能にする装備ですから、脱げるわけがな――。


「「「――ッ!? か、変わったお召し物ですね……」」」

「ちょーーっ!? ル、明赤夢ーーッ!? 何勝手に収納しちゃってるんですかーーっ!?」

「まあ、とりあえず……身体を温めさせてから身体を洗わせていただきますね。……本当、大層な物をお持ちで……グギギ」


 目の前で突然着ていた服が胸元に珠の形の首飾りになったのにメイドさんたちが口をそろえて驚きの声を漏らしていましたが、アタシも驚きの声を上げました。

 まさに、おのれ裏切ったなシャ●とかな気分ですよ! けれど、メイドさんたちはチャンスと考えたらしく……、戸惑うアタシを湯船へと入れました。

 ちなみに何名かのメイドは己の胸を見てからアタシを恨みがましい目でアタシの湯船に浮かぶ胸を見ていました。

 そしてアタシは湯船から上げられると、されるがままに全身を揉み解すかのごとくメイドさんたちの手によって洗われて行きました。

 と言うかそんな至れり尽くせりなことをされているのはどうしてのなのだろうかと思うアタシですが……周囲のメイドさんたちは「髪がサラサラ……」とか「もいでやるもいでやる……」とか口にしていました。

 そして、全身隈なく頭の先から足の指先まで洗われたアタシは浴室からフラフラと出て、またもメイドさんたちによって全身隈なく拭き上げられました。

 ちなみに身体の水滴が拭い終わった途端、満足したのか明赤夢が再び取って着物姿に戻りました。


「どうぞ、こちらです……」

「は……はい……」

「シャブシャブ様、お連れいたしました」

『そうカ、ならば入ってもらエ』

「畏まりました。……それでは中へとどうぞ」


 そう言って招かれた一室は食堂で、中には猪魔族……多分この人がポーク将軍でしょうね。

 そう思いながら部屋を見渡すと、ポーク将軍以外にも人は居ました。

 アタシに気づくとホッと安堵しながら、アタシに頭を下げてきたシストさん。そして、その斜め後ろで待機するメイド(シトリン)さん。

 そして、あとの2人を見てアタシも驚きました……。というか、シストさんの安堵の溜息ってこの状況も含まれていますよね?

 何故なら、その2人は……少し前に会っていたチキン将軍とビーフ将軍だったのですから……。

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